感性に正直であれ|日本橋たいめいけんの3代目茂出木シェフが語る愛車と料理(1/2)
- 筆者: 中込 健太郎
- カメラマン:小林 岳夫
洋食屋さん特有の“ワクワク”の源を探しに、日本橋の老舗「たいめいけん」を訪れる
洋食屋さんって、妙にわくわくさせられる。いわゆる洋食屋さんのスタイルが確立したのはかなり以前のことだから、お年寄りが食べても「子供のころから変わらないもの」。もちろん、子供から大人まで嫌いな人なんかめったにいない。それどころか我々の心を躍らせてくれる・・・それがニッポンの“洋食”というものなのだろう。決して新奇ではないが、誰がいつ行って食べても「ただいま」と言いたくなるような懐かしさがあり、食べた人の表情を明るくさせるエンターテインメントの要素すらある。洋食は偉大である。
日本橋のたいめいけんと言えば、そんな洋食屋さんの中でも、もはや知らぬ者はいないといっても過言ではない有名店。創業は昭和6年。店内には客足が絶えることはなく、週末や休日ともなれば老若男女問わず長蛇の列が店先に出来るほどの人気を誇る。たいめいけんは世代を超えて楽しめる洋食店の代表格だ。
そのたいめいけんを自ら宣伝塔となって盛り上げ続ける三代目の茂出木 浩司(もてぎ ひろし)さん。実はクルマやサーフィンなど趣味が多彩なことでも知られる超人気シェフに、少し愛車に関するお話など伺えればと思い、お店へお邪魔した。
実は最初、イタリア車を敬遠していました
お店でクルマのお話を伺う前に、お台場周辺で茂出木さんの愛車との撮影を行った。真っ白なフェラーリ カリフォルニアTである。観る人が観ればわかる、スパイスの効いたカスタマイズが随所に施されたカヴァリーノ・ランパンテ。その色合いもあってか、まるで鳥が優雅に羽を広げているかのようなイメージを観る者に与える、華やかな一台だった。
「ずっとどこか避けていたところがありました。昔はスープラなんかにも乗っていましたし、そのあともドイツ車に多く乗ってきたこともあるのですが、イタリア車は敬遠していた。でもここ10年ほどはイタリア車に乗っています。」
撮影の最中も、茂出木さんのハイテンションぶりには正直圧倒された。普通は緊張する被写体に対し、カメラマンがあれこれと声をかけコミュニケーションを図りつつどうにか撮影する・・・プロのモデルさんでもない限り大抵はそういうものだが、今回は最初から完全に茂出木さんペースで徹底していた。そう、茂出木さんはとにかく何事に対しても全力投球の人なのだ。
やるからには徹底する。もちろん職人としての流儀のようなものもあるのかもしれないが、そういうことを重んじる人やしきたり特有の重々しさ、堅苦しさがないのも江戸っ子らしいスマートさがある。すべては周りを楽しませようというもてなしの精神。さすがだと感じた。
撮影のあと、日本橋のたいめいけん本店に移動しお話を伺うわけだが、そこでも入店待ちのお客さんと気軽に談笑する茂出木さんの姿が。常に「前に」向かうスタンスはここでも惜しみなかった。
>>次のページは:カスタムの手が入ったGT-Rなど、多彩な愛車を保有する茂出木シェフ
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