トヨタ 新型カローラスポーツ 6MT試乗|日本初導入された新開発MTの実力を試す!

“スポーツ”の名前は伊達じゃない!?

「♪あな〜たに会えた幸せ、感じて〜、風に〜なり〜たイイイイイイイ↑♪」

な〜んちう、爽やか若者カポーをコアターゲットに据えた同車のCMを見かけるたび、「いやん中条あやみちゃん可愛い!」と素直に思う反面、一抹の言いようもない哀惜っつーか忸怩たる思いっつーかなんだバカヤロコノヤロ爽やかにイチャイチャしやがって羨ましいじゃねーかよ、こっちはその年頃をすべてクルマに捧げて来てんだよ!なんつーしょうもなさ満開の行き場のない激しい嫉妬に支配されていたダメすぎる私(とそして同じことを思ってくださる読者諸兄)にとって、このニュースはまさにカタルシス、すべてのクルマ好きを狂喜たらしめるモノであったハズだ。

カローラスポーツに、マニュアルが設定されている・・・!!!

なんという福音。一見ナンパなデートカーに見せといて、“スポーツ”の名前は伊達じゃなかった、という、完全に嬉しいオチ!

しかもこのMT、従来品をポン付けしたような適当なモノではない。

なんと、驚愕の“新開発”なんである。

もう21世紀なのに、この期に及んでコストがかかるわりに減価償却率の低そうなMTを新開発とは。一体どんなものなのか、試乗が叶ったのでレポートしたい。

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2ペダル化の進んだ日本でなぜMTをラインナップするのか

先にちょっとMT新開発においての考察をば。

そもそも、カローラスポーツには1.8Lエンジン+電気モーターのハイブリッドモデルと、1.2リッターターボガソリンエンジンモデルが用意されている。

MTが選べるのはもちろん1.2リッターターボガソリンエンジンのほう。MT以外にはCVTが用意されている。

2ペダル化の進んだ日本において、MTはすっかり“スキモノの玩具”的位置づけに甘んじた印象があるが、実は未だに欧州などでは需要の声も高い。

よって、これまた欧州で人気のダウンサイジングターボエンジンを搭載した軽量・小型な車体に合わせ、トランスミッション自体も軽量・小型化をさせたものを新開発したのは、この分野にまだ稼げる余地があると判断したのではないかと思われる。

さらにそれを裏付けるのが、対になっているCVTの存在。欧州において、CVTに対する嫌悪感は日本のそれの比じゃない。つまり、欧州においては、もしかしたらこのMTこそがカローラスポーツの屋台骨を支えるコアモデルになり得るかもしれない、ということだ。

というわけで、ごく個人的にはこのMTバージョンこそメインストリームであり、好事家のために用意しときました、みたいな甘ったれたモデルじゃないような気が、とってもしちゃうのである。

しかし、その考察を真っ向から捻転してくれたのが、何を隠そう国内トヨタ初導入の「iMT」であった。

自動でエンジン回転数を上げ下げしてくれる国内初導入のiMTとは?

このカローラスポーツには、トヨタが「iMT」=インテリジェント マニュアル トランスミッションと名付けている制御が入っている。

エンストしにくく、また、アップ・ダウン双方ともにショックのない、なめらかな変速をコンピュータ制御によって叶えているというもので、シフトアップ時には自動的にエンジン回転数を下げ、また逆にシフトダウン時には自動的にエンジン回転数を上げてくれる。つまり、回転数を合わせる、という作業を自動的に行なってくれるというものだ。

発進時の不安や走行中のガクガク感を取り除き、MTならではのネガティブをそっとやさしくサポートしてくれる、という触れ込みである。

この「iMT」制御、先述のとおり国内トヨタではカローラスポーツが初導入となるのだが、制御方法自体はすでに2015年頃から同社がグローバル販売しているMT車に採用されてきたもの。充分に熟成され、信頼度も抜群の制御である。

トランスミッションもサスペンションも程よくスポーティ

カローラスポーツの場合、「iMT」は通常、エンジンを掛けてそのままの時点では有効になっていない。走行モードを「SPORT」にしたときのみスタンバイになり、必要とあらば自動的に作用することになっている。

ならば、と「SPORT」モードを選択しようとしてみたが、そこまでになかなか行き着かない。なんと、ノーマルモードで十二分に気持ちよく、また質感も良いので困ってしまった。

率直に言えば、このMTには86なんかに搭載されているようなショートストローク感やゴクゴク感はない。パターン、パターンと、むしろちょっと長めのストロークを楽しみながら、優しくシフト操作を楽しむような種類のそれなのだ。

さりとて一昔前のフランス車みたく、クラッチのミート位置が掴みづらくて坂道発進に四苦八苦、みたいなユルすぎフィールは感じない。

ガッツガツに走るスポーツ、ではなく、程よくスポーティーな感じ、とでも言おうか。それは過敏すぎないマイルドな(しかし決してダルではない)ステアフィールとも、またよく粘ってしっかりとロールするのにトレース性も抜群な、“カタ柔らかい”サスペンションともよくマッチングされていてミョーに心くすぐる楽しさに満ちていた。ああ、やっぱMT最高。

「iMT」は暴れ馬を御する手綱的感覚

はっ、いかん。

このままでは「iMT」を体感しないままに試乗が終わってしまう。

心を鬼にして(?)「SPORT」モードを選択する。

わあ!いきなりラリーライクな、勇ましいエンジンサウンドが体を包む。マッピングが変わるから、同じギアを選んでいても、うっかりノーマルモードと同じ踏力でアクセルペダルを踏んでしまうと、いきなり巨大なトルクが生まれてエンジンブレーキさえも生まれてしまうほどだ。

この「SPORT」モードの味付けが、本当に獰猛で面白い。もしやこれ、エントリーラリー競技のベース車にするための制御なんでは?と勘ぐってしまうほどの仕上がり。

外国向けの「iMT」はクルージングや一般使用域での使い勝手を向上させるのが主目的だが、カローラスポーツに関してはむしろ、暴れ馬を御する手綱の役割を果たしているような感覚を受けた。

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「iMT」はむしろ上級者にこそオススメしたい!

ごく個人的に言えば、シフトアップ&ダウンの際に回転数を合わせる、ということに関しては、MT車に乗った瞬間に体が勝手に回転数に対応してしまうため、あまり恩恵を感じなかったのだけど、もしかしたら教習所から出たての人とか、AT限定解除してすぐの人なんかには有効なのかもしれない。そういう人いたら、逆にどうだったか教えて欲しい。

むしろ上級者は、峠やサーキットなんかでハイスピードコーナリングをしている最中に、その恩恵を感じることが多いと思う。

ヒール&トーを繰り返すような素早いクラッチ操作でも、さり気なくブリッピングをしてくれるなどの制御が入るから、無心にワンランク上のドライブを楽しめるはず。

さらに、この制御のおかげでメカニカルなフリクションのロスなんかも軽減してくれそうだから、結果的にクラッチに優しい運転にもなりそうで、メンテナンス的にも恩恵がありそうだ。

結論、「iMT」は“売れ線”モードでもなけりゃ、初心者モードでもあらず。

上級者のほうがむしろ楽しみの幅があるかもしれないし、これくらいキャラが立ってたほうが欧州で受け入れられるのかもしれない。それとも、欧州向けはもうちょっと制御をおとなしくして出したりするのかしら。

カローラスポーツへの謎と興味は膨らむばかり。いやはや、やられました。面白い!

最近のトヨタ、本当に攻めてます!

[Text:今井 優杏/Photo:和田 清志]

トヨタ 新型カローラスポーツ主要スペック

トヨタ 新型カローラスポーツの主要スペック

WLTCモード燃費

15.8km/L

市街地モード燃費

12.5km/L

郊外モード燃費

16.0km/L

高速道路モード燃費

17.7km/L

JC08モード燃費

15.4km/L

全長

4375mm

全幅(車幅)

1790mm

全高(車高)

1460mm

ホイールベース

2640mm

車両重量

1330kg

乗車定員

5名

駆動方式

2WD(FF)

排気量

1196cc

エンジン最高出力

116ps(85kW)/5,200~5,600rpm

エンジン最大トルク

18.9kgf-m(185N・m)/1,500~4,000rpm

トランスミッション

6速マニュアル(iMT)

燃料タンク容量

50L

使用燃料

無鉛レギュラー

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今井 優杏
筆者今井 優杏

自動車ジャーナリストとして、新車や乗用車に関する記事を自動車専門誌、WEBメディア、一般ファッション誌などに寄稿しながら、サーキットやイベント会場ではモータースポーツMCとしてマイクを握り、自動車/ モータースポーツの楽しさ・素晴らしさを伝える活動を精力的に行う。近年、大型自動二輪免許を取得後、自動二輪雑誌に寄稿するなど活動の場を自動二輪にも拡げている。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

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