シビれる電気SUV「ジャガー I-PACE」登場|会場には錦織圭選手も

  • 筆者: 内田 俊一
  • カメラマン:内田 俊一、ジャガー・ランドローバー・ジャパン、オートックワン編集部

100%電気自動車のジャガー、I-PACEが日本でもデビュー

100%電気自動車のジャガ ーI-PACEが日本でもデビューした。

2018年9月26日、都内で開催された発表会では、イギリスからデザイナーも来日。さらに、プロテニスプレイヤーであり、ジャガーブランドアンバサダーの錦織 圭選手も登場し盛り上がりをも見せたので、その様子をご報告しよう。

◆錦織 圭選手も登場! 全く新しい電気SUV、I-PACEの発表会の様子をもっと見る

真の英国のアイコン的ブランド

ジャガーというブランドは80年以上も前にサー・ウィリアム・ライオンズが創設した自動車メーカーだ。そのビジョンについて、「美しく、速く、パワフルな、まるで動物のジャガーのようなクルマを製造することでした。それがまさに社名となった所以なのです」とブランドヒストリーを紹介するのは、ジャガー・ランドローバー・ジャパン代表取締役社長のマグナス・ハンソン氏だ。

「それ以来、ジャガーは高級車の魅力を満載した伝説的なクルマを世界に向けて届けてきました。故にジャガーは真の英国のアイコン的なブランドといえるでしょう」という。

またジャガーは、「この輝かしい歴史を刻みながらも、さらに未来に向かって先進的なものをオファーしようとしています。我々の気高い誇りの結晶であり、ジャガーの脈々と引き継がれたDNAを確実に未来に向けて発信する、それがまさにフルバッテリー電気自動車、I-PACEなのです」と紹介した。

欧州ブランド初のフルバッテリーSUV、航続距離は400km以上

このI-PACE、ヨーロッパブランドではまさに初めてとなる、SUVのフルバッテリー電気自動車だ。つまり、「他の名だたる高級車メーカーに先んじて、ゼロエミッションのプレミアムSUVをユーザーに届けることになるのです。さらに、ジャガーとしてしかるべきエレガントさ、外観の美しさ、そして見るからに性能の高そうなボディデザインを纏い、実際にハイスピードも実現できました」。

そしてフル充電後は400km以上の航続距離も可能と発表され、「これだけあればほとんどの人の日常の需要を満たすのではないでしょうか。この素晴らしいクルマの開発は、ひとえに英国が誇るべき才能溢れたジャガーのデザイナーと、エンジニアの存在を証明した賜物なのです」と英国ブランドの象徴であることを強調した。

納車時期については、「2019年早々にはお客様の手元に届けられる運びとなっています」と、そのタイミングを述べた。

駐日英国大使のポール・マデン閣下も登壇

また今回の発表会には、駐日英国大使のポール・マデン閣下も登壇。

「今日も大使の公用車であるジャガーに乗ってきました。英国を代表するクルマであるジャガーが、業界初のフルバッテリー電気自動車のSUVを発表することになり大変嬉しく、また誇らしく思います」とし、一足早く英国大使館内で試乗した感想として、「想像していた電気自動車とは全く異なり、I-PACEの静かな走り出しと、力強い加速力にびっくりしました。日本のクルマ好きの方々もきっと満足するでしょう」と好印象な様子であった。

I-PACEのプロポーションの妙と、ジャガーらしさ

モチーフは007映画に登場したコンセプトカー、CX-75

本国からジャガー・ランドローバー・アドバンスト・デザイン・ディレクターのジュリアン・トンプソン氏が来日し、I-PACEのデザインについて説明した。彼は2000年に同社に入社し、それ以降、「おそらくこれが最もワクワクし、また、最もジャガーの歴史においても重要な車両だといえるでしょう」という。

そもそもこのI-PACEは、コンセプトカー、CX-75からスタートした。このコンセプトカーは、ジェームズ・ボンドの映画「007 スペクター」にも登場しているので、見た方も多いだろう。そのモチーフを生かし、デザインを練り上げていった。

その特徴はボンネットの長さが通常の内燃機関を搭載しているものよりもはるかに短いこと、また、3mにも及ぶホイールベースとの対比を挙げ、「プロポーションが全く異なっています。全長は4.7m以下ですのでキャブスペースが大きいということがわかるでしょう」という。

一方、フロントデザインはまさしくジャガーだ。フロントグリルはもとより、ヘッドランプには“ダブルJグラフィック”が入り、マトリックスLEDヘッドランプとなっている。

またフロントフェンダーは、「まるで動物のジャガーの肩のように見せ、筋肉質な動物のようなイメージを表現。動きもあり、全てのジャガーと同様に1時間に100マイルは走りそう、止まっていてもそのスピード感を思い起こさせるデザインになっています。またキャビンはフロント寄りになっており、これはミッドエンジンのスポーツカーによく使われる手法で、独特な雰囲気を醸し出すと同時に、モダンさも感じさせているのです」と説明する。

空力へのこだわり

このI-PACEのデザインはかなり空力を意識している。「空気がフロントグリルから入り、ボンネットの下から上に抜け、そこから流れるようにフロントウインドウを通ってリアに向かっていきます」。また、バンパー左右からホイールアーチにかけて後方にも流している。その結果、リアワイパーはいらなくなったという。空気がきれいに流れるので、リアウインドウはクリーンなまま保たれるのだ。

同様に、リア周りはきれいにカットされ、エッジの立ったデザイン的効果とともに、こちらも空力にも貢献している。

こういったことは、「何時間もかけて風洞を使い、車両の空力を考えていきました。最終的に空気抵抗係数(Cd値)を0.29にまで抑えることに成功したのです。本当に細かいところにまで注力し最適化しました」と、かなり注力したことを語る。

電動化の恩恵でキャビンと収納スペースにゆとり

インテリアデザインはゆとりのある広さ感とともに、ドライバーを中心に考えられた。また、コックピット周りの品質や操作のしやすさをも重視されている。その結果、「美しいスイッチ類、そしてその触感がとても良いものになりました」とトンプソン氏。そして、「他のジャガーと同様、最高の品質、そしてプレミアムな素材を使っていますので、素晴らしいクラフトマンシップがクルマ全体に施されているのです」とした。

また、電気のパワートレインであることから、「車両内に多くのスペースを持つことができました。シートの下に10リットルのストレージスペースが設けられましたし、ラゲッジスペースは656リットル、“フルート”と呼ばれるフロントボンネット内のスペースには、27リットルのサイズを確保しています」と説明した。

パワフルな加速を可能にするツインモーターAWD

続いて登場したのはジャガー・ランドローバー・ジャパン・マーケティング広報部ディレクターの若林 敬一氏。若林氏が「このクルマの魅力のひとつ」というのがモーターで、永久磁石の同期式電動モーターが前後に1つずつ搭載されている。フロントのモーターは前輪を、リアのモーターは後輪をそれぞれ駆動する。

この2つを合わせて最高出力400ps、最大トルク696Nmを発揮。0~100km/h加速は4.8秒と、「スポーツカーと思うくらいの性能を有しています。それにも関わらず、実用性能はWLTPモードで470kmと、電気自動車として心配される航続距離は十分なものを確保しています」という。

日産のe-POWERのようなシングルペダルドライブも可能に

また新しい運転方法ということで、シングルペダルのドライビングが可能となった。これは日産リーフやノート e-POWER、BMW i3などと同様に、アクセルを踏めば加速、アクセルを離せば減速という運転の仕方だ。当然減速するときに発生する物理エネルギーもしっかり電気に変える、回生ブレーキも採用している。

高度なバッテリーマネージメント

高度なバッテリーマネージメントのテクノロジーとして、家のエアコン等でも使われているヒートポンプ技術を活用。「排熱を回収し1kWhの熱エネルギーを2.5kWhのバッテリーエネルギーに変換。これによってバッテリー充電時も外部電源によるマネージメントや、温度マネージメント、あるいは外部電源から室内のエアコンの調整をするなどとてもスマートにエネルギーをマネージメントする仕組みになっています」と説明。

ジャガーお得意のアルミも多様、高剛性と軽量化に貢献

ボディに関しては、94%アルミを使用。前後重量配分は50対50だ。そのねじり剛性はジャガーFタイプが33kNm/degに対して、それを上回る36kNm/degと高いねじり剛性を確保。サスペンションはフロント、ダブルウィッシュボーン式、リアはインテグラルリンクを採用し、「素晴らしい乗り味と走行性能を両立しています」と若林氏はいう。

SUVらしく悪路走破への配慮も

エアサス搭載車では車高調整が可能で、悪路では+50mm車高を上げ、乗降時は-40mm下げることが可能だ。そして高速走行時には-10mm車高を下げることができる仕様になっている。

ジャガーのSUVらしさとしては、渡河水深度が500mm確保されていることも特徴的だ。

未来が現実になった

歩行者エアバッグ、wi-fi、ワイヤレスアップデートなど最新機能を装備

そのほかADAS(先進運転支援システム)系では、アダプティブクルーズコントロールをはじめ多くの装備が充実。

また安全と安心の技術として、数多くのテクノロジーがこのクルマには搭載されている。フロント部分には歩行者エアバッグも採用されており、「歩行者に対する安全ということについてもしっかりと気を使って設計されています」という。

コネクティビティについては、室内には多くのディスプレイが採用されているほか、4Gのwi-fi環境も備えている。さらにリモートで少し離れたところからでも充電状況やコントロール、ロックアンロックも可能。

おもてなし機能としてスマートセッティングもあり、これは人工知能を使い、クルマに近づいてきた人が持っているスマートフォンやリモートキーのBluetoothを介し、ドライバーを特定。その人の好みのシートアレンジやラジオ局、好みの空調といったものをセッティングしてくれるものだ。

またジャガー・ランドローバーとしては初めてのワイヤレスアップデートが可能となった。これはOver the airというもので、最新のソフトウェアをワイヤレスのインターネット経由でダウンロードしインストールするものだ。若林氏は、「まさに未来が現在になったというのがワイヤレスアップデートではないだろうか」とした。

普通、急速両方の充電に対応

当然EVなので充電が必要だが、I-PACEは普通充電と急速充電の両方に対応している。

若林氏によると、「普通充電では、自宅に200Vを引くことができれば、最大7kw、現実には3KWから6KWの充電設備簡単に設置することができます。この場合では10時間ほどの充電で全くゼロの状態から80%まで充電することが可能。戸建住宅に住んでいるお客様への充電設備のサポートについては我々のディーラーがしっかりと行います」と説明。

急速充電は、「一般的な50kwの充電にはもちろん対応しており、将来に備えて100kwまでの対応が可能と、非常に高性能な急速充電を受け入れる性能を持っています。この50kwの場合では85分でほぼ80%の充電が可能です。またCHAdeMOにも対応しているので、全国7000箇所以上の充電設備で充電可能ですから、より身近な存在の電気自動車ではないかと思います」と述べる。

充実の新車保証も付帯

新車保証期間に関してもI-PACEは力を入れている。通常のジャガーが3年10万km保証であるのに対し、I-PACEは5年走行距離無制限である。バッテリーについては最長8年間、または16万kmの保証。具体的には70%以下の容量になるとこれを交換するという保証内容だ。

また他のジャガーには3年間メンテナンスフリーパッケージが付けられるが、I-PACEではそれを2年延長し、5年間のメンテナンスフリーとなり、「本当に安心の塊のような電気自動車といえるでしょう」と充実したサービス内容にも触れた。

錦織 圭選手「まるで空を飛んでいるような走行感覚」

発表会の最後に登場したのはプロテニスプレイヤーで、2014年からジャガーのブランドアンバサダーを務めている錦織 圭選手。全米オープンベスト4入りを果たし、発表会当日に帰国したばかりだ。

I-PACEの第一印象を問われると、「今日初めて見ましたがパワフルな印象もありますね。電気自動車ですが、格好良さや速さを感じるクルマ。特に格好良いという印象をすごく強く感じます」という。また、この発表会前に試乗しており、「乗り心地がすごく良かった。電気自動車ならではの音の静かな感じがすごく印象的で、未来感というものをフィーリングで感じました。すごくスムーズに動くので、まるで空を飛んでいるようなイメージでした」と笑顔だ。

また、「アメリカのフロリダで運転することが多いので、遠出したり練習に行ったり、またご飯に行くときや、近くにビーチなども近くにあるのでそういう時に使ってみたいですね」と使用シーンを語る。

I-PACEのキーワード、前述した“シビれる”にかけて、これはシビれたなという印象に残った出来事について尋ねられると、「小さい頃に海に行った時に、クラゲに刺されて本当にシビれました(笑)。後はプレー中の自分がウイナーを取った時、自分の得意なショットを綺麗に決めた時などは試合中でもシビれる感覚になります」とコメント。

そして最後に今後の目標はとの問いに、「来週は東京で楽天オープンもあるのでそこで良いテニスと良い結果を残せたらと思っています。今年は残り4から5大会あるので全力でプレーして最後にザ・ファイナルに出られるように頑張りたい」と述べた。

シビれる電気ジャガー

ジャガー・ランドローバーにはオンラインセールスアドバイザーというシステムがあり、これは本来、日本全国の在庫を検索し、その在庫からジャガーやランドローバーを注文できるシステムだ。I-PACEのマーケティング施策ではこのシステムを使い、3台のI-PACEをいち早く手に入ることが可能となった。その販売は9月26日発表当日からとなっている。

また、ジャガー東京が10月1日より有明に14台ものクルマを展示できる新ショールームをオープンさせる。この場所にて11月14日から12月20日まで先行試乗と受注会が開催される。この申し込みも9月26日よりウェブサイトで可能とされた。またここではカスタム受注も用意されており、「現在の受注状況では3月納車になりますが、この期間のパーソナライズでの受注では、4月から5月納車のクルマをベースに自分好みのクルマをオーダーできる販売プロモーションも行われます」(若林氏)。

今回の発表会会場にはあちこちに“JAGUAR ELECTRIFIES シビれる電気ジャガー”と書かれている。このELECTRIFIESというのは、「電動化を進めるという意味と同時に、電気は刺激なので、刺激を与えるという意味も込めています。まさにこれを日本語に訳すとシビれるということで、感性をシビれさせる、感性が刺激されるクルマ、皆さんのハートに訴える、好きになってくれるクルマだと思います」とまとめた。

I-PACEでEV革命の最前線へ

全モデルの電動化、フォーミュラE参戦やワンメイクレースも

ジャガー・ランドローバーは電動化技術開発に総力を挙げている。今回のI-PACE以外にも多くのチャレンジが行われている点について、若林氏は、「2020年までにジャガーとランドローバーの全てのラインナップに電動化のオプションを用意します。そして、フォーミュラEにもすでに参戦。また、今年からはこのI-PACEを使ったワンメイクレース、“e TROPHY”を企画し実行に移しています」とコメント。

また今の自動車業界を牽引していくACES(A:自動運転、C:コネクテッド、E:電動化、S:カーシェアリング)に向けても、「我々は一歩一歩駒を進めています。そのうちのEとしてI-PACEを発表しましたが、このI-PACEをWAYMOに2万台提供することで、2020年には自動運転のサービスも始める計画となっています。つまり我々がまさにEV革命の最前線へしっかりと一歩を踏み出すのだというための意欲作がこのI-PACEなのです」と語った。

[Text: 内田 俊一 / Photo: 内田 俊一 / ジャガー・ランドローバー・ジャパン / オートックワン編集部]

ジャガー I-PACE スペック

■ボディサイズ

・全長×全幅×全高:4682mm×2011mm×1565mm

・ホイールベース:2990mm

■重量

・車両重量:2208kg

・車両総重量:2670kg

■エンジン:EV400

・最高出力:294kW(400PS)

・駆動方式:AWD

■ブレーキ

・フロント型式:ベンチレーテッドディスク

・フロント直径:350mm

・リヤ型式:ベンチレーテッドディスク

・リヤ直径:325mm

・パーキングブレーキ:電子パーキングブレーキ(EPB)はブレーキキャリパー一体型

■パフォーマンス

・WLTP航続距離:最長480km

・WLTP燃料消費量:最大21.2kWh/100km

・CO2排出量:0g CO2/km

・最高速度:200km/h

・加速性能:0-100km/h加速 4.8秒

ボディカラー一覧

フォトンレッド(※)、ユーロンホワイト、フジホワイト、シージアムブルー、サントリーニブラック、ナルヴィックブラック、コリスグレー、ボラスコグレー、インダスシルバー、ファラロンパールブラック、フィレンツェレッド、シリコンシルバー

※I-PACE FIRST EDITION専用色。本記事の車両もこのカラーリング。

ジャガー I-PACE 車両価格

・I-PACE S:959万円

・I-PACE SE:1064万円

・I-PACE HES:1162万円

・I-PACE FIRST EDITION:1312万円

※価格はいずれも消費税込み

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内田 俊一
筆者内田 俊一

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員記事一覧を見る

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監修者MOTA編集部

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