ワールド・カー・レポート/北米編(2/2)
- 筆者: 木野 龍逸
プリウスがアメリカでバカ売れする理由
それにしても十数年前は、カープールレーンはこんなに賑わっていなかったように思う。当時に比べれば明らかに走っているクルマが増えているし、だからこそ接続路などもできているのだろう。
そして、カープールレーンを走っているクルマの中に、「トヨタ プリウス」の数が非常に多いのもまた、カリフォルニア州の特徴のように感じた。
5年ほど前、カリフォルニア州はプリウスなどの低燃費なハイブリッド車や規制値を大幅に下回る一部の超低公害車への優遇措置として、1人乗車でもカープールレーンを走ることのできるスペシャル・ステッカーを配布した。
特権を享受できるとあって、ステッカーは低公害車オーナーの間で話題になり、当局に申込が殺到し、あっという間に規定数を超えてしまった。
結局、85,000枚を配布したところで打ち止めになり、2009年12月の時点で、カリフォルニア州交通省はステッカー配布を再開する予定はないとしている。早い者勝ちになってしまったが、まあ、これ以上配ると弊害も出るだろうから仕方がない面もある。
そのステッカーを貼ったプリウスが、カープールレーンを大量に(といっていいほど)走っている。とにかく次から次にやってくるのだ。
プリウスは昨年来、アメリカでバカ売れしている。原油価格高騰により、アメリカのガソリンは一時、1ガロンが4ドルになった。これは10年前の4倍にもなる。最近は1ガロンが2.5ドル前後で推移しているが、低燃費車需要は依然として高いと、現地在住の人たちは口をそろえる。4ドルを記録した頃は、「道路からSUVが消えた」と感じている人もいた。
アメリカ人にとってクルマは生活必需品であり、なければ生きていけないほど重要な道具だ。それだけに燃料代の急上昇は生活に大きく響く。
この時のガソリン価格高騰とリーマンショックのダブルパンチが、ビッグ3を窮地に追い込んだといっていい。さらに、プライムローンが飛んだ今となっては、高い利息を払って巨大なSUVを買う人が増えることは考えにくい。
一方で、プリウスは空前の人気を博している。昨年は2代目プリウスにプレミア価格がついていたことが日本でも話題になったが、今でもそれほど安くなってはいない。今年春に8万kmほど走ったプリウスを購入した人は、1万5,000ドルだったという。
世界最大のオークションサイト「ebay」を見てみると、10万kmを超えたプリウスを1万4,000ドル前後で出しているディーラーも多い。日本も同じような価格だが、走行距離が圧倒的に少ないことを考えると、アメリカでの人気の一端が伺える。
同時に、小型車を持たないGM、クライスラーという破綻した2社の行く末に光が見えるのは、まだ先のことになりそうだなぁ、などとロサンゼルスのフリーウェイを走りながら漠然と考えていた・・・。
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