消費増税後、買っていいクルマと損なクルマとは!?

単純に、消費税8%が10%になるだけではない!

消費増税により、クルマの登録(軽自動車は届け出)のタイミングが2019年10月1日以降になると、消費税も10%に上がる。車両の購入契約が2019年9月30日以前に行われても、登録が10月1日以降であれば、消費税は10%になるから注意したい。

まずはクルマの本体価格だが、従来から消費税を含んだ内税表示とされている。従って消費増税後は、車両の本体価格に対して2%が上乗せされ、消費税を含んだ価格が値上げされる。

例えば車両の本体価格が200万円なら、消費税率が8%の税込み価格は216万円だ。これが10%になれば220万円に増える。今の売れ筋価格帯は、税抜きの本体価格が180~250万円だから、多くのユーザーが実感する値上げ幅は3万5000円から5万円前後だろう。

以上のように消費税率の変更で税込み価格が上がるわけだが、実はその代わり、クルマに関係した税金で一部引き下げられるものがある。そのため、一概に「増税イコール値上げ」とは言い切れないのだ。

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本体価格はいくらアップ? を実感できる代表的な3モデル

■1:リーズナブルなスズキ アルトの場合

価格の安いクルマの代表ともいえるスズキ アルトは、緊急自動ブレーキを作動できるデュアルセンサーブレーキサポートを標準装着して、Sグレードで本体価格が98万3000円だ。消費税率が8%であれば、税込み価格は106万1640円、消費税率が10%に高まると108万1300円だから、1万9660円の値上げになる。

■2:ポピュラーなトヨタ プリウスの場合

人気の高いトヨタ プリウスは、Aグレードで本体価格が263万2000円だ。消費税率が8%の税込み価格は284万2560円、消費税率が10%では289万5200円に高まるから、5万2640円値上げされる。

■3:高級ミニバン トヨタ アルファードの場合

高価格車からはトヨタ アルファード(ハイブリッドG/7人乗り)を取り上げたい。本体価格は462万7000円で、消費税が8%の税込み価格は499万7160円だ。これが10%だと508万9700円だから、9万2540円の値上げとなる。

ややこしい! 消費増税でも値下げの可能性アリ!?

「自動車取得税」廃止&「環境性能割」導入とその軽減措置

まず購入時に納める税金では、自動車取得税が廃止されて、新たに環境性能割が導入される。この税金は取得価格の3%を上限に課税するが、自動車取得税とは税率が異なる。なおかつ2019年10月1日から2020年9月30日までの登録では、税金を安くする軽減措置も実施する。

軽減措置の期間中にクルマを買う場合、例えば「2020年度燃費基準+10%」を達成した日産 ノートNISMOであれば、エコカー減税の対象であっても従来は4万700円の自動車取得税を徴収された。これが2019年10月1日以降の登録では非課税になる。

そして消費増税に伴う値上げは3万9300円だから、環境性能割の軽減措置による4万700円の節約とほぼ同額で、消費増税による負担増加はほぼ相殺される。

加えて、毎年の「自動車税」も引き下げ

さらに2019年10月1日以降に初回登録を行った小型/普通車は、その後に支払う自動車税が、1000円から4500円の範囲で引き下げられる。排気量が1000cc以下の場合は2万9500円(4500円の軽減)、1001~1500ccは3万500円(4000円の軽減)、1501~2000ccは3万6000円(3500円の軽減)という具合だ。

自動車税の引き下げに期限はないので、1200ccエンジンを搭載する日産 ノートの場合、1年所有するたびに4000円の負担が軽減されることになる。

コンパクトカーは、増税前に慌てて買わなくて正解!

小さな車ほど自動車税がおトク

以上のような税金の軽減を踏まえると、価格の安いコンパクトカーほど有利ということになる。

例えばトヨタ パッソ(X・S)の場合、消費増税に伴う本体価格の値上げは2万3000円だ。その代わり自動車取得税の2万3200円は、環境性能割の軽減措置により消費増税後は非課税になる。この段階で消費増税額は全額取り戻せるわけだ。

さらに自動車税は、従来は年額2万9500円だが、10月1日以降の登録であれば4500円安い2万5000円になる。そうなると消費増税前に購入した時に比べて、毎年4500円を節約できる。消費増税後に買う方が明らかに出費を抑えられる。

ただし、軽自動車と排気量2501cc以上のクルマはメリットなし?

軽は「自動車税」でなく「軽自動車税」が適用

このように見ると、エンジン排気量が1500cc以下で、税込み価格が200万円前後までに収まる小型車の場合、増税後に買う方が出費を抑えられる場合が多い。

しかしすべての車種に当てはまる話ではない。以前から自動車取得税が免税だったハイブリッド車やクリーンディーゼル車は、環境性能割の軽減に伴うメリットは生じない。消費増税による負担が増えて、引き下げられるのは自動車税だけだ。

自動車税の引き下げも、排気量の小さな車種ほど大きく、2501cc以上は一律で1000円しか安くならない。排気量車の大きな車種ではメリットが乏しい。

軽自動車にも環境性能割の軽減措置は行われるが、軽自動車税の引き下げはなく、消費増税後の購入がメリットになるとはいえない。

またこのほか販売会社が受け取る各種の手数料、点検や車検の工賃などにも消費税が課税され、この税率も10%に高まる。

忘れちゃいけない、ガソリン価格

腹立たしい二重課税

そしてカーライフに最も甚大な影響を与えるのが燃料価格の値上げだ。もともと燃料の価格は時価の増減が大きく分かりにくいが、消費増税の影響も大きい。なぜなら燃料の価格には税金が含まれ、そこも含めて消費税を掛ける「二重課税」になっているからだ。

例えばガソリン1Lの価格には、ガソリン税が53.8円、石油税が2.8円、合計56.6円が加えられている。ガソリン本体の価格が70円だとすれば、これに56.6円の税金を加えた126.6円に、さらに消費税を課税しているのだ。小売価格は消費税率が8%であれば137円、消費税が10%になると140円に高まる。

ガソリンの本体価格だけに消費税を掛ける本来あるべき方式なら、本体価格が70円の場合で、2%の増税額は1.4円だ。それがガソリン税と石油税にまで消費税を掛けるから、消費増税額が前述の例で2倍の3円に跳ね上がる。

まとめ

結局、よく走る人はガソリン増税が負担

ガソリン価格の上昇は、生活や仕事のためにクルマを使う人達の経済を圧迫する。ガソリン価格の約半額が税金で、そのすべてに消費税を掛ける方法は、困っている人達からお金を巻き上げる狡猾以外の何物でもない。

環境性能割も約束破りだ。以前は「消費税が10%になったら、かつて道路特定財源だった自動車取得税は廃止する」としていた。それを自動車取得税の後継に、「環境性能割」というワケの分からない税金を導入して徴税を続けている。軽減措置を設けてもまったく喜べない。

消費増税で、自動車税制の問題が、改めて浮き彫りにされている。

[筆者:渡辺 陽一郎]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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