ロードスター/S660/コペンセロを徹底比較 ~オープンの解放感を楽しむ国産コンパクトクーペ~(3/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
FRのスポーツカーを意識させる引き締まったデザイン
「ロードスター」のインパネは今のマツダ車に共通する水平基調のデザイン。BMWに似た印象も受けるが、メーターパネルは中央に大きなタコメーター(エンジン回転計)が装着され、スポーツカーらしさを盛り上げる。
試乗したグレードは「Sスペシャルパッケージ」の6速MT(270万円)。インパネの中央には7インチWVGAセンターディスプレイが標準装着され、専用のSDカード(4万8,600円)を挿入すればカーナビとしても機能する。
着座位置は低いが、違和感を抱くほどではない。天井が低いために腰の高さを調節する一般的なシートリフターは付かないが、座面の前方はダイヤルで上下できる。体格に応じて大腿部のサポート性を調節可能だ。
座り心地は硬めで、座面に体が沈むタイプではないが、ボリューム不足はない。背もたれの下側を硬めに仕上げ、しっかりと体を支える。
運転席に座った時の周囲の見え方は、外観と同じく典型的なスポーツカー。左右のフェンダーが適度に盛り上がり、車幅やボディの先端位置が分かりやすい。デザインで面白いのは、ドアの内側の上端部分とボディを同色にしたこと。車内と外側に連続性があり、これもクルマとの一体感を強めている。
エンジンを縦方向に搭載したFR車を感じるのは、前後席の中央に位置するセンターコンソールが高いことだ。エンジンの後方にトランスミッションを配置して、着座位置は低めだから、相対的にセンター部分が高まった。左脇を引き締めると最適な位置にシフトレバーがあり、前後左右に動く範囲も適度で気持ち良くシフトできる。視覚的にも引き締まった印象で車両との一体感を得やすい。
視界は、サイドウインドーの下端が高いので側方は見にくい。後方はドライバーとリアウインドーの間隔が近いために意外に見やすい。
ソフトトップは手動で開閉するが、改善を受けて片手で操作できるようになった。
安全装備では、車線逸脱警報、斜め後方を並走する車両を知らせるブラインドスポットモニタリングなどは用意するが、前方の車両や歩行者を検知する緊急自動ブレーキが可能な衝突回避の支援機能は設定されていない。
ドライバーがクルマの一部になるようなコクピット
「S660」は他の2車種に比べると、乗る時から印象が違う。全高が1,180mmだから、国産のクーペでは天井が最も低い。ソフトトップを装着した状態ではクルマに潜り込む感覚になる。
ボディが小さいから、クーペとして取りまわし性は悪くないが、側方と後方の視界は良くない。サイドウインドーの下端が高く、なおかつ上下寸法が乏しいから、ソフトトップを装着した状態では顔を出すこともできず、閉鎖感が伴う。
後方もエンジンフードが高く、左右方向が見にくい。慣れるまではオプションのリアカメラが必要になりそうだ。しかし走行中にルームミラーを見た時の後方視界は、違和感のない程度に確保される。
一方、前方はボンネットは見えないものの視界は良い。
インパネには遊び心を感じる。大型のタコメーターが装着され、速度はその内部にデジタルで表示する。エアコンのスイッチなどが収まるインパネの中央部分は立体的に仕上げた。
軽自動車の中では質感が高い。助手席の前側にソフトパッドも装着した。サイドブレーキレバーの付近は樹脂を意識させるが、ていねいに造り込んだ。
試乗したグレードは上級に位置する「α(アルファ)」の6速MT(218万円)。スポーツレザーシート、ステンレス製スポーツペダルなどが標準装着される。
シートは、天井が低いために床と座面の間隔が乏しく、手足を伸ばし気味に座る。座面も硬めだがサポート性は良く、着座姿勢が乱れにくい。乗り込むとドライバーがクルマの一部になったような印象があり、視覚的な一体感は「ロードスター」と同等かそれ以上に強い。
ソフトトップは、前後のピラー(柱)の間に位置する天井部分だけが脱着され、オープン時には巻き取るように畳んでフロントフード内の収納スペースに収める。ソフトトップの使い勝手は、ライバル2車の方が優れている。
安全装備は、緊急自動ブレーキの作動が可能なシティブレーキアクティブシステム(3万7,800円)をオプションで用意した。赤外線レーザーを使った低速用で、時速30km以下で作動する。またサイドエアバッグを全車に標準装着した。
電動開閉式のハードトップを装着したスペシャルティカー
ライバル2車はスポーツカーの雰囲気が濃厚だが、「コペンセロ」は乗用車感覚が強い。全高が1,280mmだから乗降性が良いとはいえないが、無理な姿勢を強いられる心配はない。
そして全車が電動開閉式ハードトップのアクティブトップを装着するから、開閉時に操作するのはピラーの上部に装着されたロックと電動開閉スイッチのみ。不意に雨が降り始めた時も安心だ。
ハードトップを閉じた状態では、トランクスペースが広がることもメリット。底は浅いが面積は相応にあり、荷物を収納しやすい。荷物を積んでいる時には、電動ハードトップが格納されない安全機能も装着した。
試乗したグレードは「コペンセロ」の5速MT(187万3,800円)。シフトレバーの操作性は悪くないが、取り付け位置が少し前寄りで、1/3/5速にシフトする時は左腕が前方へ伸びやすい。
着座位置は、ライバル2車に比べると床と座面の間隔に余裕があり、リラックスした姿勢で座れる。座面の沈み方は少ないが、肩まわりまで含めてサポート性は良い。
インパネのデザインは比較的オーソドックス。エアコンのスイッチは取り付け位置が少し低いが、操作性に不満はない。質感も満足できる。
前方視界は良く、少しではあるがボンネットも視野に収まる。サイドウインドーの下端は、ライバル2車に比べると目線に対して低めだが、視界が良好とはいえない。
後方はドライバーとリアウインドーの間隔が近いこともあって見にくくは感じない。
安全装備はVSC(横滑り防止装置)や4輪ABSといった基本装備のみ。緊急自動ブレーキを作動できる衝突回避の機能、サイド&カーテンエアバッグは装着できない。
今回取り上げた3車はいずれもコンパクトなクーペだが、車両の性格はすべて異なる。「ロードスター」は20年以上にわたる伝統を受け継ぐスポーツカー。外観と内装はスポーツカーの定石に沿っている。
「S660」はミッドシップレイアウトの採用もあり、外観、内装ともに新鮮だ。ソフトトップの脱着に手間がかかり、2名で乗車すると手荷物の収納にも不便を感じるが、そこは割り切った。スタイルの面から見れば「ロータス エリーゼ」のような性格。短距離で密度の濃い走りを楽しむタイプだ。その意味では「ロードスター」以上のスポーツカーともいえるだろう。
そして「コペン」は市街地の移動を快適にする軽自動車のスペシャルティカー。1人で買い物に出かける時など、手軽にハードトップを格納して爽快な気分を味わえる。屋根を閉じればクーペだから、快適性も損なわれない。
この3車が出そろったことで、ユーザーの趣味性や使い方に応じて、性格の異なるコンパクトなクーペを選べるようになった。
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