テスラモーターズ モデルS 量産型EVセダン試乗レポート/石井昌道(3/3)

テスラモーターズ モデルS 量産型EVセダン試乗レポート/石井昌道
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最高速度は190km/h

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電気モーターはゼロ回転から最大トルクを発揮できるからトルクフルな走りが堪能でき、なおかつ静かでスムーズなのはもはや常識だが、モデルSはそれらの特徴を究極まで洗練させていた。

普通は加速や減速でちょっとしたエレキノイズが聞こえてくるものだが、耳を澄ましてもほとんど感じないぐらいだ。

トルクは400Nmをオーバーしており、アクセルを強く踏みこめば圧巻の加速を見せる。0-100km/h加速は5.9秒でBMW M5と同等なのだ。

しかもレスポンスの良さならエンジン車を遙かに上回るので、100km/h以下ならこの大きさのセダンで右に出るものはいないだろう。超高速域ならエンジンのほうが有利になってくるはずだが、最高速度は190km/hに達するのでアウトバーンでもなければモデルSが劣ることはない。

BMWやメルセデス・ベンツも真っ青

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パフォーマンスもさることながら、それ以上に感心させられたのはあらゆる面でフィーリングがいいことだった。

アクセル操作に対する加速や減速の反応、ブレーキのタッチ、パワーステアリングの手応えなどが完璧に躾けられているのだ。

EVやハイブリッドカーの多くは、リモコン的なステアリングフィールだったりカックンブレーキだったりと、課題を抱えていることも多く、100年の歴史があるエンジン車に劣るのは致し方ないとさえ思われてきたが、モデルSはBMWやメルセデス・ベンツも真っ青なぐらいに極上の操作フィーリングの持ち主なのだ。

電気で操作系をコントロールすればセッティング次第でいかようにもなるもので、その広すぎる自由度がかえって良好なフィーリングを生み出す障壁になるとも聞くが、しっかりと煮詰めていけばいいものは出来るのだとモデルSは証明している。

乗り心地と操縦安定性のバランスも、かなりのハイレベルだった。サスペンションは硬さをほとんど感じさせず、低速域ではアタリがソフト、高速域でもしなやかさをキープし続ける。それでいてコーナーではスムーズな回頭性と安定性を見せつける。

EVはエンジン車では考えられないぐらいに低重心で理想的な前後重量配分が可能だからこういった特性が実現できると知ってはいたが、実際にここまで達成しているのはモデルSが初めてだろう。

これなら名だたる老舗のプレミアム・セダンと比較して、乗り味やパフォーマンスという面でも対抗しうる。いやむしろ、エンジンの鼓動を感じていたいという古い価値観以外では(!?)、勝ってしまっているかもしれない。

さらに、優れたインターフェースや先進的な雰囲気がプラスされるので、流行に敏感なプレミアムセダンユーザーを振り向かせるには十分以上だろう。

世界中の自動車業界に一石を投じる存在

テスラモーターズ モデルS

テスラは航続距離という課題に対してロードスターでもバッテリーを大量に搭載することで折り合いを付けていたが、モデルSでは電力容量を数種類用意して幅広いユーザーニーズに対応している。

40kWhなら256km、60kWhなら368km、85kWhなら480km。

当然、車両価格もかわってくるが、ざっくりと言って500〜1000万円ほどの間であり、ライバルのエンジン車と似たような範疇にあると言える。

テスラが新興EVメーカーのなかで飛び抜けた存在になったのは、自動車にとって何が必要なのか、ユーザーは何を求めているのかといった本質を捉えているからなのかもしれないと、モデルSに試乗して思い至った。

最重要課題である航続距離に対しては決して妥協せず、それによって車両価格が高くなった分はEVだからこそ提供できるエンジン車にはない魅力をふんだんに盛り込んでいく。打算的なシティコミューターと違って我慢を強いることがなく、新たな時代が到来するという夢を抱かせるのだ。

まだ規模は大きくないテスラだが、モデルSの存在が世界中の自動車業界に一石を投じることは間違いないだろう。

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石井 昌道
筆者石井 昌道

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。記事一覧を見る

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