自動車評論家 渡辺 陽一郎が選ぶ! おすすめのクルマドラマ

自動車評論家 渡辺 陽一郎が選ぶオススメドラマとは

編集部から示されたテーマは、クルマの登場が印象的な映画でしたが、「横浜を走るクルマが印象的なTVドラマ」にします。私事で恐縮ですが、生まれ育ったのが横浜で、好きな場所でもあるからです。

横浜×クルマといえば? 懐かしの日産車のカーアクションに魅せられる!

横浜でクルマといえば、筆頭は有名な「あぶない刑事」でしょう。舘ひろしさんと柴田恭兵さんが共演したTVドラマで、劇場公開の映画も作られました。TV版は1986年に放送を開始して、続編も含めて1989年まで放送されています。映画は7本製作され、直近では2016年公開の「さらばあぶない刑事」があります。捜査に使われる、いわゆる覆面パトカーとしては、日産の2代目レパードが頻繁に登場しました。リアサスペンションがセミトレーリングアームの独立式なので、加速する時にはボディの後部が下がって迫力があります。エンジンは前期型が3LのDOHC、後期型はこれにターボを装着したグレードを起用したので動力性能が高く、走行安定性は逆にいまひとつだったため、左右に振りまわすシーンで好都合だったようです。このほか日産が協力していたので、初代セフィーロ、5代目や6代目のセドリックなども登場しました。

クルマを使ったアクションでは、ボディの傾き方が重要です。走行安定性の優れたスポーティなクルマでは、ボディの傾き方が小さく収束性も優れているので、迫力が生じません。その意味でカーアクションは、やはり昭和が一番でしょう。安定性が低い分だけ挙動の変化が大げさになり、独特の迫力が生まれました。

ちなみに最近は、コンピューターを使ってあり得ないような動きを表現するので、迫力云々以前に興ざめな映像が増えています。あぶない刑事では、横浜のロケにこだわっていました。道幅が狭くなる前の横浜市中区の日本大通りでは、複数のパトカーが横浜公園方向から走ってきて、横浜地方裁判所と横浜地方検察庁の玄関付近で一斉にスピンターンしたりします。本牧を通る片側3車線の357号線も良く使われました。道幅が広く歩道橋もあるので、撮影しやすかったのでしょう。

私が横浜に住んでいた時は、走行安定性や乗り心地をチェックをするため、深夜の帰宅途中に357号線を走りました。夜間の平日は交通量がきわめて少なく、車線数は多いので、いろいろと都合が良かったです。首都高速道路から、横浜ベイブリッジの大黒パーキングエリアに至る定常的なコーナーを通り、357号線に入ると入念なチェックを行えました。1950年代から1960年代にかけて、神奈川県住宅公社が横浜市中区周辺に複数建設した鉄筋コンクリート4~5階建ての集合住宅も、ロケ場所として時々使われました。内部の階段を柴田恭兵さんや舘ひろしさんが走り回っていましたが、出かけた経験がないと横浜だとは分からない場所です。穴場的なロケ場所で驚いたのは、中区寿町にある簡易宿泊所の帳場(小さな受け付け)です。今の寿町は、お年寄りが増えて穏やかな雰囲気ですが、当時はかなり血気盛んでした。本物の警察関係者の間でも「寿町は捜査がしにくい」と言われていましたから、当時の撮影クルーは驚いたかも知れません。

もう1つのオススメドラマは、初代「RX-7」が登場する「プロハンター」

2つ目のTVドラマは、これもアクションで「プロハンター」です。草刈正雄さんと藤竜也さんが共演しており、1981年に放送されました。マツダが協力して、初代RX-7が頻繁に登場しています。2人の俳優が共演して、モチーフにクルマを使うパターンは、あぶない刑事の前身ともいえるものでした。プロハンターは渋いカーアクションが多かったです。

例えば京浜東北線の洋光台駅前でロケを行っており、昔はクルマが1台通れる程度の進入路がありました。この道幅の狭いカーブで、初代RX-7が器用にカウンターステアを当てながら走ります。しかもこの進入路は道の両脇にブロックが置かれ、小さな13インチタイヤ(185/70SR13)は、その陰に隠れて良く見えません。クルマの挙動を注意深く見て、ドリフトしていることが分かるマニアックな映像でした。カウンターステアは修正操舵ですから、小さな舵角で速度の低下を防ぐのが本来の運転方法です。この時に駆動力が後輪にしっかりと伝わり、リア側のサスペンションが軽く沈んでいると力強くて美しい。

プロハンターのカーアクションには、派手さよりも本来の走りと美しさを追求する、一種のこだわりを感じたものです。平成の終りが近づく今となっては、影も形もない、昭和の昔話でした。

[筆者:渡辺 陽一郎]

この記事の画像ギャラリーはこちら

  すべての画像を見る >

【PR】MOTAおすすめコンテンツ

検索ワード

渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

MOTA編集方針

「車好きのみんなが見ているメルマガ」やSNSもやってます!
カー用品・カスタムパーツ

愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!

  • 一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?

    これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。

  • 一括査定は本当に高く売れるの?

    これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は、申込翌日18時に最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

新車・中古車を検討の方へ

人気記事ランキング
最新 週間 月間

新着記事

新着 ニュース 新型車 比較 How To
話題の業界トピックス・注目コンテンツ

おすすめの関連記事

日産 セフィーロの最新自動車ニュース/記事

日産のカタログ情報 日産 セフィーロのカタログ情報 日産の中古車検索 日産 セフィーロの中古車検索 日産の記事一覧 日産 セフィーロの記事一覧 日産のニュース一覧 日産 セフィーロのニュース一覧

この記事にコメントする

コメントを受け付けました

コメントしたことをツイートする

しばらくしたのちに掲載されます。内容によっては掲載されない場合もあります。
もし、投稿したコメントを削除したい場合は、
該当するコメントの右上に通報ボタンがありますので、
通報よりその旨をお伝えください。

閉じる