中国人は“デッカイ”のが大好き! 日本車にも大きな影響?
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:桃田健史
常識が中国市場を中心に大きく崩れた
「相変わらず、口(くち)がデッカイなぁ」
現在開催中のオート上海2017(通称:上海モーターショー)の広い会場内を巡りながら、そう思った。 口(くち)とは、クルマのフロントグリルのことだ。クルマを真正面から見て、中央部分がギラギラと光るシルバーカラーで加飾されている部分だ。
クルマのデザインの基本として、この部分は“ほどほどの大きさ”にするのが、クルマ全体のデザインを落ち着かせるための、常とう手段だった。グリルであり、その左右がフロントバンパーにつながるフェンダー、という発想だ。
そうした常識が、中国市場を中心に大きく崩れてしまった。その理由は『中国人のクルマに対する独特の考え方』によるものだ。
クルマは“デッカイ”ことがいいことだ
中国で“乗用車”という考え方が広まり始めたのは、2000年代に入ってからだ。
90年代までの中国は、共産主義国家としての色合いが濃く、国民の生活に対して政府から様々な制約が課せられていた。それが2000年代に入ると経済活動の民主化の流れが起こり、政府は様々な規制緩和を進めた。
そうしたなかで、国民が乗用車を購入してクルマ生活を楽しむことが一般化していった。
そうなると、中国人は消費者として自動車メーカーに対して「モノを言う存在」になった。それに対して、自動車メーカーも中国の消費者の声を集めて、中国人好みのクルマとは何かを研究し始めた。
筆者は2000年代から2010年代初め、上海や北京に新設された日系自動車メーカーの製造拠点や研究開発拠点を数多くを取材した。そのなかで印象に残っているのが、北京にある日産のデザインスタジオでのことだ。
対応して頂いた幹部デザイナーは、日産としての「中国人好みのクルマの解析」を次のように説明した。
まずはクルマ全体が大きく、がっしりした風貌で“偉そうに見える”こと。その“偉さ”の象徴となるのが「フロントグリルの大きさ」。
クルマにとって、フロントマスクはまさに『顔』である。その中央にあるフロントグリルは、まさに口である。口が大きいことは、たくさんの空気を吸い込む力があることを示し、それは結果的に大きなエンジンを搭載していることをイメージさせる、というのだ。
こうした観点で中国市場に投入されているクルマを見てみると、やはりどれも顔が大きく口が大きい。レクサスのスピンドルグリルも、まさに大きな口だ。
クルマは長いこともいいことだ
中国市場向けのクルマで、もうひとつ、独特のデッカさの表現方法がある。
それが、リムジンを示す「L」である。もともと、LはメルセデスSクラスやBMW7シリーズなど、最上級セダンで設定されてきたもの。運転手付きで後席でふんぞりかえって乗る、ショーファーカーという設定だ。これを中国では、中型セダンでも設定するメーカーが多い。
アウディの「A6 L」や、メルセデスEクラスのLなど、欧米や日本には導入されていないモデルが存在する。
今回もホンダの高級ブランドであるアキュラがTLXのLを発表している。
中国人はこうした、中型セダンのLをショーファーカーではなく、自分自身で運転するドライバーズカーとして購入する。ここにも、「デッカイことはいいことだ」という見栄がある。
Lはともかくとして、口のデッカさや、顔のデッカさは、日本車にも大きな影響を与えている。上海ショーのレクサスブースの中央にど~んと構えた、新型NXをじっくり見たが、本当に口がデッカイと感じた。
[Text:桃田健史]
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