ふらつきを抑えたミニバン専用タイヤ新型「ダンロップ・エナセーブRV505」試乗
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:ダンロップ
テストコースと一般道でミニバン専用タイヤをテスト
目次
ダンロップのミニバン専用タイヤであるエナセーブ504が「RV505」へと進化を果たし、この実力を同社テストコースとその周辺一般道でたっぷりと試すことができた。
前作「RV504」でもダンロップは、エナセーブというの名称の通りに優れた耐摩耗性能と低燃費性能で経済性の高さをアピールしていたが、新作ではこの耐摩耗性能を53%も向上。さらに背の高いミニバンの安全性に大きく関わる「耐ふらつき性能」を、19%も高めてきたという。
試走は前述の通りテストコースと一般道を使って行われたが、まずはテストコース内での印象をお伝えすることにしよう。
新作エナセーブRV505と従来モデルのエナセーブRV504を比較
コース内ではトヨタ・アルファードを使い、前作「RV504」と「RV505」の直接比較。これに加えて後部座席2座に60kg×2名分、そしてトランクに40kgのウェイトを積んだ「RV505」を用意するという、手の込んだ内容となっていた。
コース設定は高速周回路を使って行われ、前半ではダブルレーンチェンジと、振動騒音路での静粛性を確認(60km/h走行)。後半の直線路では60km/h、80km/h、100km/hと周回ごとに速度を上げ、ここでの直進安定性を体験。さらに最後の100km/h路では、高速走行時の静粛性を体験した。
剛性感の高さと低燃費性能からくるサラッとした乗り味
まず空荷状態のアルファードに乗って感じたのは、RV505がもたらす剛性感の高さだ。エナセーブが低燃費性能を謳うことからも、タイヤのゴム自体はグリップ感を全面に押し出すタイプではない。むしろサラッとしたコンタクトフィールである。
よって直進する限りはタイヤがスムーズに転がり、乗り心地も至って快適。ただし外周路のカーブ入り口でハンドル切り始めると、タイヤがあまりたわまないことがやや気になった。ハンドルを切ればクルマ自体はきちんと向きを変え始め、横Gが増えるほどに接地感は高まるのだが、初期操舵のインフォメーションがやや薄いのである。
こうした特性はダンロップに限らず、現代の低燃費性能をデフォルトとするタイヤたちにはよく見られる傾向だ。サスペンションが十分縮む前にタイヤの剛性でクルマが向きを変えてしまうため、クルマとの対話ができるドライバーであればここに若干の違和感を感じるかもしれない。
ただし高い荷重がタイヤに掛かる高速走行からのレーンチェンジでは、この剛性が役に立つ。
時速80km/hからトライしたダブルレーンチェンジは、アクセルをさほど閉じることもなく楽勝でクリア。その後の戻し操舵でも揺り返しが少なく、次のレーン復帰操舵にも大きな余裕が生まれた。そして最終的には100km/hでのダブルレーンチェンジをも、軽々とこなすことができた。
ふらつきを抑える「FUNBARI TECHNOLOGY」
こうした特性こそが、ダンロップのいう「FUNBARI TECHNOLOGY」(ふんばりテクノロジー)だ。構造的には左右非対称パターンでアウト側ブロックを大型化し、その接地面積も前作より10%向上させている。
また中央ブロックのアウト側にキャンバー角が付いたリブ(1mm幅)を加える「プラスリブ」という面白い工夫がなされている。これはブロックが倒れ込んだときだけ接地面が増える構造で、直進時には抵抗にならないのだ。ちなみに溝が2本の場合は1つ、溝が3本になるとふたつプラスリブが加えられることになる。
こうしたトレッドパターンの改良によってRV505は、前述の通りレーンチェンジ時において安定性を従来比19%向上させた。
構造面ではサイド部の補強材を高さ方向にサイズアップし、新プロファイル(タイヤの形状)でタイヤが均一にたわむようにした。これによってタイヤのシッカリ感が増えるだけでなく、偏摩耗が53%も向上したのだ。
ダブルレーンチェンジで新旧の違いが明確に
対して前作「RV504」の場合は、タイヤの剛性がソフトな分だけ操舵初期からタイヤのしなりを感じる。これを良しとするか不安定と取るかで変わってくるが、タイヤの動きを感じ取れるドライバーなら、この乗り味は悪くないと思う。ただしダブルレーンチェンジのような場面だと、ビギナーにはその操作が少し難しくなる。大柄なアルファードをスムーズに運転するにはRV505よりも少し手前からアクセルを緩め、ハンドルもずっと手前から少しずつ切り始める必要がある。
こうしてタイヤのしなりを旋回のピークに合わせ、ふらつきを抑えて曲げる運転が求められるのだ。同様に曲がったあとの揺り返しもイメージして、遅れずにハンドルを戻してゆかねばならない。
こうした操作ができればRV504も、インフォメーション豊かな良いタイヤである。逆に言うとこういうマネージメントこそがドライビングテクニックであり、操舵に対する反応が早いRV505の方が、誰もが運転しやすいタイヤだと言えるだろう。
家族や荷物を満載するミニバンでも安心感があるRV505
さらに操舵初期における接地感の少なさも、ウェイトを積んだアルファードに乗ることで不満がばっちり解消された。重量が増えるほどに新型RV505は操舵に対する接地感が高まり、ハンドリングが活きいきしてくる。つまり空荷状態だとややタイヤの剛性が勝ち過ぎるが、家族や荷物を満載するような最もミニバンらしい状況では、ベストな状態になるというわけである。
また静粛性もRV505は確かに向上していた。
RV504も十分に静かで現役感のあるタイヤだが、全域に渡ってRV505は上質感が高い。60km/hで走る振動騒音路では細かな振動をみごとに抑え、全体的なノイズも一段低め。かつ100km/hで走った荒れた路面でも、高周波をマイルドに和らげていた。バイブレーションに関してはトレッド部の接地形状をRV504よりもラウンドさせ、タイヤを中央から路面に接地させる新プロファイルが効果を発揮しているようだ。そして高周波を含めたノイズに関しては、5種類あるブロックのピッチを不等長配列(新カオスピッチ)にすることで、音を分散させている。
こうした技術の進化で数値的にはパターン起因のノイズを34%、ロードノイズを31%も低減させたのだ。
欧州車や軽自動車とのマッチングもいい
さらにダンロップは、2台の欧州車(VW トゥーラン/ルノー カングー)、軽自動車(スズキ スペーシア)、ミニバン(トヨタ ノア)という多彩なバリエーションでRV505を試乗させてくれた。
ここで興味深かったのは、欧州車との組み合わせだ。
特にサスペンションやシャシー剛性の高いVW トゥーランでは、クルマにタイヤが負けていない印象に好感が持てた。ただし初期操舵に対する接地感の少なさは相変わらずだったため、リクエストをして若手開発陣やスタッフ女史たちで7人フル乗車をさせてもらうと、アルファードほどではないがハンドリングに安定感が加わり、ミニバンタイヤとしての真価が確認できた。
逆にルノー カングーのようなソフトな足回りの大柄なミニバンに対しては、タイヤのシャッキリ感がうまくバランスして、ハンドリングが鮮明になった。タイヤのシッカリ度合いからすると人や荷物を満載しても、腰砕け感は出ないだろう。
また規則性なく荒れている一般道では、テストコース以上に快適性が際立った。通常タイヤの剛性が高いと振動は多くなる傾向なのだが、RV505は低級振動を上手に遮断し、静かに走る。全てのサイズで転がり抵抗「AA」を獲得する特性も、滑らかな走りに活かされていた。
今回ウェット性能を試せなかったのが残念だが、総じて新型となったエナセーブRV505は、前作よりもワンランク上の質感を備えたと言える。空荷状態における操舵感の薄さが車種によっては感じられるものの、今後電動化などでミニバンがさらに車重を増して行く状況を考えれば、現状を巧みにカバーしつつ、未来を見据えたタイヤであるとも言えるだろう。
執筆:山田 弘樹 撮影:ダンロップ
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