日産の新型ミニバンとして「タウンスター」を日本導入? 予想価格やサイズなどを紹介

  • 筆者: 渡辺 陽一郎
  • カメラマン:茂呂 幸正/小林 岳夫/堤 晋一
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トヨタ シエンタやホンダ フリードなど、コンパクトミニバンの販売台数が順調な中、日産のラインナップではミニバンが不足しており、同社は国内市場で苦戦が続いている状態です。そこで期待されているのが、欧州で販売されている日産 タウンスターの日本導入です。

当記事では、タウンスターとはどんなクルマなのか、ボディサイズや内装、パワートレインなどをご紹介します。あわせて、タウンスターが日本発売となりそうな理由について、カーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎さんが解説します。

目次[開く][閉じる]
  1. タウンスターとは?
  2. タウンスター乗用仕様のボディサイズは2種類
  3. タウンスターの外観
  4. タウンスターの内装
  5. タウンスターの荷室
  6. タウンスターのパワートレイン
  7. タウンスターの燃費
  8. タウンスターが日本発売となりそうな理由とは?
  9. タウンスターの日本導入時の予想価格

タウンスターとは?

日産 タウンスターは、欧州で販売されているミニバン。ルノー カングーの兄弟車でカングーが3代目へフルモデルチェンジされた直後の2021年に登場したモデルです。

都市部や郊外での使い勝手を考慮したサイズ感で、後部にはスライドドアを備えた実用的なモデルです。

特徴は広々とした荷室。リアシート使用時も十分なスペースがありながら、シートを倒せばさらなる大容量に。これにより、ファミリー用や仕事用など、さまざまなシーンでの使用に適しています。

タウンスターには、乗用仕様と商用仕様がありますが、当記事では日本に導入されそうな乗用仕様をメインに解説していきます。

タウンスター乗用仕様のボディサイズは2種類

タウンスターの乗用仕様では、標準ボディで2列シート5人乗りの「タウンスター・コンビ」と、ロングボディで3列シート7人乗りの「タウンスター・エバリア」がラインナップされています。

タウンスター・コンビ(2列シート)

タウンスター・コンビのボディサイズは、全長4488mm、全幅は1860mm、全高1838mm。トヨタ ノアや日産 セレナより全長は短いですが、ワイドで背も高めな設定です。

ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2716mmで、全長の割に長めですが、都市部や郊外での使い勝手が良いサイズでしょう。

タウンスター・エバリア(3列シート)

タウンスター・エバリアは、ボディがタウンスター・コンビよりも長く、全長は4911mmに達します。

ホイールベースも3100mmまで拡大され、室内空間が広がっています。全幅と全高はタウンスター・コンビと同程度です。

2列目と3列目の両方を折りたたむ(あるいは取り外す)と、長い荷物を積むことも可能です。

タウンスターの外観

タウンスターは、コンパクトなミニバンとしてスタイリッシュで機能的なデザインを持っています。

ヘッドライトの下部に反映されたVモーションデザインが、日産車らしい外観となっています。

フロントグリルは「エアカーテン」を備えたデザインで、フロントバンパーや前輪周りの空気の流れを最適化し、空気抵抗を低減することで燃費向上に寄与しています。

ダイヤモンドカットでツートンカラーのアルミホイールも特徴的なデザインです。

タウンスターの内装

タウンスターの内装には、インパネに8インチのタッチスクリーンと10インチのデジタルメーター(EVのみ)が搭載されています。

このタッチスクリーンは、Apple CarPlayやAndroid Autoに対応。また、まるで真上からカメラで映しているようにモニターに映し出して駐車を支援する「アラウンドビューモニター」にも対応。

運転支援機能としては、衝突被害軽減ブレーキやレーンキープアシスト、交通標識認識、死角警告、ヒルスタートアシスト、横風アシストなどが搭載されています。

また、タウンスターのガソリン仕様には、システムがアクセルとブレーキの操作を行い、車速に応じた車間距離を保ちながら走行する「インテリジェントクルーズコントロール」、EV仕様には高速道路の巡航時・渋滞時にドライバーの運転を支援する「プロパイロット」が搭載されています。

タウンスターのシートは長時間の運転でも快適さを保つようにデザインされており、素材は耐久性が高く、家族用やビジネス用のどちらにも適しています。

タウンスターの荷室

タウンスター・コンビの荷室は広く、リアシート(2列目)を使用した状態で775Lの容量があります。さらにリアシートを倒すとスペースはさらに拡大され、2800Lという広々とした荷室となります。

開口のサイズも広く、高さは1111mm、開口幅(積載床面から100mmの位置)は1190mmです。

ロングボディのタウンスター・エバリアはさらに大容量。リアシート(3列目)を使用した状態の荷室は500L。運転席以外のすべての座席を折りたたむと、最大3750Lの荷室となり、大きな荷物や自転車を運ぶトランスポーターとしても十分な広さとなります。

タウンスターのパワートレイン

タウンスターのパワートレインにはガソリンエンジンとEVの2種類が用意されています。

ガソリンエンジン仕様

ガソリンエンジン仕様では、直列3気筒1.3Lターボ、最高出力は130馬力、最大トルクは240Nmですから、数値は自然吸気(ノーマルエンジン)の2.4Lに相当します。

EV仕様

EV仕様では45kWhのバッテリーを搭載し、最高出力は122馬力、最大トルクは245Nm、航続距離は300km以上です(無積載、平均速度30km/hの場合)。高速な給電方式のDC急速充電にも対応し、わずか37分で15%から80%まで充電ができます。

タウンスターの燃費

ガソリンエンジンのタウンスター・コンビの燃費は、15.6km/Lです。

日産 セレナのガソリン車で最も燃費がいいXグレード(2WD)で13.4km/L、トヨタ ノアのガソリン車で最も燃費がいいG・Xグレード(2WD)でも15.1km/Lなので、それらを上回る低燃費です。

タウンスターが日本発売となりそうな理由とは?

日産は国内販売でのシェアに伸び悩んでいます。まずは日産がシェアに伸び悩む原因と、その対策としてなぜタウンスターが必要なのかを解説していきます。

日産は新型車が一時は激減し、国内市場シェアが減少

2023年度における日産の国内販売順位は、1位のトヨタ、2位のスズキ、3位のホンダに続いて4位です。ダイハツは認証に関する不正問題で出荷を停止するまで3位に入ることが多く、その際の日産は5位でした。

日産の国内販売順位を振り返ると、2007年頃まではトヨタに次ぐ2位でした。しかし、2008年に発生した世界的な不況、いわゆるリーマンショック以降は、国内で発売される新型車が激減し、売れ行きが急速に下がっています。

具体的には、2007年における日産の国内販売台数は72万973台でしたが、リーマンショック以降の2010年は64万5320台、2015年は58万9046台と減少しました。2020年は新型コロナウイルスの影響も受けて46万8518台まで下がり、直近の2023年は48万578台と盛り返しましたが、2007年と比べると67%に留まります。この国内販売台数の減少により、メーカー別の順位と国内シェアも下がったわけです。

現在の日産車のラインナップを見ると、2019年頃に比べて設計の新しい車種が増えました。2020年にはノート、キックス、アリア、ルークス、2021年にはノートオーラ、2022年にはセレナ、エクストレイル、サクラ、フェアレディZが登場したからです。以前の日産では、新型車の発売が1~2年に1車種という時期も長く、設計の古い車が目立ちましたが、現在は見違えるように新しくなっています。

シェアは回復しつつあるも、売れ筋カテゴリー車種が弱い現状

それでも日産のメーカーの国内販売順位が4~5位と低迷するのは、売れ筋カテゴリーの車種が弱いためです。

今はSUVが人気ですが、日産の場合、売れ筋になるはずのコンパクトSUV「キックス」は、e-POWER専用車で価格も300万円以上と高く、販売は伸び悩んでいます。エクストレイルもe-POWER専用車で360万円以上になり、やはり好調とは言えません。

ミニバンのセレナは乗用車の販売ランキングの上位に入りますが、人気カテゴリーであるトヨタのシエンタやホンダのフリードに相当するコンパクトミニバンがありません。

Lサイズのエルグランドはありますが、発売が2010年と古く、ハイブリッドも選べないために販売は低迷しています。

したがって、日産の小型/普通車で販売が好調な車種は、ノート、ノートオーラ、セレナぐらいでしょう。その一方で、ルークス、デイズ、サクラは堅実に売れているため、今の日産の国内販売では軽自動車の比率が約40%に達しました。

ニーズの高いミニバンのタウンスターで順位改善を図る?

国内市場で求められているのは、運転しやすい適度なサイズで広い室内を備えた背の高いコンパクトカーやコンパクトミニバンです。かつての日産には、背の高いキューブと、3列シートのキューブ キュービックもありました。

この2車種の後継となる背の高いコンパクトな車種が登場すると好ましいですが、現在の日産は、国内向けの小型車をノートシリーズに任せています。

ベーシックなノート、上級のノートオーラ、スポーツモデルのノートオーラNISMOと選択肢を増やすことで、日産のコンパクトカー需要を効率よく一手に引き受ける戦略です。キューブの後継を開発するとしても先の話でしょう。

このような状態のため、コンパクトなミニバンが必要です。そこで既に欧州を中心に販売されているタウンスター・コンビが注目されており、キューブの後継車種となり得るモデルです。

ボディサイズを考えると、ショートボディのタウンスター・コンビは2列シートのミニバンとして機能しますが、タウンスター・エバリアは全長が5m近いため、シエンタやフリードのようなコンパクトミニバンのライバルではありません。

その一方で、エルグランドを補うことは可能でしょう。前述の通りエルグランドは2010年に発売され、設計が古く売れ行きも低迷しています。

2023年のエルグランドの1か月平均登録台数は約190台で、セレナのわずか3%でした。ここまで売れ行きが下がったなら、タウンスター・エバリアを国内に導入する方法も考えられます。

タウンスターの日本導入時の予想価格

問題は価格でしょう。各メーカーの商品企画担当者は「今は円安が進んでおり、海外工場で生産された日本車を輸入すると、価格が割高になって採算を取りにくい」と口をそろえます。

そこが解消された場合、タウンスター・コンビの予想価格は295万円~です。タウンスター・エバリアははセレナe-POWERハイウェイスターVよりも少し安い345万円くらいで導入できれば、幅広い日産車ユーザーから注目されるでしょう。

【筆者:渡辺 陽一郎/カメラマン茂呂 幸正/小林 岳夫/堤 晋一:】

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筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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監修者MOTA編集部

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