次期エクストレイルやキックス、アリア導入で狙う日産の今後のSUV戦略とは?(2/2)

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電気自動車SUVのアリア、実際どこまで使えるのか?

今はSUVの人気が高く、新車として売られるクルマの約15%を占める。ミニバンと同等で、軽自動車の37%、コンパクトカーの25%に次いで多いカテゴリーだ。そこで各メーカーともSUVの選択肢を増やしたが、日産はキックス(それ以前はジューク)とエクストレイルしか扱っておらず、SUVの充実という意味も含めて、電気自動車(EV)のアリアを加えるのだ。

アリアはSUVスタイルの電気自動車だから、リーフに比べて、居住空間や荷室の広さに余裕がある。グレードは複数用意され、2WDで駆動用リチウムイオン電池が65kWhの仕様は、最大トルクが30.6kg-mで航続可能距離(WLTCモード)は450kmだ。2WD/90kWh仕様は、最大トルクが30.6kg-mで、航続可能距離は610kmと長い。

4WD/65kWh仕様は、前輪に加えて後輪も駆動するから最大トルクが57.1kg-mに増えて、航続可能距離は430kmだ。4WD/90kWhは、最大トルクが61.2kg-mとパワフルで、航続可能距離も580kmになる。

リーフは駆動方式がすべて2WDで、40kWh仕様は最大トルクが32.6kg-m、航続可能距離は322kmだ。62kWhは最大トルクが34.7kg-mで、航続可能距離は458kmに伸びる。アリアはリーフに比べてリチウムイオン電池容量が65kWh/90kWhと大きく、2WD同士で比べると、SUVスタイルながら航続可能距離も長い。

機能の充実した電気自動車SUVのアリアでは、価格上昇が心配だが、日産によるとベーシックな「2WD/65kWhが約500万円」という。リーフに62kWhを搭載したe+Gが499万8400円だから、アリアはSUVのボディに、多彩な機能と装備を採用しながら価格も割安だ。運転支援機能としてはプロパイロットを標準装着する。

最上級の4WD/90kWh仕様には、スカイラインのハイブリッドと同様、手離しも可能な運転支援機能のプロパイロット2.0が採用され、価格は750~800万円になる。

アリアの2WD/65kWh仕様は高機能で割安だが、日本では総世帯数の約40%がマンションなどの集合住宅に住む。充電設備のある集合住宅はごくわずかだから、電気自動車は普及しにくい。

アリアで電気自動車の本格普及を図りたい日産

このような日本における電気自動車は、集合住宅のユーザーも利用できる急速充電器に頼る使い方になる。そこで日産は、日本国内にある約2070箇所の販売店に、約1900機の急速充電器を設置した。日産の開発者は、地域の電力インフラなどのために急速充電器を設置できない販売店を除くと「ほぼすべての店舗に行き渡った」という。

リーフなど従来の電気自動車では、急速充電を繰り返すと駆動用リチウムイオン電池の劣化が早まるから、普通充電も時々行って欲しいと説明していた。集合住宅に住む普通充電の困難なユーザーにとって、これが電気自動車の所有を妨げる理由にもなっていたが、アリアの開発者は次のように述べている。

「アリアでは新たにバッテリー温度を一定に保つ温度調節システムを採用した。この機能により、充電の所要時間が短縮され、なおかつ急速充電器の使用に伴うリチウムイオン電池の劣化も抑制される。従ってアリアでは、急速充電器を気兼ねなく使える」。

日産としては、アリアで電気自動車の本格普及を図りたいだろう。これが失敗すると、国内市場に対する熱意が再び下がる心配もあるため、結論を急がず着実に普及させて欲しい。

なおアリアは、2020年7月に概要を発表したが、納車を伴う発売は2021年の中頃だ。この発売タイミングからも、長期的な戦略を取ることが分かる。

大本命、次期エクストレイルを徹底予想!

2020年にはエクストレイルのフルモデルチェンジも実施される。日産の販売店によると「今のところ具体的な話はメーカーから来ていないため、エクストレイルのフルモデルチェンジは早くても2020年10月」という。次期エクストレイルは、海外で披露された新型ローグと基本的に同じクルマだ。ボディサイズは現行型と同等で、居住空間や荷室の広さもさほど変わらない。エンジンはe-POWERと2Lのノーマルタイプ(マイルドタイプのスマートシンプルハイブリッドを含む)になる。基本的にセレナと同じ構成だ。

キックスはe-POWERのみだが、エクストレイルではe-POWERの価格が340~400万円に達する。270万円前後のグレードも必要だから、ノーマルエンジンも用意するのだ。プロパイロットなどの運転支援機能も採用するから、エクストレイルの価格帯は270~400万円と幅広い。

以上のように日産のSUVラインナップと価格構成は、キックスが270~290万円、エクストレイルは270~400万円、アリアは500~800万円になる。このように見ると低い価格帯が弱い。キックスに1.5Lノーマルエンジンを搭載するベーシックなグレードを200~220万円に設定する必要も生じるだろう。

次期ノートにはSUV風モデルに期待!

またノートのフルモデルチェンジも予定され、次期型では、現行型のノートCギアよりもデザインを洗練させたSUV風の派生モデルが欲しい。SUVは日本と海外の両方で好調に売れるカテゴリーだから、国内が中心のミニバンよりも開発や生産の効率が優れる。ほかのメーカーと同様、今後の日産はSUVの充実に一層の力を入れるだろう。

[筆者:渡辺 陽一郎]

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筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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