トヨタ ヤリスばかりがなぜ売れる!? デビュー1年後もヤリスがバカ売れする理由を探ってみた

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2020年2月10日の発売以来、トヨタのコンパクトカー「ヤリス」が売れ続けている。ホンダ フィットや日産 ノートなど、ライバルメーカーもニューモデルを続々と投入する中でも、ヤリスが販売上位を維持し続ける理由とは。

デビュー1年後もヤリスがバカ売れする理由を探ってみた。

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目次[開く][閉じる]
  1. ヤリスがコンパクトカークラスでも特に売れている理由とは
  2. ヤリスの弱点とは!? 総合力の高いヤリスにもマイナスポイントがある
  3. ヤリスのオススメは「1.5 G」と「ハイブリッド G」! ただし用途によってはライバル車を推奨する

ヤリスがコンパクトカークラスでも特に売れている理由とは

強豪揃いのコンパクトカー市場

最近は安全装備や環境性能の向上でクルマの価格が高まり、コンパクトカーの売れ行きも伸びた。小型/普通乗用車に占めるコンパクトカーの割合は、10年ほど前は30%前後だったが、今は40%を超える。

そしてコンパクトカーの中でも、特に登録台数の多い車種が「トヨタ ヤリス」だ。

日本自動車販売協会連合会が公表するヤリスの登録台数は、5ドアハッチバックのヤリス+スポーツモデルの「GRヤリス」と、さらにコンパクトSUVの「ヤリスクロス」を合計した数字だが、ヤリスのみを算出しても直近の2021年2月には9950台が登録された。

同じトヨタのハイト系コンパクトカー「ルーミー」は1万1954台、「日産 ノート」は7246台、「ホンダ フィット」は5782台だから、立体駐車場が使いやすい全高1550mm以下に抑えたコンパクトカーでは、ヤリスの人気が最も高い。そこでヤリスが好調に売れる理由と、選ぶ時の注意点などを考えたい。

商品力の高さがポイント

トヨタ ヤリスが好調に売れる一番の理由は、コンパクトカーとして総合的な商品力が高いからだ。

全長が3940mmのコンパクトなボディは、最小回転半径も4.8~5.1mに収まるから小回りの利きも良い。

運転席に座ると、背中から大腿部をしっかりと支えて座り心地が良く、長距離の移動でも疲れにくい。ペダル配置も適切だから、正しい運転姿勢が取れる。インパネ周辺の質感も、おおむね満足できる。

ハイブリッドの超低燃費ぶりが際立つ

エンジンは直列3気筒の1.0リッター、1.5リッター、1.5リッターハイブリッドを用意した。車両重量は1.0Gが970kg、1.5Gは1000kg(無段変速ATのCVT)、ハイブリッドGは1060kgと軽く、加速性能も活発だ。

特にハイブリッドの場合、モーターはエンジンに比べてアクセルペダルを踏み増した時の反応が素早い。動力性能に余裕が感じられて加速も滑らかになり、アクセルペダルを深く踏む機会も減るからノイズも小さく抑えられる。

ノーマルエンジンも1.5リッターは加速力に余裕がある。車両重量も大半のグレードが1トン以下と軽量だから、高速道路や峠道の登坂路でもパワー不足を感じにくい。

そしてWLTCモード燃費は、2WDの場合でヤリス ハイブリッドは35.4~36km/Lだ。コンパクトハイブリッドの先輩格「トヨタ アクア」は27.2~29.8km/L、ノート e-POWERは28.4~29.5km/L、フィット e:HEVは27.2~29.4km/Lだから、ヤリスはライバルのハイブリッドに比べて約7km/L上まわる。比率に換算すれば20~30%の上乗せだ。

軽快な走りの1.5リッターにはMT仕様まで用意される

1.5リッターノーマルエンジンのWLTCモード燃費も、CVTでは21.4~21.6km/Lに達する。

この数値をほかのコンパクトカーに当てはめると、ノーマルエンジンとハイブリッドの中間に位置する。1.5リッターのノーマルエンジンとハイブリッドは、動力性能にも余裕があり、燃費も優れている。

ヤリスは峠道を走った時の運転感覚も楽しい。機敏に良く曲がり、旋回軌跡も拡大させにくい。そこで1.5リッターエンジン搭載車には6速MT(マニュアルトランスミッション)も用意した。X、G、Zの全グレードで、CVTと6速MTを選択できる。

ヤリスには3ドアボディに1.6リッターターボエンジンと4WDを搭載するGRヤリスもあるが、価格は396万円(RZ)と高い。軽快な走りを手軽に楽しみたいユーザーにとって、1.5リッターのヤリスと6速MTの組み合わせは魅力的だ。

注目度の高い安全装備も充実させた。

衝突被害軽減ブレーキは、昼夜の歩行者や昼間の自転車も検知できる。右左折時にも、直進してくる対向車、横断歩道上の歩行者などに対応する。

さらに後方の並走車両を検知したり、後退時に衝突被害軽減ブレーキを作動させる機能も大半のグレードにオプション設定した。

モデルチェンジを機に全店舗扱い車種となり、販売機会も大幅に増えた

このほかヤリスの売れ行きには、トヨタ販売網の変化も影響を与えている。

ヤリスの先代モデル「ヴィッツ」は、トヨタの中でもネッツ店のみの専売モデルだった。

トヨタでは2020年5月から全店が全モデルを販売する体制に移行しており、今では4600店舗でヤリスを購入できる。

日産の約2100店舗、ホンダの約2150店舗に比べると2倍以上の販売網だから、ヤリスの売れ行きを伸ばす効果も大きい。

その代わり、ほかのトヨタ車に与える影響も小さくない。例えば、トヨタのコンパクトカーでハイブリッド専用車の「アクア」は、2015年には軽自動車まで含めて国内販売の総合1位になったが、2021年2月の登録台数は3773台に留まった。先に挙げたヤリスの40%以下になる。

もともとデビュー時から全店舗扱いで好調に売れていたヤリスだったが、ヤリスが急伸したことで代わりにアクアは下がった。

ヤリスの弱点とは!? 総合力の高いヤリスにもマイナスポイントがある

後席の狭さ、後方視界の悪さは試乗で事前に確認しておきたい

以上のようにヤリスは数々の特徴を備えて好調に売れているが、選ぶ時の注意点もある。

まず実用面では後席の足元空間が狭い。

身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ1つ少々に留まる。同じ測り方をした場合、日産 ノートは握りコブシ2つ分、ホンダ フィットは2つ半だから、ヤリスの後席は明らかに窮屈だ。

リヤゲートを寝かせたから、荷室容量も小さい。床面積は相応に確保されるが、荷室高が不足気味で背の高い荷物は収納しにくい。後席や荷室を使う機会があるユーザーは、購入前に居住性や積載性を確認しておきたい。

後方視界も良くない。サイドウィンドウの下端を後ろに向けて持ち上げたので、斜め後方が見にくい。真後ろのウィンドウも、左右の幅が狭めだ。縦列駐車や車庫入れを行い、後方視界など運転のしやすさに不満がないかチェックしておきたい。

静粛性や乗り心地には割切った面も

運転中に気になるのはエンジン音だ。

動力性能には余裕があるが、3気筒とあって、アクセルペダルを深く踏むと粗いノイズが気になる。ハイブリッドはモーター駆動の効果でエンジンの負荷が小さいが、ノーマルエンジンでは騒々しくなりやすい。

試乗車で自宅付近の登坂路などを走り、ノイズに不満がないか確かめた方が良いだろう。

乗り心地も硬めだ。特に14インチタイヤは転がり抵抗に配慮した設計で、指定空気圧も前輪が250kPa、後輪も240kPaと高い。そのために乗り心地で不利になり、時速40km以下で街中を走ると粗さを感じやすい。

15インチタイヤは、指定空気圧も前輪230kPa/後輪220kPaに下がって快適性が高まる。16インチは前輪220kPa/後輪210kPaだ。

16インチは15インチに比べて路面をつかむ性能が高まるが、乗り心地は少し硬い。それでも引き締まり感が伴い、14インチほど不快な印象にはならない。

従って14インチタイヤ装着車の購入を希望する時は、15あるいは16インチタイヤを備えた仕様と乗り比べて乗り心地を判断したい。

ヤリスのオススメは「1.5 G」と「ハイブリッド G」! ただし用途によってはライバル車を推奨する

注意! ヤリスをファミリーカーとして使うのはあまり向いていない

ヤリスの用途としては、後席と荷室が狭いので、ファミリーユーザーなど3名以上で乗車する使い方には適さない。その場合はライバル車のホンダ フィットや日産 ノートを検討したい。

その代わり、2名以内の乗車で使う場合は選ぶメリットも増える。特に燃費が優れているから、走行距離が伸びるユーザーにはピッタリだ。運転支援機能も備えるから、長距離を頻繁に移動しても疲れにくく、燃料代も抑えられる。運転の楽しいクルマが好きなユーザーにも適する。

カーライフジャーナリストがオススメするグレードは「ハイブリッド G」

グレード選びも考えたい。

エンジンは動力性能やノイズに考慮すると、1.5リッターのノーマルエンジンかハイブリッドを推奨する。

中級のGグレード同士で比べると、ハイブリッドの価格はノーマルエンジンに比べて37万4000円高いが、ノーマルエンジンにオプション設定となるバックガイドモニターなどが標準装着される。これら装備の違いを補正すると、ノーマルエンジンとハイブリッドの実質差額は35万円になる。さらにハイブリッドは税額も安く、最終的な差額は約30万円まで接近する。

WLTCモード燃費を実用燃費とし、1リッターのレギュラーガソリン価格を145円とそれぞれ想定して、この30万円を燃料代の差額で取り戻せるのは、11万kmを走った頃だ。1年間に1万5000kmを走れば、7~8年で取り戻せる。

もっとも、前述の通りハイブリッドは動力性能に余裕があってノイズも小さいので、最終的な判断は両タイプを乗り比べてから行いたい。走行距離が短いのに、走りの魅力でハイブリッドを選ぶユーザーも多い。

グレードはノーマルエンジン、ハイブリッドともに中級のGが割安だ。

ただしGにオプション設定されるLEDヘッドランプ、シートヒーターなどを含んだコンフォートシートセットをオプション装着する時は、これらを両方ともに標準装着したZを選ぶ方が割安だ。装備の選び方に応じて、グレードの選択も変わる。

[筆者:渡辺 陽一郎]

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中古価格:
107.1万円328.1万円
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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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