背の低いミニバンが絶滅危惧種になったワケ | ミニバンマイスターに聞いてみた

そういえば最近、背の低いミニバンをあまり見かけない

皆さんがミニバンと聞いて思い浮かべるクルマといえば、背の高いワンボックス型のトヨタ ヴォクシーやアルファードではないだろうか。しかし少し前まではホンダ オデッセイやトヨタ ウィッシュなど背の低い3列シートのクルマが人気だった。あんなに街を走っていた低全高ミニバンはどうして消えてしまったのか。そして消えた低全高ミニバンの代わりに登場したものとは。その理由を“ミニバンマイスター”に語ってもらった。

>>こんな時代もあった・・・消えていった背の低いミニバンを画像で振り返る

いま売れ筋のミニバンはボックス型ばかり

トヨタ アルファード
トヨタ ヴォクシー
2019年現在、多人数乗用車のミニバンの売れ筋は、圧倒的にボックス型である。2019年1~6月の乗用車販売台数ランキングでは、全体5位のお手ごろミニバンのトヨタ シエンタはともかく、7位トヨタ ヴォクシー、8位ホンダ フリード、13位トヨタ アルファード、16位ホンダ ステップワゴン、17位トヨタ ノア、22位トヨタ エスクァイア、25位トヨタ ヴェルファイア、36位三菱 デリカD:5、40位ホンダ オデッセイと、ベスト40に、国内で売られているすべてのボックス型ミニバンがランクイン。シエンタ、フリード、オデッセイにしても、今や高全高ミニバンの部類に入る。

そこで懐かしく感じるのが、1990~2000年代の一大ミニバンブーム。その火付け役は初代オデッセイやステップワゴンで、まさに日本の国民車にまで登り詰めたのである。

走りも乗車人数も求める欲張りユーザーにウケた低全高ミニバン

そんなミニバンブームに便乗して(?)、当時は需要もあって登場したのがホンダ ストリーム、トヨタ ウィッシュ、三菱グランディス、スバル エクシーガなどの低全高ミニバンたち。

かなりのヒット作となったストリームとウィッシュは全高1600mm程度のヒンジドアミニバン。これらのクルマは、背の高いミニバンを嫌いつつ、3列シートも念のため欲しい、あるいは3列シートがありながらもスポーティーな走りを楽しみたい欲張りなファミリーユーザーにウケたのだ。

しかし背が低いミニバンならではの問題点があった

ウィッシュ 内装 2列目
ウィッシュ 内装 3列目

そうした低全高ミニバンの3列目シートは、乗ってみれば分かる通り、乗り降りが大変。そして車内は狭く、大人がしっかりと乗れるスペースは十分に確保されていなかった。

手元にあるウィッシュのデータを見てシミュレートしてみる。2列目シートを一番後ろまで下げた状態で、3列目シートに身長172cmの筆者が座ったとすると、ひざ回りスペースは無く2列目シートの背にひざ頭が食い込む。もちろん2列目シートを前方にスライドさせれば、ひざ回りスペースは8cmぐらいを確保できるのだが(2列目シートひざ回りスペース約15cm時)、窮屈で長時間の着座には不向きだろう。天井へは約8cmのスペースしかなく頭もギリギリで圧迫感もある。

筆者は2002年から2代目オデッセイの3LV6アブソルートに乗っていたのだが、3代目でいきなり超低全高(FFで全高1550mm)になり、天井の低さや空間の狭さゆえ、断固として容認することができず、3代目には乗り換えなかったのである。

快適とは程遠い、夏場は暑い3列目シート

さらに細かいことを言えば、低全高ミニバンの多くは(3・4代目オデッセイなどを除く)後席エアコン吹き出し口を持たない。

そんなクルマに暑い中で3列目シートに座ってみれば、エアコンの冷風はほとんど届かず、頭の直後に位置するリアウインドーから差し込む日差しによって、頭まで暑く快適とはほど遠い。

その点、ボックス型ミニバンのほとんどは2・3列目シート頭上左右にエアコン吹き出し口が備わり、車種・グレードによっては独立温度調整も可能なものまである。さらに2列目シートのサイドウインドウにはロールサンシェードも備われば快適そのもの。2列目シートが左右独立のキャプテンシートなら、乗り降りも楽々だ。

ミニバンは“やっぱり大空間”という気づき

低全高ミニバンのユーザーの多くは、3列目シートを畳んでワゴン化して使うことで、なんとか乗り続けていたわけだが、そのユーザーたちも背の低いミニバンのデメリットに気が付き「ミニバンはやっぱり大空間」という結論にたどり着いた。

アルファード セカンドシート
アルファード サードシート

両側スライドドアによる乗降性の圧倒的な便利さもあり、ミニバンの主流はいつしか、ステップワゴン、ノア&ヴォクシー、アルファード&ヴェルファイアといった高全高・存在感のあるボックス型に集約されることになったのも、当然と言えば当然だ。

最近では、VIPや芸能人の多くが、大型セダンからアルファード&ヴェルファイアのようなハイエンドミニバンに乗り換えているのも、乗り降りのしやすさや、大型セダンの比ではない車内の広さと快適性を備えているからだろう。

3列シートが不要になったミニバンユーザーたちはSUVへ流れ着いた

トヨタ RAV4

SUVがこれほどブームになっているのも、セダンやワゴンに比べ、全高と室内高に余裕があり、今では3列目シートが不要になったミニバンユーザーの代替え車としても魅力的な存在だからだろう。

ミニバンを買うなら・・・背の高い両側スライドドア車に限る

現行の国産ボックス型ミニバンのお薦めは、5ナンバーの小型車枠程度にサイズを収めているMクラスのステップワゴンとセレナ、さらに大きいLクラスであればアルファード&ヴェルファイアだ。

ステップワゴン わくわくゲート

ステップワゴンはMクラスならではの軽快な走りが可能で、車体後方のスペースがなくても横開きバックドアを開閉できる“わくわくゲート”によりバックドア回りの使い勝手も良い。運転負荷を軽減してくれるACC(アダプティブクルーズコントロール)も完備する。あるいはe-POWERでおなじみのセレナのプロパイロットモデルもオススメだ。さらに大きいLクラスではもちろんアルファード&ヴェルファイアに尽きる。

ステップワゴン、アルファード&ヴェルファイアなどのフルハイブリッドなら、車内外で使えるAC100V/1500Wコンセントも用意できるから、便利さでも文句なしである。

中古車を含め、多人数乗用車としてミニバンを買うなら、迷わず「背の高い両側スライドドア車に限る」というのが、業界でミニバンマイスターと呼ばれていたこともある、ミニバン歴13年のボクの結論である。

[筆者:青山尚暉]

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青山 尚暉
筆者青山 尚暉

学生時代はプロミュージシャン、その後自動車専門誌2誌の編集を経てフリーのモータージャーナリストに。現在は自動車業界だけでなく、愛犬のラブラドールとジャックラッセルとともに、愛犬との快適で安全なクルマ旅を提案するドッグライフプロデューサーとしても活動中。また、クルマのパッケージを寸法で比較するため、独自の計測ツールを開発。1台につき25項目以上を詳密計測。実用性の目安として、記事中で展開している。現在、自動車用純正ペット用アクセサリーの企画、開発も行う。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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