欧州指向のエコロジーと骨太な運転感覚を両立させた先進のクリーンディーゼルターボ搭載の3車を徹底比較(4/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
クリーンディーゼルターボは十分な駆動力を発揮して走行安定性も熟成されSUVスタイルのワゴンに仕上げた
クリーンディーゼルターボは、1500回転以下で駆動力が相対的に低下するが、ほとんど気にならない。2000回転に近づくと駆動力が高まり、1800~2500回転付近を使いながら滑らかに加速できる。
注目される点は、ディーゼルなのに高回転域の吹き上がりが活発なこと。ATレバーをDレンジに入れてフルにアクセルを踏み込むと、約4800回転でシフトアップ。最高出力を4500回転で発揮するから、高回転まで回してもあまり意味はないが、回転の上昇が頭打ちになる違和感を抑えた。エンジンノイズはガソリンに比べると2000回転付近が少し耳障りだが、慣れれば気にならないレベルだ。
そして走行安定性が高水準。操舵に対する反応が正確で、高重心のSUVながら、積極的に走っても旋回軌跡を拡大させにくい。しかも後輪がしっかりと踏ん張り、常に安心して運転できる。
コーナーではボディが相応に傾くが、挙動の変化が穏やかに進んで安定を保つから、ボディの傾き方がむしろ運転する楽しさを高める。現行プレマシー、マイナーチェンジ後のアクセラにも通じる運転感覚で、マツダ車の走りがバランスの良い方向に確立されてきた。
アクセル操作に対する反応も同様だ。トルクコンバーター式のATに駆動力の高いエンジンを組み合わせながら、細かなペダル操作で速度を微調節しやすい。ルーズな印象がないから運転して楽しく、ドライバーに正確で滑らかな運転を促す効果も期待できる。となればムダな動きが払拭されて燃料消費量が抑えられ、安全性も高まる。
SUVらしい野生味は希薄で、ワイドな全幅も気になるが、上質な運転感覚はSUVスタイルのワゴンという印象。低燃費と妥当な価格も大きな魅力だ。
SUV独特のリラックス感覚を備えながら買い物などの日常ツールとしても使いやすい
エクストレイル20GTのクリーンディーゼルターボは、低回転域から十分な駆動力を発揮して扱いやすい。CX-5に比べると高回転域の吹き上がりは鈍めだが、最高出力を3750回転で発揮する設定ながら、ATレバーをDレンジに入れてフル加速すれば、4000回転までは回せる。実用的には十分だ。
操舵感はCX-5とパジェロの中間に位置する。CX-5ほど正確性は高くないが、パジェロほど鈍くもない。前輪駆動ベースながらオフロードSUVのテイストを持たせたエクストレイルらしい設定で、適度なリラックス感覚を生み出す。
ただし車両重量は、4WD(20X)の1520kgに対して4WD(20GT)は1690kgと重い。ボディ剛性やプラットフォーム、サスペンションの性能に対して、荷重が少しオーバー気味な印象を受けた。素早い切り返しを強いられたりすると、揺り返しが拡大しやすい。
価格の上乗せが70万円に達することも含め、エクストレイルでは、ボディの軽い4WDの2リッターモデルが主役といえそうだ。
ライバル2車に対するエクストレイルの価値は、先の項目で触れた優れた視界とボディの四隅の分かりやすさ、前後席の快適な居住性、荷室の使い勝手、ロックモードを備えた4WDなどだろう。ボディサイズと価格も手頃で、運転がしやすく、なおかつ悪路の走破を含めてSUVの野生味を味わえる。
特にファミリーカーとして購入された場合、平日には奥さんが買い物や家族の送迎に使う。機能的なバランスの良さは大切だ。その意味では、走りの良さに重点を置いたCX-5より、エクストレイルの方が、SUVを求めるユーザーに向けた間口は広いだろう。国産SUVの主流で、今後も堅調に売れていくと思われる。
舗装路ではボディの大きさと重さを持て余すが悪路に乗り入れればダイナミックな走りを楽しめる
LサイズのオフロードSUVとあってボディはかなり重いが、45kg-mの最大トルクで加速の鈍さは感じない。エンジンノイズが少々大きく、ディーゼルであることを意識させるが性能は十分だ。
ボディが重く高重心だから、コーナリング時における操舵感はかなり鈍い。スポーティに走るとライバル2車よりもボディが大きく傾き、旋回軌跡を拡大させやすい。レーンチェンジを行った後の揺り返しも大きく、古典的なオフロードSUVの運転感覚になる。
居住性はフロントシートは快適だが、ボディサイズを考えるとリヤシートは膝が持ち上がって少々窮屈。荷室の床も高めだ。乗り降りもしにくい部類に入る。
以上の点を踏まえると、パジェロはオフロードを走る機会の多いユーザーにピッタリ。専用のコースに持ち込めば、副変速機などのメカニズムが効果を発揮して、CX-5やエクストレイルとは違うダイナミックな走りを楽しめる。
逆に舗装路の上だけで使うと、頑丈なシャシーやサスペンション、副変速機などを生かせず、宝の持ち腐れになってしまう。欠点が多く目に付くから、パジェロを購入したなら、せめて雪道くらいは走りたい。
以上が機能的な結論だが、パジェロの特徴を把握した上で、実用性ではなく、持ち味や雰囲気で選ぶ手もあるだろう。悠々とした運転感覚、存在感の強い外観などは、CX-5やエクストレイルといった前輪駆動ベースのSUVとは一線を画すからだ。居住性や取りまわし性をある程度まで犠牲にして得られた高い走破力が、「本物のSUV」としてユーザーのプライドを満足させることもある。そこにクリーンディーゼルターボが加われば、パジェロの魅力は完結する。
SUVは基本的に趣味性で選ばれるジャンル。理屈で割り切れない選び方もアリだと思う。
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