【BMW Hydrogen 7】 モビリティの未来を切り開く水素自動車(1/2)
- 筆者: オートックワン 編集部
- カメラマン:原田淳
自動車の燃料として注目される水素
現在、私たちが生きる“地球”が抱える問題―――エネルギー源として依存している石油、天然ガス、石炭などの化石燃料。それらを燃やすことにより大気に排出される二酸化炭素が地球を温暖化させ、気候変動や海面上昇などの危機的状況が加速している。加えて、化石燃料は限りある資源であり、いつかは枯渇する―――私たちの生活の身近な存在に自動車がある。
ガソリンの価格は上昇を続け、各自動車メーカーも、ハイブリッドやディーゼルエンジン、バイオエタノール燃料など、ガソリンに替わるエネルギーを使った自動車の開発を進めている。その中でも専門家が自動車の燃料として注目するものに水素がある。水素は水という化合物の形で地球上のどこにでも存在する。
BMWは、はやくから水素をエネルギー源とした自動車の開発を行ってきた。そして、地球や“モビリティの危機”に対する答えがここに紹介する世界初の量産型水素駆動セダン「Hydrogen 7(ハイドロジェン・セブン)」である。
ほぼゼロに近い有機排出ガスで走行が可能な「BMW Hydrogen 7」
地表の3分の2を占める海が無限の供給源である水と、自然のサイクルの中で再生化である水素。将来的には、水素を取り出す電気分解に太陽熱発電や風力・水力から発生する電気を利用すると、二酸化炭素を排出せずに水素が手に入る。
BMW Hydrogen 7 は、実際に水素だけで走行することが可能。水素モードで走るとき、排出されるのは水蒸気のみであり、燃焼による有機排出ガスはほぼゼロである。ただ、水素供給のインフラがまだ広く整備されていないという問題があるため、BMW Hydrogen 7 は、必要に応じてガソリンでも走行できるように設計されている。
水素とガソリンの2つの燃料タンクを搭載し、ひとつが空になったら自動的にもうひとつの燃料に移行する。航続距離は水素で200km、ガソリンで500kmの最長で合計約700kmの距離を走ることが可能。
BMW 7シリーズをベースとするBMW Hydrogen 7 のスタイリングは、トランクリッド後面の「Hydrogen 7」、サイド・ター ン・インジケーターの下にある「Hydrogen」のバッジ、水素用のインテーク・マニホールドの追加によるエンジンフードの盛り上がり、水素吸入口などが設置される以外はBMW 7シリーズと大きく変わらない。生産も7シリーズと同じラインで生産されるという。
エンジンは、760iに搭載されたV型12気筒ガソリン・エンジンを水素とガソリンのバイ・フューエル型(2種類の燃料を切り替えて使用できる単一エンジン)に改造したもの。同じ排気量ではガソリンの方が高い出力を発生するため、ガソリン→水素に移行したときに出力の違和感をあたえないよう最高出力は260psに揃えられている。
それでも最高速度は230km/hに達し、0-100km/h加速は9.5秒を記録する。重量も水素タンク分にあたる約200kg増に抑えられている。
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