ロードスター/S660/コペンセロを徹底比較 ~オープンの解放感を楽しむ国産コンパクトクーペ~(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
原点回帰と思わせるエンジンの排気量とボディサイズ
「マツダ ロードスター」はコンパクトな国産スポーツカーの代表車種。初代モデルは直列4気筒の1.6リッターエンジンを搭載して1989年に登場した。
当時は速く走る技術が急速に進歩した時代で、R32型「GT-R」、「ホンダ NSX」などの「280馬力スポーツ」が相次いで発売された。後輪操舵の4WSなどを採用する車種も多く、ユーザーによっては「過剰な機能ではないか」と疑問を抱いた。
そして「もっと小さくて軽い、手足のように操れるスポーツカーが欲しい」というニーズが高まった時に、初代「ロードスター(NA型)」が登場。共感を呼んでヒット商品になった。
この後、「ロードスター」は2代目(NB型)になりリトラクタブルヘッドライトを廃止。3代目(NC型)は全幅を拡大して3ナンバー車になり、エンジンも2リッターまで拡大された。
ところが2015年に登場した新型は、エンジンの排気量を1.5リッターに縮小した。北米には2リッター、欧州は1.5/2リッターを用意するが、日本国内は1.5リッターのみだ。
ボディサイズも見直され、全長は先代モデルよりも105mm短い3,915mm、全幅は15mm広がって1,735mm、全高は10mm下がって1,235mmだ。プラットフォームを造り直したこともあり、全長を短く抑えた。
ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も20mm短い2,310mmだが、全長の105mmほどの短縮ではない。なのでオーバーハング(ボディがホイールから前後に張り出した部分)が短くなり、4輪がボディの四隅に踏ん張る形状となった。
全幅を除いたサイズとエンジン排気量を見ると、初代モデルの位置付けに戻した印象だ。マツダが「人馬一体」と表現する手足のように操ることが可能な運転感覚を表現するには、このサイズが最適なのだろう。
またこの大きさは、今後の発売がウワサされるRX-7/RX-8の後継車種の存在も感じさせる。クルマの性格がカブらないように、サイズを小さくした面もあるだろう。
エンジンをミッドシップに搭載する軽自動車サイズのクーペ
ホンダはもともと個性的で楽しい商品を開発するメーカーだ。今の売れ筋商品でいえば、「フィット」などが採用する燃料タンクを前席の下に搭載した空間効率の高いプラットフォーム、「ステップワゴン」の縦開きと横開きが可能なリアゲートなども、ホンダならではの独創的なアイデアだ。
しかし「楽しい商品」という点では、最近は元気がなかった。「S2000」や「シビックタイプR」が販売を終えてから、目立ったスポーツモデルは扱っていない。ハイブリッドの「CR-Z」はホンダらしいクーペだが、運転する楽しさやインパクトはいまひとつだ。
このようにホンダの品ぞろえに物足りなさを感じていた時、「S660」が華々しく発売された。
「S660」にはホンダらしさが詰まっている。重量物のエンジンを座席の後部に搭載するミッドシップのオープンスポーツカーで、優れた旋回性能と爽快な運転感覚をめざした。
しかもボディは全長が3,395mm、全幅は1,475mmで軽自動車になる。ホンダは1991年に軽自動車のミッドシップオープンモデルとして「ビート」を発売しており、その再来にも思えるが、今と当時では求められる安全性能などが大きく違う。開発には小型&普通車サイズで造る以上の困難があった。
また今のホンダの軽自動車が搭載するS07A型エンジンは(S660はターボを装着)、背の高いNシリーズの搭載を前提に開発されているため、高さがありさらに前後長は短い。なのでS07A型をクーペの低いボンネットの下に収めることは実質的に不可能だ。今のホンダが軽自動車でクーペを造る場合、ミッドシップは必然の方式であったというわけだ。
電動開閉式のハードトップを装着して外装の着せ替えも可能
「その手があったか!」と感心したのが、2002年に登場した初代「コペン」であった。軽自動車の2シータークーペだが、アクティブトップと呼ばれる電動開閉式のハードトップを装着して、爽快なオープンドライブを簡単に楽しめる。幌のソフトトップと違って、セキュリティの面でも安心だ。
駆動方式はほかの軽自動車と同じく前輪駆動。軽自動車では走行性能が優れていたが、スポーツカーというよりもスペシャルティカー的な性格だった。
初代「コペン」は2012年まで約10年間にわたって生産され、その後はしばらく空白期間があり、2014年に2代目が発売された。開発者は「約2年の間も開発は続けており、復活ではなくフルモデルチェンジ」と言う。
電動開閉式のハードトップを備えた前輪駆動のオープンクーペという成り立ちは同じだが、プラットフォームは「ミライース」をベースにしたタイプに変わった。ターボを装着した660ccエンジンも、直列4気筒から3気筒になった。
新しい試みとして注目されるのは「ドレスフォーメーション」だ。基本骨格に樹脂製の外板(ドアパネルを除く)を装着する構造で、外装の着せ替えが可能になった。樹脂外板の目的は軽量化や製造コストの低減だが、副産物として新しい楽しみ方も生まれている。
現行モデルとして一番最初に発売された「コペンローブ」と、2015年に登場した丸目モデルの「コペンセロ」は、ドアを除くと互換性があるから着せ替えが可能だ。2015年10月から着せ替え用の外板を発売する予定で、「コペンローブ」の外観を「コペンセロ」に変更する場合、セット価格は35万円前後になるという。
デザイン・スペックの総評
今回取り上げた3車種は、エンジンの搭載位置と駆動方式がすべて異なる。「ロードスター」はFR(フロントエンジン・リアドライブ)、「S660」はMR(ミッドシップ・リアドライブ)、「コペン」はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)だ。
今のクルマでは走りの技術が進化して、普通に運転している時には駆動方式の違いをあまり感じなくなったが、突き詰めれば挙動の差は生じる。「ロードスター」のFRは、ハンドルの手応えを含めて素直な運転感覚を得やすい。「S660」のミッドシップは、エンジンが車両の中央にあるから旋回性能が良く、駆動力の伝達効率も高い。「コペン」のFFは空間効率が優れ、軽自動車のクーペボディでもハードトップを車両の後部に格納できる。
ちなみに前後輪の重量配分を試乗車の車検証で確認すると、「ロードスター」は前輪が52%:後輪は48%。「S660」は46%:54%、「コペンセロ」は61%:39%であった。「S660」はミッドシップとあって、後輪の荷重が前輪を上まわる。
そしてエンジンの搭載位置は外観の見栄えにも影響を与えた。「ロードスター」はエンジンの搭載位置を後退させ、その後部にトランスミッションを配置するFRだから、フロントウインドーと前輪の間隔が長い。ボンネットも長く、スポーツカーの典型的な外観になった。
「S660」はボンネットが低くて短く、前述のように背の高いエンジンをボディの後部に搭載するから、外観も車両の後方にボリュームがある。
「コペン」はFFとあって外観も乗用車風。全高は「ロードスター」を45mm、「S660」を100mm上まわる1,280mmだから、居住性を含めた実用性の高さも特徴だ。
愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!
-
一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?
これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。
-
一括査定は本当に高く売れるの?
これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は最短3時間後、最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。