フォード フォーカス 試乗レポート
- 筆者: 渡辺 敏史
- カメラマン:鈴木雅雄
”健全”なドイツ車へと変貌。
ドイツで設計された欧州フォードのフォーカスは、その見てくれの突飛さとは裏腹に、ICU(集中治療室)のように衛生的で健全だった頃のドイツ車を地で演じている。地、といえば、内装のモケット地の毛足の短さ=ザラッとした触感からして、無粋なまでの生真面目さを感じさせられる。
なによりフォーカスの最も病院的なところ、それは走りにある。我慢できるギリギリの範囲で固い低速域での乗り味と引き替えで得た、飛ばせば飛ばすほど路面にワッシとしがみつき、そして無謀なハンドル操作には意地でも屈しないという圧巻の接地感。操舵に対してじんわりと、しかし正確無比に反応するコーナリング能力の高さ。大入力にも急旋回にもビクともしない絶対安静のキャビン内で、患者もとい乗員が得られる信頼感の厚さは欧州車の中でも屈指と言って過言ではない。
さらに、先日このクルマに追加された2リッターのゼテックエンジンも実に手堅く仕事をこなしている。動力性能に関しては全く不満のなかった1.6リッターエンジンの特性をそのまま底上げしたような印象というのだろうか。どこかがいびつに突出するわけではなく、全域で等しくトルクを上乗せし、使いやすさのみにバシッとピントを合わせている。
乗り込むたびに襟元を正し、走るたびに背筋が伸びる。一泊二日で人間ドックに入ったような、フォーカスと共に過ごした2日間で僕はそんな気分を本当に久しぶりに味わった。本当はこういうの嫌いなはずなのに、と言いつつもなぜか悪くない後味。やっぱりドイツのクルマはこの位がちょうどいい。ユルいのは日本に任せといてよ、と思う。
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