人気すぎて今でも納車は1年待ち!? ジムニーは急いで買うべきなのか

いまでも納期が1年待ち!? 発売から1年経過も人気が続くジムニー/ジムニーシエラ

この数年間に発売された新型車で、特に話題性の高い車種が、軽自動車のスズキ ジムニー(JB64)と小型車版のスズキ ジムニーシエラ(JB74)だろう。いずれも伝統のラダー(ハシゴの)フレームに、エンジンやサスペンションを搭載する後輪駆動ベースの本格的な構造をもつオフロードSUVで、悪路走破力が高い。

>>他のSUVとは違う!? 本格派のジムニー/ジムニーシエラの内外装を画像で見る

外観は直線基調のボディに伝統の丸型ヘッドランプを備え、原点回帰のイメージもある。最近のSUVは、乗用車と共通のプラットフォームを使うシティ派が中心で、単に車高が上がった車内の広いワゴンのようだ。しかしジムニーとジムニーシエラは、SUV本来の悪路走破力を徹底的に高めている。ボディサイズは日本の道路環境にピッタリのサイズだから、多くのユーザーが注目しし、SUVの本質を突いた商品ともいえるだろう。

人気すぎて生産が追いついていない、しかし増産しにくい事情も

問題はジムニーの納期で、生産が受注に追い付かない。発売から1年経過したにもかかわらず、納期は今でも長く、販売店は「契約してから納車されるまでに、ジムニーが1年、ジムニーシエラは1年半を要する」と話す。

過去を振り返ると、発売は2018年7月で、この時点の国内販売目標はジムニーが1年間に1万5000台(1か月当たり1250台)、ジムニーシエラは1200台(同100台)であった。発売直後に両車の受注台数が1年間の販売目標を上まわったので、販売店では「納期は1年以上になる」と説明した。

そこでスズキはフルに生産を行い、2018年の1か月あたりの登録(軽自動車は届け出)台数は、ジムニーが1700~1800台、ジムニーシエラは500~600台であった。1か月の販売目標を大きく上回る生産を行ったが、納期は一向に縮まらない。

2019年には増産に踏み切り、ジムニーは1か月に2500~3000台、ジムニーシエラは600~800台を登録するようになった。発売時点の目標台数に比べると、ジムニーは2.4倍以上、ジムニーシエラは6倍以上に達する。

ここまで生産規模を拡大しながら、納期は相変わらずジムニーが1年、ジムニーシエラは1年半だから相当な人気といえるだろう。

納期の長期化はユーザーに大きな迷惑を掛けることから、スズキはさらに増産すべきだが、将来的に需要が下がると余分な生産設備を抱えることになってしまう。今後の売れ行きを判断するのが難しく、さらなる増産をしにくい事情もある。

このような調子だから、ジムニーが欲しいユーザーは、取り敢えず注文を入れて気長に待つしかないだろう。そこでジムニーとジムニーシエラの買い方を考えたい。

ルックスに惚れても慌てて選ぶべきでない! ジムニーは他のSUVとは違うのだ

最も大切なのは、ジムニー/ジムニーシエラは「悪路向けのSUV」であることだ。現行型は20年ぶりにフルモデルチェンジしたから、走行安定性と乗り心地が大幅に向上して操舵感も自然な方向へ進化したが、オフロードSUVであることに変わりはない。ステアリングや足まわりは、悪路の激しいデコボコを受け流す設定になっている。

そのためにホンダ ヴェゼルやトヨタ C-HRのようなシティ派SUVに比べると、舗装路を走る時の操舵感は曖昧に感じる。また、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が2250mmと短いから、前後方向の揺れも大きめだ。素早い切り返しを強いられると、ボディが左右に大きく振られる傾向もある。いずれも悪路走行に重点を置くから、舗装路での安定性と乗り心地が多少は犠牲になってしまう。

したがって今までジムニーやジムニーシエラを運転した経験のないユーザーが購入する時は、販売店などで入念に試乗したい。まず第一に悪路向けの性能を重視して設計されたクルマであり、舗装路の公道で運転すると違和感が生じることも考えられる。

また最近の軽自動車は車内が広いが、ジムニーとジムニーシエラは実質的に3ドアクーペだ。運転席は相応に快適でも、後席と荷室は狭い。この欠点も確かめてから購入を検討してほしい。

ジムニー(JB64)/ジムニーシエラ(JB74)のどちらを選べばいい?

ジムニーとジムニーシエラの選択は、用途と好みに応じて考えれば良いだろう。

バリエーションの基本になるのは軽自動車のジムニーだ。直列3気筒660ccのターボエンジンは軽快に吹き上がる。ジムニーシエラに比べると、車両の前側を中心に車両重量が40~50kg軽いため、運転感覚も軽快だ。悪路走破力も優れている。

小型車版のジムニーシエラは、直列4気筒1.5Lエンジンの搭載で、実用回転域の駆動力を高めた。4000回転を超えた時の吹き上がりも活発で、峠道や高速道路を使った長距離移動に適する。

ホイールベースはジムニーと同じだが、トレッド(左右のホイールの間隔)はジムニーシエラが広い。前輪と後輪ともに130mm拡大した。タイヤサイズもジムニーは175/80R16、ジムニーシエラは195/80R15とされ、後者がワイドだからカーブを曲がる時に踏ん張りが利く。乗り心地もジムニーシエラは重厚で、タイヤの空気充填量の違いを実感させる。

つまり軽自動車のジムニーは、市街地や悪路での軽快な走りを大切にした。小型車のジムニーシエラは、悪路向けのSUVでありながら、舗装された峠道や高速道路での安定性と快適性に配慮している。従って長距離を移動する機会の多いユーザーには、ジムニーシエラが適する。

そしてジムニーは軽自動車だから税金が安い。ジムニーの軽自動車税は年額1万800円、ジムニーシエラの自動車税は年額3万4500円(2019年10月1日以降の登録なら3万500円)になる。車検を受ける時に納める2年分の自動車重量税は、ジムニーが6600円、ジムニーシエラは2万4600円だ。

車両の価格は、消費税8%の時点で、ジムニーの最上級グレードとなるXCが184万1400円、ジムニーシエラJCは201万9600円だ。アルミホイールとタイヤのサイズが異なり、ジムニーシエラにオーバーフェンダーが装着されるといった違いはあるが、価格差となる17万8200円の大半はエンジンの違いによるものだ。

価格が割安なのは約18万円安いジムニーで、税額も下まわる。従って大半のユーザーがジムニーを選んでおり、ジムニーシエラの売れ行きは25%程度だが、せっかく買うのだから両車を試乗したい。運転感覚と使い方を考えた上で、選択を判断すると良い。納期の長いクルマだから、じっくりと選びたい。

【筆者:渡辺 陽一郎】

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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