スズキ ジムニー歴代モデル解説|軽の本格クロカン4WD、ジムニーの歴史をおさらい

スズキ ジムニーの歴史を振り返る

いよいよ発売が迫ったスズキ 新型ジムニー。20年ぶりのフルモデルチェンジということで、どんなスタイルになって登場するのか期待されていたジムニーだったが、スズキは素晴らしい仕事をやってのけた!

2018年6月18日に公開された新型ジムニーの画像を見ると、ジムニーがこれまで培ってきた野趣あふれる「ヨンク」の雰囲気や、無骨さ、男らしさ、道具らしさを存分に持ち、世界中の誰が見てもジムニー以外のクルマに見えないほどにジムニーらしさを湛えていたのだ。

見た目はレトロテイストだが、現代のクルマとしての各部のモダンなディティールに目をみはる。懐古主義というわけではないのだ。

そこで今回はスズキ ジムニーの歴史を、軽自動車モデルに限って世代ごとに解説してみようと思う。

■懐かしすぎて逆に新鮮!?歴代ジムニーの画像を見る

ジムニーはデビューして48年。開発の原点は意外なところにあった

ジムニーの原型となった「ホープスター ON」とは!?

ジムニーの登場は今からさかのぼること48年前の1970年。その登場に秘話があることをご存知だろうか。

実はジムニーの「軽の本格4WD」というアイデアは、スズキが考えたものではない。その原型が「ホープスター ON」だ。

ホープスターとは今は亡きホープ自動車が販売していた車のブランドで、同社では1953年の3輪トラックの発売以降、個性的なスタイルを持つ軽の貨物車を作っていた。ところが小さな会社だったホープは大手メーカーの進出に対する競争力を持たず、1965年には早くも自動車生産から撤退、遊園地の遊具生産に業態をシフトしてしまう。

自社販売を諦めたホープ自動車とスズキの運命的な出会い

しかしホープは車への夢捨てきれず、1967年にホープスター ONを開発した。ONの特徴はラダーフレーム、16インチの大径ホイール、前後リジッドアクスル、パートタイム式の全輪駆動システム、高い最低地上高を有してどんな不整地でも走れる本格的な4WDだったこと。まさに小さなジープと言える設計を持っていた。

ONは数百台が販売されたと言われるがその結果は芳しくなく、自社での製造販売を諦めたホープは軽自動車生産メーカー各社にONを製造する権利を買ってもらうように掛け合った。

そして、その中で唯一着目したのがスズキだったのだが、結果としてその決断がジムニーというスズキを代表するクルマを生むきっかけになった。ジムニーの歴史解説の前に前置きが長くなってしまったが、ONのことを触れずしてジムニーを語ることはできないのだ。

ジムニーの歴史/ホープスターON360からJA11まで

基本は「ホロ車」!野性味に満ち溢れていた初代ジムニー

ONのアイデアを引き取ったスズキだが、全体的な完成度が低かったONに対してスズキの技術力を活用して大幅な改良を実施。初代ジムニーが生み出された。1970年の事だった。

シンプルな姿だったONに比べるとぐっとスタイリッシュになったが、スチールのドアすらない「オールホロ」車なのはON譲りだ。登場当初のモデルであるLJ10型のエンジンは25psを発生する空冷2スト359cc2気筒エンジンだったが、1972年にはエンジンが水冷式に改められたLJ20型に進化。この時、ただでさえ寒いホロ車で暖房が効かなかった空冷時代の欠点が克服された。この時バンモデルもようやく登場しているが、ラインナップの基本は「ホロ車」。なんてワイルド!

その後、1976年に軽自動車の規格が変更になったことを受けて初代ジムニーもマイナーチェンジ。エンジンを水冷2スト3気筒539ccに載せ替えてオーバーフェンダーを装備、車体寸法を拡大したジムニー55(ゴーゴー)・SJ10型となった。

快適性を増した2代目も初期は2ストだった

1981年、ジムニーは2代目にフルモデルチェンジして、SJ30型になった。フロントフェンダーが独立し車体にリブが入って道具感あふれた初代に比べ、ボクシーなスタイルとなってそれまでの「いかにもジープ型4WD」というモデルから乗用車に近づいた。居住性や乗り心地も良くなり、オンロードでの使用にもより向くようになった。リアシートが、初代では荷台に置かれた簡易的な対面式のものだったのに対し、2代目モデルでは普通の前向きに変わったこともトピックだ(笑)。

しかし、登場当初は初代のようにフロントウインドウも前に倒れ、ドアすらなかった「純ジープ型モデル」も残り、まだワイルドな印象を残していた。エンジンはSJ10型からキャリーオーバーした水冷2スト3気筒539cc。すでにこのころ日本車から急激に姿を消した2ストモデルの最後の生き残りの一つでもあった。

ついに4ストになったJA71型は1986年にデビュー。搭載されたエンジンは水冷3気筒543cc+ターボだった。さらに1987年、併売されていた2ストのSJ30の生産終了と入れ替わるようにインタークーラー装着モデルを追加している。

初のATが登場、乗用車志向への転換を果たす

1990年にはJA11型に発展する。軽規格変更に合わせてエンジンが657ccとなって排気量の拡大でトルクが増え、一層乗りやすくなった。JA11型の大きな話題は1992年になって追加されたジムニー初となるオートマチックで、ワイルドさ満点だった初代モデルと比べてジムニーが随分と乗用車的な性格に近づいたことを示していた。

2代目ジムニーの最後を飾るJA12/22型は、初代を思わせるフロントマスクが特徴だ。1995年から発売された。ハードなクロスカントリー4WDの証だったリアサスペンションのリーフスプリングがついにコイルスプリングに。これはオンロードでの使用がメインとなったジムニーにとっては必要とも言える進化で、オンロード時の乗り心地と操縦性が大幅に向上するという効果をもたらした。

しかも登場以来貨物車登録(4ナンバー)だけだったジムニーに、しっかりとしたサイズのリアシートが設置された乗用車モデル(5ナンバー)が登場。同時に、これが販売のメインとなったことも大きな変化だった。

洗練された3代目は20年のロングセラーモデルに

高い悪路走破性はそのままに、街乗りにも似合うデザインに進化

1998年、3代目かつ先代モデルとなるJB23型が登場する。無骨さを残しつつもボディデザインは大幅に洗練され、それまでむき出しだったドアヒンジや別体だったバンパーは取り込まれてスッキリした。

インテリアも樹脂で覆われて装備が増え、オンロード性能はさらに磨かれている。かつては特撮で採石や荒れ地を激走するシーンが似合っていたようなジムニーのワイルドさはすっかり見られなくなったが、悪路を走り抜ける性能はジムニーを名乗るだけのそれを保ち続け、オフロードファンをもずっと魅了し続けたことはスズキの慧眼と言えるだろう。

20年という長い生産期間で、サフィックスナンバーがJB23-「10」(いわゆる10型)まで付番されるほどに数限りない改良が行われた結果、程よいアウトドア感と高い実用性を兼ね揃えたオールマイティな軽自動車としてモデル末期でも安定した販売が行われた。

いよいよ登場!ジムニーの哲学を色濃く継いだ4代目

ジムニーは世代を重ねるごと、時代ごとに次第に装備が増えて快適なモデルになっているが、改めて歴史を追ってみると「ジムニーの本質」は変わっていないことに気がつく。

それは、ランドクルーザーやジープなどと同じラダーフレームを持ち、それらの大きなクルマにも負けない悪路走破性を持つジムニーが、ずっと「本格クロカン4WD」であり続けているということだ。

4代目はそれら「ジムニーがジムニーであるための構成要素」を何一つ落とすことがなかったのは嬉しい。

悪路走破性やシンプルなデザインを残しつつ、安全性や快適性は超絶進化!

初代や2代目の雰囲気を見事に受け継いだ新型ジムニーは、直線基調でハコのようなスタイルがとってもシンプルで、華美なデザインを持つクルマが多い中むしろ新鮮に映る。現代流の安全装備や快適装備をしっかり備えつつ、良い意味でのチープさやプリミティブな印象を引き出すことにも成功しているのは素晴らしい。乗用車ベースのSUVが増える中、あえて「ヨンク」本来のラダーフレームのクロカンに乗るという選択肢も面白い。

新型ジムニーもまた長きにわたり愛されるモデルになるに違いない。ここまで期待以上の仕上がりになっているならば、ボディ後半がオープンのホロ車仕様などの登場も期待したいところだ。

[TEXT:遠藤イヅル]

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遠藤 イヅル
筆者遠藤 イヅル

1971年生まれ。カーデザイン専門学校を卒業後、メーカー系レース部門にデザイナーとして在籍。その後会社員デザイナーとして働き、イラストレーター/ライターへ。とくに、本国では売れたのに日本ではほとんど見ることの出来ない実用車に興奮する。20年で所有した17台のうち、フランス車は11台。おふらんすかぶれ。おまけにディープな鉄ちゃん。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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