独アッパーミドルプレミアムサルーン徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
上級のSクラスに通じる雰囲気
W212型Eクラスでは、2世代続いた丸型ヘッドライトをやめて、角型4灯式の新しいデザインにチャレンジした。ボディサイズは従来の微増で、複雑な面とラインを組み合わせたエクステリアデザインとされた。
まだ目になじまないような気もするところだが、セダンの新しい時代の到来を感じさせるたたずまいである。シャシーは大きく変更され、従来とサスペンション形式も変わった。
また、E550にはAIRマティックサスペンション、それ以外のモデルにはDIRECT CONTROL サスペンションが与えられる。いずれも、乗り心地の快適性と、優れた操縦安定性を実現している。
ダイレクトステアリングは、操舵角に応じてステアリングギア比を変化させることで、微低速時の取り回し性、高速時の直進性、俊敏な運動性能の両立を図っている。
ただし、現状では切り始めや戻した時の反応などに違和感があり、もう少し洗練されることに期待したい。エンジン、トランスミッションは従来のキャリーオーバーとなる。
試乗したE350には、最高出力200kW(272ps)/6,000rpm、最大トルク350Nm(35.7kgm)/2,400~5,000rpmというスペックの3.5LV6ユニットが搭載される。このエンジンは、低回転域からトルクフルで、緻密な回転フィールを持っている。
熟成されたドライブフィール
4,925mmという全長は、今回の中でもっとも大きい。
2009年初頭のマイナーチェンジで細部がリデザインされ、より個性的なルックスとなった。
もともとスポーツバックのような流麗なワンモーションフォルムは、セダンとして先進的だったこともあり、古さを感じさせない。
マイナーチェンジでエンジンが大きく変更され、従来のトップモデルの4.2L V8が廃され、最高出力213kW(290ps)/4,850~6,800rpm、最大トルク420Nm(42.8kgm)/2,500~4,850rpmというスペックのスーパーチャージャー付き3L V6が用意された。
トランスミッションは、6速AT(ティプトロニック)が組み合わされる。低回転域からピックアップに優れる同ユニットは、本領発揮となる3,000rpm以上でさらにパワフルとなり、レッドゾーンの6,700rpmまで力強く吹け上がる。
最新のクワトロシステムは、前後輪に40:60の非対称トルク配分を行なう。サスペンションは、高速になるとフラット感が増していく。従来はやや大きめのピッチングが気になることも多かったが、だいぶ抑えられており、熟成を感じさせる。
スポーツセダンとしての側面もうかがわせるシャープなステアリングレスポンスを持ち、1.9トンにも及ぼうという車重を忘れさせる。
ただし、可変ギアレシオではないが、ハンドルの重さが速度により不自然なくらいに変わるところが気になるのは、最近のアウディ車に共通する部分ではある。
しっとりとした上質な乗り心地
ベースのパサートも、ベーシックながらスペシャリティ感のあるミドルセダンだが、それをさらに4ドアクーペ化し、スペシャリティなイメージを際立たせたのがパサートCCだ。
スタイリッシュなエクステリアデザインは、細部の作り込みにより見た目の質感も高く仕上げられており、存在感もある。ただし、惜しむらくはボディカラーのラインナップにくすんだ色が多く、個人的にはもう少しキャッチーな色があってもよろしいかと思う。
ステアリングフィールは、軽いながらもしっかり感のある、VW車の中でも最良の仕上がりとなっている。上記2モデルとは反対のゆったりとしたレシオで、リラックスして乗れる設定でありつつ、路面をしなやかに掴むロードホールディング性能の高さを感じ取れる。
街中から高速巡航まで、あらゆるシーンで感じられる、しっとりとした上質な乗り心地の良さは、このクルマの美点といえる。
パワートレインは、2L直噴ターボエンジン+6速AT FFの「2.0TFSI」と、3.6L V6+6速DSG 4WDの「V6 4MOTION」という2種類が選べる。
両者の価格差は100万円あまりとなっているが、乗り味もけっこう異なる。低回転から力強く、扱いやすい特性の2L直噴ターボエンジンに、ATの組み合わされる2.0TFSIは、フットワークにも軽快感があり、こちらのほうが好みであった。逆にV6 4MOTIONには、高級車らしい重厚感がある。
標準装備品の違いを考えると、価格差は妥当というか、むしろ後者に買い得感があるほどである。
デザイン・スペックの総評
Eクラスのスタイリングについて現時点では賛否両論のようだが、新しい境地に踏み出して当初はなじまなくても、やがて認められるというのはメルセデスにとってよくあること。
パサートCCは、近年のチャレンジングなフォルクスワーゲンを象徴する存在だと思う。こうして並べると、比較的水平基調のA6のほうが大人しく見えるほどだ。
走りの味付けもそれぞれ。メルセデスがついに可変レシオステアリングを本格的に導入した。アウディは、FFベースの4WDながら、そのイメージの払拭を図るハンドリングを追求したことをうかがわせる。
反対にパサートCCは、いたってオーソドックスに、快適な走りを目指したことをうかがわせる。実際、今回の中でもっとも気になる部分がなかったのはパサートCCである。
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