フラッグシップサルーン 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:茂呂幸正
大柄ボディを感じさせないフットワーク
先代E65/66型の前期モデルでは、先を行き過ぎたデザインが、一部では絶賛され、一部では敬遠され、かくして後期モデルでは大幅にデザインの軌道修正をした経緯がある。それも踏まえてか、現行モデルでは、どちらかというと普遍性のあるスタイリングにまとめられている。
しかしながら、ここまで大きくなったキドニーグリルや、全体のボディパネルの抑揚のつけ方などを見るにつけ、変化に富んだスポーティかつ優雅なスタイルは、遠目にも非常に印象的である。
ボディにアルミを採用するなどして大幅な軽量を図った点も特徴だ。
デビュー当初のエンジンラインアップはX6と同じく、240kW(326ps)/450Nmの3L直6パラレルツインターボと、300kW(407ps)/600Nmの4.4L V8ツインターボで、ともに直噴仕様となる。全車とも6速AT が組み合わされる。
後者を搭載する750iは、走り出しにやや飛び出し感があるものの、2トンを超えるボディを極めてスムーズに加速させる。スペックどおりパワフルで、回すほどに美しい響きを奏でてくれる。
ハンドリングは、BMWが手がけると、このクラスのセダンでもこうなれるのかという印象だ。大柄なボディのハンデをまったく感じさせない俊敏なフットワークを示し、ペースを上げても終始安定している。これには、BMW初採用の「インテグレイテッド・アクディブ・ステアリング」のため。前後輪が60kmまでの低速域では逆位相に、80kmからは同位相となるというものだ。
また、ダンパー特性だけでなく、エンジンやシフトスケジュール、ステアリング特性を統合して4段階の走行モードを切り替えることのできる「ダイナミック・ドライビング・コントロール」も、このクルマをドライブする楽しみを、より味わい深く演出してくれる。
高級サルーンのお手本といえる完成度
このクラスの高級セダンを代表する存在でありながら、その座に安住せず、現行W221型Sクラスではチャレンジングなエクステリアデザインを披露した。
本国に続いて、今年秋には日本仕様もマイナーチェンジの予定と伝えられるが、どうやらそれほど大きく変わることはないようだ。
日本仕様のエンジンラインアップは、AMGを除くと、3.5L V6、5.5L V8、5.5L V12ツインターボの3タイプ。まもなくハイブリッドの追加も予定されている。
4MATICは、Sクラスの代表的ユニットである285kW(387ps)/530Nmの5.5L V8が搭載される。2WD車とのスペックの違いはない。AMGならずとも、非常にパワフルで、スムーズな吹け上がり。低速域から欲しいときに必要なだけのトルクをイメージどおりに得ることができる。
ドライブフィール全般は、このクラスの高級サルーンのお手本のような仕上がり。乗り心地とスタビリティのさじ加減や、フラットな乗り味など、すべてのバランスが絶妙である。おっとりとした動きの中に、しっかりとした接地感と、リニアな操縦性がある。また、ブレーキのマナーもSクラスがもっとも優れる。
初期の当たりがソフトなLSから乗り換えると、しばらく路面の小さな段差を越えたときの動き出しにやや固さを感じるが、4輪エアサスの味付けの基本はあくまでコンフォート志向だ。
今回の取材車両は4MATICだが、ドライのオンロードで4WDであることを感じるシーンは、わずかに増えた車重以外にほとんどない。これが悪条件下となるほど、4MATICが本領を発揮してくれることだろう。
快適性を極めた日本発高級サルーン
トヨタブランドのトップであるマジェスタが、日本でもレクサスを展開して以来、初のモデルチェンジを迎えたが、新しいマジェスタを見るにつけ、LSは世界を視野に入れた高級サルーンとして位置づけられていることが、あらためてうかがい知れるような気がする。
デビュー当初は、スタイリングにもう少し思い切った部分が欲しいとも思ったものだが、あらためて見ると、旧来のセルシオユーザーにも受け入れられ、かつ世界の強豪と並べてもひけを取らないという、上手いところをついているように思う。
AWD車では270kW(367ps)/473Nmを発生する、筒内直噴とポートのツイン燃料噴射とした4.6L V8エンジンは、十分な動力性能を提供しつつ、とにかく静かで滑らか。世界初 の電子制御8速ATは、いつ変速したのかわからないほどスムーズだ。
4輪マルチリンクサスペンションは、全車が電子制御エアサス仕様となり、ソフトな乗り心地による快適性は極めて高い。反面、路面の凹凸には影響されやすく、ボディが揺すられがちで、ステアリングやブレーキ操作による姿勢変化もやや大きめではある。
取材車両はAWD車だが、LSならマジェスタのように、AWD車では8速ATが与えられなくなるようなこともない。2WD車に比べて、全天候型の操縦安定性を手に入れたことは、とくに降雪地ユーザーにとっても恩恵にあずかれるはずだ。
フロントサスのジオメトリーが2WD車に比べて変わっているが、切りはじめから90度ほどの転舵までのステアリングフィールは、むしろ自然になっている。反面、その先ではアンダーステア傾向が強くなる。電動パワステとしてはまずまずだと思うのだが、ドイツ勢に比べると、操舵時の手応えのなさ、インフォメーションの薄さは否めない。そこを重視するユーザーにとっては物足りないかもしれない。
デザイン・スペックの総評
日本で乗るには、どれがもっとも適するかという切り口からすると、LSのソフトで静かで滑らかという、極めて優れた快適性は、高く評価されて当然と思う。その点に限っては、ドイツの2台をしのぐともいえる。ただし、むろん7シリーズやSクラスも快適性のレベルが低いわけではない。
走行性能ではやはりドイツの2台に分があるし、快適性にも関係する細かい部分の仕上がりも、LSは気になる部分がいくつかある。たとえばブレーキも、ちゃんとスムーズに減速させるには、細やかなコントロールが必要になり、かえって難しい面も。また、ブレーキホールドから復帰させる際も、やや引っかかり感が認められる。
その点、Sクラスはスムーズだし、ブレーキそのものも意のままに減速させることができる。BMWも初期はゲインが高いがコントロール性は高い。
ハンドリングも、ドイツの2台はニュートラルステアだが、LSは現実的な速度域でも、アンダーステアが強いところは惜しまれる。
10・15モード燃費は、BMW740iが7.8km/L、750iと750iLが6.6km/L、メルセデス・ベンツS550とS550L(2WD)が6.7km/Lや、レクサスLS460(2WD)が9.1km/Lとなっており、LSの好数値が光る。
愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!
-
一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?
これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。
-
一括査定は本当に高く売れるの?
これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は最短3時間後、最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。