故郷へのクルマ旅で想う生き方のこと|ボルボ XC90 D5ロングドライブレポート(1/2)

  • 筆者: 伊藤 梓
  • カメラマン:小林 岳夫

故郷の山形へ頼もしい相棒XC90 D5と走る

どう大人になろうかな、と思う。

20代まではやりたいことを精一杯、目の前にあるものをひたすら追いかけて、振り返りもせずに生きてきた。その日、その瞬間を生きることに必死で、いつかもっと大人になって、そのときに何をしているかなんて、頭に浮かぶことはほとんどなかった。

30代になって、フリーランスになり、めまぐるしい社会から離れて、フッと息をついた今、ようやくまわりの景色が広がったような気がする。

ボルボXC90 D5に乗って、東京から故郷の山形へロングドライブする道すがら、そんなことを考えていた。

XC90の大きくてあたたかな空間に包まれていると、自分がリラックスできる広いリビングにいるような気分になる。クルマにこういう安らぎを感じるのはボルボならではだなぁと思う。ハンドルのするりとした手触り、ひたっと体に馴染むシート、この空間だけ切り取ったような室内の静けさ。遠雷のように、ずっと遠くのほうでディーゼルエンジンがごろごろと響いている音が心地いい。

>>写真でチェックする春の山形行き

XC90には2L直4ディーゼルエンジンであるD5(235ps/480Nm)が新たに搭載された。ガソリンエンジンとプラグインハイブリッド、そして今回のディーゼルエンジンで、ラインナップが揃った形になる。ボルボのなかでもD5エンジン搭載モデルが日本上陸するのは初めてだ。

このD5エンジンは、よりスムーズに加速できるように、低回転からの加速時に圧縮した空気をターボに送ることで、ターボラグを低減する「Power Pulseテクノロジー」を採用している。

実際に運転してみると、一般道をいつもどおり走っている限りでは、ターボがあるのかどうかも意識しないくらい自然に加速することができた。

最短ルートではなく寄り道を楽しむという余裕

私は普段はマツダのロードスターに乗っていて、2シーターのオープンカーでどこへでも身軽に気持ちよく移動する。誰にも縛られない自由と開放感。自分にはぴったりな乗り物だと思っていた。

でも、いつも東京と山形を往復している景色もなんだか違って見える。「一刻も早く山形に着きたい」とロードスターを走らせるときとは違って、すこし遠回りして行きたいなと思う。いつもは東北道をまっすぐ北上して行くのだけれど、関越道から新潟を経由しながら寄り道をしていくことにした。

めいいっぱいの自分をロードスターに詰め込んで、なかばがむしゃらに仕事をしていたとき。メーターを振り切るような楽しさがあるいっぽうで、いつも何かに追われるような辛さを感じていたとき。そんなことを、XC90にゆったり体を預けて、すこし高い目線から振り返る。なめらかにXC90は走っていく。

滑らかに波を乗り越えて進むようにクルージングするXC90

XC90に乗っていると「クルーザーってこんな感じなのかなぁ」と思う。たっぷりとした車体がまるで滑らかに波を乗り越えて突き進んでいくよう。新しく搭載されたディーゼルエンジンも、XC90の大きな体躯を力強く押して、自在に運んでくれる。すいすいと高速道路を走っているうちに、あっという間に長い関越トンネルを抜けて、新潟県に入っていた。

高速道路を降りて、すこし新潟の市街地を走ってみる。大きなクルマの割にハンドルは軽くて回しやすいので、多少狭い道でも思いのほか不安なく入っていくことができた。海を目指しながら走っていると、ゆうゆうと流れる信濃川の途中で、とても立派な城壁のようなものを見つけた。

興味を惹かれて立ち寄ってみると、それは大河津分水路の洗堰だった。たとえば洪水になりそうになったときには、ここで越後平野へ流れ込む水をせきとめて、日本海へと流す役割を果たしているのだそう。どおりで立派なわけだ。最近ちょっと気になっている「ダムカード」がもらえるらしいので、事務所に行ってみたが、残念ながらこの日はおやすみ。次回来たときには必ず、と思いつつ川沿いを走りながら、さらに海を目指す。

>>故郷への旅で改めて自分の道を見つめ直す|ボルボ XC90 D5 試乗レポート[次ページへ続く]

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伊藤 梓
筆者伊藤 梓

グラフィックデザイナー時代にミニカーの商品を担当するようになってから、どっぷりと車に魅了されるように。「こんなに人を惹きつける車というものをもっとたくさんの方に知ってほしい」と、2014年に自動車雑誌の編集者へと転身。2018年に、活動の幅を広げるために独立した。これまでの経験を活かし、自動車関係のライターのほか、イラストレーターとしても活動中。記事一覧を見る

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