マツダ CX-3 2018年大幅改良モデル 徹底解説│ディーゼルエンジンのライトサイジング化や内外装を大幅変更(2/2)
- 筆者： 渡辺 陽一郎
- カメラマン：和田 清志
Gベクタリングコントロールやタイヤの新開発により、快適な乗り心地と走行安定性を両立
足まわりの設定も見直している。2016年の改良で、走行状態に応じて自動的にブレーキを作動させ、車両の挙動を滑らかに安定させるGベクタリングコントロールを採用した。この特徴をさらに進化させ、サスペンションに連続性のある滑らかさを与えた。ショックアブソーバーを大径化して剛性を高め、バネ定数（スプリングレート）の低減、サスペンショントップマウントの減衰性を高めるといった変更を施している。
さらに前述のようにタイヤが新開発され、側面とトレッド（接地面）の剛性を最適化した。上下方向は路面からの入力を柔軟に受け止め、トレッドは捩れを抑えてしっかりグリップする。快適な乗り心地と走行安定性の両立を図った。
従来型のCX-3も乗り心地の改善を受けていたが、カーブを曲がっている最中に路面のデコボコを乗り越えたりすると、少し突っ張るような角のあるショックが伝わった。新型ではそこをマイルドに抑えている。操舵感も改善され、小さな舵角から車両の向きが正確に変わるようになった。
マツダ初の「夜間歩行者検知機能」の他、レーダークルーズコントロールは「全車速追従機能」を加えた
装備では安全性の向上に注目したい。単眼カメラとミリ波レーダーを併用する方式は従来と同じだが、「夜間歩行者検知機能」をマツダ車では初採用している。
またパーキングブレーキが従来のレバー式からオートホールド機能を備えた電動式に変わったため、レーダークルーズコントロールに全車速追従機能を加えた。従来は時速30～100kmの間で作動したが、新型では停車まで追従走行が行える。パーキングブレーキが電動式になると、自動停車して時間が経過しても、電動パーキングブレーキの作動で停車状態を維持できるからだ。
デミオのSUVではなく、CX-5の縮小版というイメージ
新型の価格を2WDで見ると、ガソリンエンジン車で買い得な20Sプロアクティブが6速AT／MTともに233万2800円。クリーンディーゼルターボのXDプロアクティブが263万880円だ。ガソリンは4万8600円、ディーゼルは2万8080円値上げされた。
しかし20Sプロアクティブには、従来型では5万4000円でメーカーオプション設定になっていたスマートブレーキサポート＆マツダレーダークルーズコントロールが標準装着されている。こういった装備や機能の向上を考えると、むしろ買い得感を強めたといえそうだ。
ライバル車となるヴェゼルの価格は、2WDの1.5リッターエンジンを積んだXホンダセンシングが216万5000円、ハイブリッドXホンダセンシングが253万9000円になる。CX-3は装備がヴェゼルよりも少し充実する代わりに、価格も高い。加えてヴェゼルは、後席や荷室も広いから、実用性ではCX-3が見劣りする。
そうなると従来からCX-3の特徴とされていた快適な乗り心地や上質感を、どこまで高められたかが問われるだろう。全長が4300mm以下で上質感を重視した日本車が欲しいユーザーには、CX-3は検討する価値のあるクルマだと思う。
CX-3がデミオのプラットフォームを使ったSUVと考えれば割高に思えるが、試乗すると、むしろCX-5の縮小版であることに気付く。これはCX-3が従来から備えていた特徴だが、新型はさらに洗練させた。
クルマの方向性がはっきりしているので、改良時でも曖昧になったりブレたりしない
今のマツダ車は、どれも基本的に同じ性格だ。そのためにユーザー層を狭めている面はあるが、クルマ造りの考え方と方向性はハッキリしている。マイナーチェンジでクルマの性格が曖昧になったり、ブレたりする不満は生じない。改良を受けるほどに、特徴が明確になっていく。発売されて3年以上を経過しながら、選ぶ価値を高められるのは、今のマツダ車のメリットだろう。色褪せず、円熟を深めるのが嬉しい。
[Text：渡辺陽一郎 Photo：和田 清志]
| マツダ CX-3 主要諸元 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| グレード | 20S／ 20S PROACTIVE／ 20S PROACTIVE S Package／ 20S L Package | 20S Exclusive Mods | XD／ XD PROACTIVE／ XD PROACTIVE S Package／ XD L Package | XD Exclusive Mods | |
全長 | 4,275mm | ||||
全幅 | 1,765mm | ||||
全高 | 1,550mm | ||||
ホイール | 2,570mm | ||||
乗車定員 | 5名 | ||||
車両重量 | 1,250kg | 1,250kg | 1,300kg | 1,330kg | |
| エンジン主要諸元 | |||||
種類 | 水冷直列4気筒DOHC16バルブ | 水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ | |||
総排気量 | 1,997cc | 1,756cc | |||
内径×行程 | 83.5mm x 91.2mm | 79.0mm x 89.6mm | |||
最高出力 | 110kw (150PS)/6,000rpm | 85kw (116PS)/4,000rpm | |||
最大トルク | 195N･m (19.9kgf･m)/2,800rpm | 270N･m (27.5kgf･m)/1,600-2,600rpm | |||
燃費 | 16.0km/L | 16.0km/L | 20.0km/L | 20.0km/L | |
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1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る
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