まずは中国最優先! トヨタ「C-HR」のEVは日本で発売されるのか

  • 筆者: 桃田 健史
  • カメラマン:桃田 健史・トヨタ
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上海ショーで世界初披露した理由

トヨタは上海モーターショー2019(一般公開:2019年4月18日~同年4月25日)で、小型SUV「C-HR」のEV(電気自動車)を世界初披露した。合わせて、中国市場向け兄弟車である「IZOA(イゾア)」のEVバージョンも発表された。なお、両モデルの中国発売は2020年となる。

この2台を皮切りに、トヨタは2020年前半までに世界市場で10車種以上のEVを投入するとしている。そうなると当然、「C-HR EV」の日本発売が気になるところだ。

だが、「その可能性は微妙だ」と筆者はみる。もう少し踏み込んで言えば、仮に導入されても導入時期は中国よりかなり遅いのではないだろうか。筆者がこうした考えに至るには、様々な理由がある。

>>C-HR EVとノーマル C-HRの内外装を画像で比較[20枚]

C-HR EVが上海でデビューした理由とは

まず、なぜ今回の上海ショーで「C-HR EV」がデビューしたかだ。

理由は単純明快。中国政府が2018年から始めた、新エネルギー車(NEV)規制への対応だ。NEV規制は、自動車メーカー各社にEVなどの環境車の一定量の発売義務を負わせるもの。

米カリフォルニア州が1990年から行なっているZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)規制法を、同州と中国政府が協議した上で、中国政府が国家自動車研究所に命じて開発したものだ。

トヨタとしては当初、中国NEV規制に対して、ハイブリッド車も対象としてもらうよう中国政府に働きかけたが、最終的にはハイブリッド車は対象外となった。そのため、トヨタとしては早期にプラグインハイブリッド車、燃料電池車、そしてEVを中国で普及させる必要があるのだ。

以前、トヨタの中国担当役員(当時)は「中国でのEV投入はNEV規制をクリアする分だけ行う」と発言したことがある。

今回の「C-HR EV」「IZOA EV」の発表は、NEV規制の現状を考えると、かなりギリギリのタイミングだと言えるだろう。

NEV規制から見る「C-HR EV」のスペック

今回の発表では「C-HR EV」「IZOA EV」ともに、発売が2020年とまだ先であるため、車両スペックや価格は非公開だった。

気になるのは1充電あたりの航続距離についてだが、NEV規制やEVに関する政府の補助金制度を考慮すると、少なくとも250kmは必要だと思われる。また競合他社のEVを見ると、日系ではEV戦略で先行する日産が昨年から中国で発売している小型セダン「シルフィ EV」が、JC08モードで338km。当然、トヨタとしては「シルフィEV」と同等、またはそれ以上の航続距離を狙ってくるはず。

ただし、航続距離を伸ばそうと思うと必然的に搭載するリチウムイオン二次電池の容量を大きくしなければならない。シルフィEVの場合、「リーフ」との部品の共用性が高く、量産効果によってリチウムイオン二次電池のコストを抑えることができている。また、日産は同電池を製造していたAESC(オートモーティブ・エナジー・サプライ)を2019年3月に中国企業に売却しており、その中国企業は中国国内で工場を新設して電池の大量生産を始める。トヨタとしてもパナソニックとの協業、または中国国内メーカーからの供給を含めて、中国でのリチウムイオン二次電池の確保を急がなければならない。

このようにトヨタにとって「C-HR EV」については、中国市場向けでクリアしなければならないハードルがいくつもある。だから導入は、まずは中国から。次に、CO2規制が厳しさを増す欧州市場への対応でのEV導入。その次あたりに、日本導入になるのではないだろうか。

とはいえ、「シルフィEV」の日本導入の可能性、また日産・三菱アライアンスによる軽「デイズ/eKワゴン EV」の近年中の発売など日本でも今後、EVモデルが一気に増えそうな状況であることも確かだ。トヨタが市場動向を見て、日本向け「C-HR EV」発売時期を早める可能性も否定できない。

[筆者:桃田 健史/撮影:桃田 健史・トヨタ]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

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