アイデア飛ばしすぎ? “すぐに消えてしまった迷車” 5選

すぐに消えてしまった、アイデアに満ち溢れた迷車たち

今思うと、どうしてその企画が通ったの? というクルマってありますよね。1980年代と1990年代にかけて大量に、そして2000年代にもいくつかアイデアに満ち溢れた印象に残るクルマが登場しています。

しかもすぐに消えてしまったり、1世代限りで終わったクルマが多いのも特徴です。車種を削るに削り、堅実で失敗のないラインナップを進めがちな現在の国産メーカーでは考えられません。

そこで今回は、そんな“1世代で消えてしまった迷車”から5台を選んでお送りいたします。

>>ユーノスやZも! 懐かしのクルマたちを画像で見る

車内はパーソナルスペース! アイデアは秀逸だった三菱 ミラージュ・ザイビクス

三菱伝統の小型車「ミラージュ」は三菱初のFF車として1978年にデビューし、明快なスタイリングのハッチバックとして人気を呼びました。

1987年には、当時のギャランなどと同じく抑揚あるデザインを持った3代目が登場。CM曲はユーミンの名曲オンパレードでしたね。「どうしてどうして…」と始まるCMソングが懐かしい(遠い目)。3代目の特徴は、4つの性格づけ。それが高性能版の「サイボーグ」、スポーティな「スイフト」、女性向けの「ファビオ」、そして「ザイビクス(XYVYX)」でした。

ザイビクスは3ドアハッチバックのリアクォーターウィンドウを埋め、室内はなんと2シーター。リアシート部分は「オーナーが自由に仕立てる空間」というコンセプトで、クルマ自体もカスタマイズ素材として装備はシンプル、トランスミッションも5速MTのみでした。

豊富なオプションの中でも、ルーフに載せる後付けの箱「マルチトップ」の裏側から6インチモニターを下げた「AVキット」に当時は驚かされました。車内でゆっくりTVが見られる(でも、あくまでもTVだけ)、という画期的なアイデアでした。さすがにこのザイビクス、発想が突飛すぎて売れ行きは低迷。なんと発売1年ほどでカタログ落ちしてしまいました(涙)。

あだ名は「ウナギイヌ」!? アメリカンデザインが自慢の日産NXクーペ

2004年にティーダに替えられて消滅した日産のビッグネーム、「サニー」。日本を代表するファミリーカーですが、サニーには伝統的にクーペモデルが歴代で存在していました。

7代目サニーのクーペは独立して「NXクーペ」を名乗り、1990年に登場。スタイリッシュなフォルム、Tバールーフの採用など、Z32型フェアレディZの意匠を採用していました。

これは、Z32型同様にカリフォルニアの「NDI」がデザインを行ったため。でも、グリルレスで奥まったヘッドライト、どことなく全体的にツルンとした外観から、一部でついたあだ名は、某マンガに出てくるキャラ「ウナギイヌ」…(涙)。1994年までのモデルライフを全うしましたが、最後までパッとしない、1世代限りのクルマになってしまいました。後継モデルはさらに華のない「サニー・ルキノ」というのもなんだか皮肉です。ちなみにNXクーペのキャッチコピーは「タイムマシンかもしれない」でした。

なおこの頃のクーペは、今のように「2ドアモデル=スポーツカー」という図式は絶対ではなく、飛び抜けた性能もなく、「パーソナル感を強めた“普通のクルマ”」として認知されていました。「クーペが選択肢として当たり前に存在した」ことなんて、ユーティリティを重視する現代のクルマ選びから見れば、考えられませんよね。

今ならインスタ映えるかも? “かぼちゃの馬車”ことWill Vi

Willとは、トヨタ、花王、アサヒビール、パナソニック、近畿日本ツーリスト、コクヨ、グリコなど全く異なる業種が集まってメーカーの垣根を越え、統一したブランドを使用するという画期的な異業種合同プロジェクトでした。

そのため、Willのクルマはトヨタ製なのにトヨタの名を冠していません。2000年に登場した「Vi(ヴイアイ)」は、Willから生まれた3車種の一つで、ヴィッツをベースに「かぼちゃの馬車」をイメージした愛くるしいデザインを採用。小さい車体ながらも独立したトランク、「クリフカット」という逆反り形状のリアウインドウが独特でした。その思い切ったデザイン処理は、まるでコンセプトカーのよう。ターゲットは若い女性だったため、落ち着いた色調でフランスパンをモチーフにしたダッシュボードなど、凝ったインテリアも特徴でした。

ところがこのWill Vi、価格帯がヴィッツより大幅に上だったこと、またデザインが「やりすぎ(筆者の勝手な解釈ですが)」だったこともあったのか、販売台数は全く伸びず2001年末には生産を終了。まさしく「すぐに消えてしまった迷車」です。今なら、この徹底したオシャレ感こそインスタ映えにぴったり!? あえて愛車にViを選ぶのも、面白いかもしれません。

ラインナップ埋め、苦肉の策……悲劇のユーノス100/300

「マツダ ロードスター」は現在のモデルで4代目。初代は1989年、「ユーノス ロードスター」として登場しています。

ユーノスとは、当時のマツダが画策していた販売チャンネルの多角化で生まれたブランド「マツダ」「アンフィニ」「ユーノス」「オートラマ」「オートザム」の一つでした。しかし、急ごしらえの多チャンネル化で持ち駒が足りなかったため、マツダはブランド名と名前を変えた「バッヂエンジニアリング車」を大量に開発。ユーノス店にはファミリアベースのスペシャリティカー「ファミリア アスティナ」と、4ドアハードトップのパーソナルカー「ペルソナ」をそれぞれ「ユーノス100」「ユーノス300」として投入。ブランド開設直後の販売車種不足を埋めることに。どちらもアスティナ、ペルソナにわずかな衣装変更を与えただけでしたが、イメージチェンジには成功しています。

しかし、ユーザーはそういうことは見透かしてしまうもの。ユーノス店にはその後「ユーノス コスモ」「ユーノス プレッソ」「ユーノス500」「ユーノス800」など、個性あふれるクルマが誕生しますが、ユーノス100と300はその陰に隠れたまま、1世代限りで生涯を終了。そしてユーノス店も1996年には早くも消滅しました。

ミッドシップでSUVの軽! アイデアを実行に移しちゃった、2代目ホンダ Z

ホンダというメーカーは、本当にたまに「これ、よく発売したね」というクルマを出しますよね。思い出されるのがこれ、「2代目ホンダ Z」。

1970年に「ホンダ NIII」をベースにしたスペシャリティ軽自動車として登場した初代から一変、背も地上高もあるSUVスタイルで、悪路走破性を高めた4WDという、名前以外何の関連もないモデルとして1998年に出現しました。2代目Z最大の特徴は、凝りに凝りまくった設計。52psの自然吸気及び64psの3気筒ターボエンジンを床下に縦置き搭載したミッドシップレイアウト、それにより前後重量配分50:50! を実現して高いハンドリングと広い室内空間を得ていた…のでした。

あらゆる理想を達成するために、これまで考えつかなかったような設計を容赦なく取り入れ、しかもそのアイデアを実行に移してしまったという、実にホンダらしい欲張りなクルマとも言えます。

しかし、3ドアの使い勝手の悪さ、凝った設計による価格の高さ、いまいち掴み所のないコンセプトのために販売は低迷。わずか3年で生産を終え、ミッドシップ+SUVという斬新な軽自動車は、あっという間に命脈を絶ちました。

[筆者:遠藤 イヅル]

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遠藤 イヅル
筆者遠藤 イヅル

1971年生まれ。カーデザイン専門学校を卒業後、メーカー系レース部門にデザイナーとして在籍。その後会社員デザイナーとして働き、イラストレーター/ライターへ。とくに、本国では売れたのに日本ではほとんど見ることの出来ない実用車に興奮する。20年で所有した17台のうち、フランス車は11台。おふらんすかぶれ。おまけにディープな鉄ちゃん。 [遠藤イヅルFacebookページ] http://www.facebook.com/endoizuru記事一覧を見る

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