スズキ 新型ジムニー、今買っても納車は異例の1年待ち!? その理由に迫る!

前代未聞、納車1年待ちの軽自動車。一体なぜ?

2018年7月5日に発売されたスズキ 新型ジムニーの納期が、1年以上といわれている。

通常であれば、契約して納車されるまでの期間は1ヶ月から1ヶ月半だ。長くても3ヶ月程度だから、1年も待たせるケースは珍しい。

しかも新型ジムニーは、ホンダ NSX等のような海外で生産される特殊なクルマではない。ジムニーは軽自動車で、新型ジムニーシエラは1.5リッターエンジンを搭載するコンパクトなオフロードSUVだ。価格も140~200万円程度に収まるポピュラーなクルマだから、1年を超える納期は異例だろう。

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納期がここまで伸びた2つの理由

納期が伸びた理由は大きく分けて2つある。

まずは新型ジムニーがタイムリーな商品だったことだ。最近はSUVが人気を得ているが、大半の車種は前輪駆動(FF)の乗用車と同じプラットフォームを使って開発される、背の高いワゴンという印象の車種だ。もともとSUVは悪路を走るクルマとして造られ、優れた走破力と野性味のある外観が特徴だったが、近年はマイルドになってSUVらしさも薄れていた。

そこに悪路の走破性を追求したシンプルな外観のコンパクトな新型ジムニーが登場したから、一躍注目されたわけだ。ジムニーはSUVの本質を突いた商品で、フロントマスクやボディサイドの造形的なバランスも良い。1982年に発売された初代パジェロの3ドアなども連想させ、硬派のSUVとして注目された。

2つ目の理由は、新型ジムニーの生産規模が小さいことだ。新型の発売時点におけるメーカーが発表した販売目標は、ジムニーが1年間に1万5000台(1ヶ月平均で1250台)であった。小型車のジムニーシエラは、1年間に1200台(1ヶ月平均で100台)だ。同じスズキのスペーシアは、2018年1~8月の月販平均が1万2817台だから、新型ジムニーの目標はこの10%にとどまる。

ちなみに先代ジムニーは、2017年1~12月に、1ヶ月の平均で1124台を販売していた。フルモデルチェンジを翌年に控えた状態でこの販売実績だから、20年ぶりに刷新された新型の目標が1250台では(先代型の発売は1998年)、納期が伸びて当然だろう。

しかも前述のように新型ジムニーは外観が魅力的だから、発売後の短期間で受注台数が1万5000台、つまり1年分の生産規模を上まわり「納期が1年以上」と説明されるようになった。

受注台数の1万5000台は、一般的にいえば特に多い数字ではない。2018年6月28日に発売されたトヨタ 新型クラウンは、発売後1ヶ月の受注台数が3万台であった。6月20日に発売したスバル 新型フォレスターも、9月13日の時点で1万3282台を受注している。他車の台数を見ても、新型ジムニーの販売計画は少なかった。

今後の生産状況はどうなる!?

気になるのは今後の生産状況だ。販売店は「現時点でも発売当初に比べると生産ペースを高めている。2019年の1月以降には、さらに1.5倍に増強するといわれているが、正確な台数や納期は分からない。お客様に対しては、納期は今のところ1年以上で、ジムニーシエラはさらに伸びるとお伝えしている」という。

生産ペースを上げるに上げられないジレンマ

このように生産規模を一気に増やせないのは、仮に生産ラインを拡大すると、その後も同じペースを保たなければならないからだ。しばらく時間が経過して新型ジムニーの受注台数が下がると、過剰な生産設備を持つことになってムダが生じてしまう。

先の販売店も「今のジムニーの受注状況は、20年に1度の特需のようなものだ。半年も経過すれば需要が落ち着くから、メーカーとしても、現時点の受注台数を基準に生産ラインを増やすことは難しい。お客様には、半年くらい経過してから契約した方が良いと説明している。今の時点で注文をいただいても、納期が曖昧で、下取り車の査定もできない(1年後となれば査定額は大幅に下がる)。納車を待っている間に、気が変わることもある。だからお客様には、時間を少し開けた方が良いとアドバイスしている」と語った。

クルマに限らず、商品にとって納期は大切だ。注文を入れた顧客を待たせれば、迷惑を掛けてしまう。

特に今は新車需要の80%以上が乗り替えだから、下取り車が発生する。大半のユーザーは、愛車の車検期間を見計らって、3ヶ月くらい前から商談を開始するため、納期が長いと新車の納車前に愛車の車検が満了してしまう。それからクルマは嗜好品的な性格が強いため、長く待たされると次第に購買意欲が薄れることもある。

とはいえ待たせすぎ、というのが本音。納期の短縮を望みたい

スズキは顧客を待たせながら「ジムニーの受注台数が1万5000台を突破!」などと誇らしげに発表することはしない。そこは良識ともいえるが、納期を短くできるように尽力して欲しい。

軽自動車の納期が1年というのは、聞いたことがない。長年にわたって軽自動車を手掛けてきたスズキとしては、あるまじき状態になっている。

[Text:渡辺 陽一郎/Photo:島村 栄二]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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