メルセデス・ベンツ CLS350 ブルーエフィシェンシー 試乗レポート/小沢コージ(1/4)
- 筆者: 小沢 コージ
- カメラマン:メルセデス・ベンツ日本
「HubertLee」という才能が生んだ肉食獣
CLS。
私は、CLSのデザインほど最近のメルセデスを象徴するものはなく、かつ恐ろしい存在もないと考えている。
それは、批判を承知で言うならば“ベンツが作ったジャガー”だと思うからだ。
そもそもCLSのコンセプトである「4ドアクーペ」自体、ジャガーサルーンの為にあるような言葉だし、初代をリアからみると60年代のジャガーEタイプ的でありながら、前から見るとしっかりとモダンなメルセデスで、さらに真横から見るとXJのような優美さすらあったりする。
恐ろしいほど自在にデザイン要素の出し入れをやってのけつつ、主張もある。つまり、工業製品であると同時にアートでもあるという、それが最近のメルセデスデザインの白眉であり、その頂点がCLSだと思う。
おそらく彼らはライオンとヒョウをくっつけても、見事に雄々しい野獣を作ることができるだろう。
彼は世界的に有名なデザインスクール、アメリカのアートセンターをトップクラスの成績で卒業したエース級で、卒業後はアウディなどからも誘いを受けた人物。
彼は、自らが手掛けたCLSを評し「オーガニックでスカルプチャー」と言った。有機的で彫刻的、まさにその通りだ。
フロントフェンダーの肉食獣を思わせる迫力は今までにないもので、それでいて初代の要素も有機的に取り込まれている。いまの優秀なデザイナーは、モダンデザインの中に伝統のディテールを巧みに織り交ぜ、自由自在にクリエイティブする。
それも、天下の“メルセデス”ブランドを背負いながら。
ある意味、和・洋・中の各素材と料理法を駆使する天才シェフのような存在であり、彼は「2代目CLSが新アイコンになるかもしれない」と宣言した。要するに、今後メルセデスからCLSのエッセンスを踏襲したデザインが続出するかもしれないのだ。
恐るべき才能である。
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