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自動車評論家コラム 2015/10/15 15:16

自動運転、2020年へ向け自動車メーカーとベンチャー企業の異なる戦略

関連: トヨタ Text: 桃田 健史
自動運転、2020年へ向け自動車メーカーとベンチャー企業の異なる戦略

急に始まった自動運転アピール

小泉 進次郎 内閣府大臣政務官(国家戦略特区担当)

10月に入り、テレビやネットでは自動運転に関する話題が急激に増えた。

まずは10月1日、ロボットタクシー社が横浜スタジアムで記者会見。神奈川県の黒岩祐治知事と内閣府の政務官(当時)の小泉進次郎衆議院議員が登場。小泉ジュニアの周りには当然、大勢のメディア。藤沢市で始まる自動運転実証試験のPR効果は抜群だった。

次いで10月6日、今度はトヨタが報道陣向けに自動運転実験車の同乗試乗会を実施。レクサスGSをベースとしたテスト車両を東京都心の首都高速で走行させ、運転席のトヨタ社員は手放し状態。助手席にはテレビ、新聞、そして経済メディアの記者が同乗し「うぁ! 本当に自動で走っています」と驚きの表情で伝えた。

ではどうしてこのタイミングで、メーカーもベンチャーも自動運転を世間にアピールしたのか。その理由はそれぞれ違う。

ロボットタクシーの狙いとは?

ロボットタクシーの取り組みが国家戦略特区プロジェクトにロボットタクシーの取り組みが国家戦略特区プロジェクトに

DeNAとロボット関連ベンチャーZMPの合弁事業であるロボットタクシー。トヨタ「エスティマハイブリッド」をトヨタから購入し、それを自動運転車に仕立てて、2020年までにサービスを開始するとしている。

ZMPの社長でロボットタクシーでは会長を務める谷口恒氏は「2020年に本格的なサービスを開始するには、その2~3年前までに基本的な準備は終わらせなければならない」という。この準備の前段階として、国や地方自治体と連携した実証試験を行うのだ。

ZMPとしてはすでに、愛知県の補助金を得て名古屋市守山区の一般路で「エスティマハイブリッド」ベースの実験車が走行し、技術開発で連携している名古屋大学には走行データの蓄積が進んでいる。

ここでキーポイントとなるのが「無人化」だ。ロボットタクシーは運転手がいないのが理想像。実証試験では運転管理者を座らせるが、これはあくまでも開発初期段階でのリスクを軽減するものだ。

ロボットタクシーとしては、都市部周辺の住宅地の「買い物難民」や地方の山間部等の「高齢者の日常の足」として「無人自動運転車」の活用を考えている。

トヨタの狙いとは?

トヨタの自動運転「Mobility Teammate Concept」自動運転実験車(Highway Teammate:ベースモデルは「レクサス GS」)トヨタの自動運転「Mobility Teammate Concept」自動運転実験車(Highway Teammate:ベースモデルは「レクサス GS」)

一方、トヨタが2020年に量産化を目指す自動運転は「無人化」を想定していない。つまり、自動運転の対象はタクシー等の旅客サービスではなく、乗用車や商用車だ。

運転席には常時、運転者が座っていて、高速道路等で一時的に運転操作を行わないという自動運転モードを想定している。つまり、自動運転モードが何等かの事情で続行不可能になった場合、手動モードに切り替わる。この“切り替え”が、自動運転で最も大きな課題だ。英語では“オーバーライド”と呼ぶ。

具体的な懸念としては、自動運転時に寝てしまった運転者に手動運転への切り替えを通知する場合、「運転者の意識は何秒で運転する状態に復帰できるのか?」。

また自動運転時に事故が起こった場合、「過失責任は自動車メーカーになるのか。それとも、手動から自動に切り替えた運転者にあるのか?」といった法解釈や倫理規定の分野で議論を続けていく必要がある。

自動車メーカーとベンチャー、「自動運転」戦略の違い

トヨタの自動運転「Mobility Teammate Concept」自動運転実験車(Highway Teammate:ベースモデルは「レクサス GS」)トヨタの自動運転「Mobility Teammate Concept」自動運転実験車(Highway Teammate:ベースモデルは「レクサス GS」)

こうした議論は現在、国連の傘下にある自動車基準調和世界フォーラム(WP29)を舞台に行われている。

アメリカとドイツの自動車関連団体や自動車研究所を主体に、自動運転に関する規定の標準化を進めているが、議論はまだ初期段階だ。

トヨタを含む自動車メーカーや自動車部品メーカーとしては、WP29での動きを睨みつつ、自動運転の量産化に向けて、現在の市販車が装着している各種装置のレベルを段階的に引き上げていきたいと考えている。追従式クルーズコントロール(ACC)、車線逸脱警告(LDW)、アラウンドビューモニターなどがそれにあたる。

つまり、一足飛びに完全自動運転を量産することは考えていないのだ。

逆に言えば、ここにロボットタクシーのビジネスチャンスがある。従来型の自動車産業の枠組みを崩したくない自動車メーカーと、産業の大変革を仕掛けることが事業の拡大につながるベンチャー企業とでは、自動運転に対する戦略が180度違うのだ。

今後は是非、こうした視点で自動運転に関する報道を見て欲しい。

[Text:桃田健史]

筆者: 桃田 健史
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