BMW 3シリーズ 試乗レポート(河村康彦)

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再度このクラスのベンチマークとなるに違いない

1975年の初代モデルの誕生からちょうど30周年というタイミングでのデビューとなったのが、クルマ好きの間では“E90”とその開発コード番号でも呼ばれる事も多い最新の5代目3シリーズ。BMW全ラインナップの中にあってもその販売台数で多くの割合を占めるこの基幹中の基幹モデルは、同社の発表ポリシー(?)に則ってまずは4ドア・セダンのみがデビュー。もちろんいずれは、2ドア・クーペやオープン・モデルも登場するはず――というのは、過去の事例が示してきた事柄だ。

ちなみに、シリーズのホッテスト・バージョンである『M3』は「今度はV8エンジンを積むのでは!?」というのが専らのウワサ。一方で、これまでのM3に積まれてきた珠玉の直6エンジンは、シャシーまわりをはじめ多くのハードウェアを新型3シリーズと共有するすでにデビュー済みの1シリーズにいずれ積まれ、新世代の“M1”としてデビューするのではないか、とも言われる今日この頃だ。

3シリーズの歴史は「ボディサイズ拡大の歴史」でもあった。そしてそれは今回も例外ではない。と言うよりも、今度のサイズアップの割合というのは多くの人が予想をしたものよりも大きかったはず。具体的には従来型に対して全長が55mm伸び、全幅は75mmも拡大されたのが新型なのだ。

BMWが毎度ボディサイズを拡大するにはもちろん理由がある。「ドイツでは、成人の平均身長が毎年1mmずつ大きくなっている」というのがその根拠のひとつだ。新型3シリーズの場合、特に後席まわりの空間を重点的に拡大。それも「親よりも(後席に座る)子供の方が背が高い場合が少なくないのを考慮して」との事と言う。かくもいちいち理屈っぽいのは、やはりドイツというお国柄を反映しての事か!?

もっともそうは言っても、世の中の道路幅や駐車スペースがそう簡単には広がらないのはどこの国でも同じはず。より現実的なサイズ拡大の理由はやはり「ライバル車たちとの競争関係にある」と受け取るべきかも知れない。それにしても、1.8mを軽々と超えてしまった全幅に関しては、特に日本ではそれゆえの使い勝手低下が生じそうなのがちょっと心配だが…。

ところで、そのスタイリングは「昨今のBMW車の中にあっては意外にも保守的」というのが多くの人の見方になるのではないだろうか。そんな意見にはぼくも同感だ。さすがのBMWも、世界で販売の軸となる3シリーズのデザインに関しては、余り過激な冒険は避けるべきと判断したという事であろうか…。

日本に導入されるモデルは、今のところ320i、325i、330iの3タイプと発表済。このところ、その車名と搭載エンジンの排気量が必ずしもリンクしない場合が少なくないBMW車だが、3シリーズ・セダンの場合には“名は体”を表している。すなわち、前出のそれぞれが2リッター、2.5リッター、3リッターのエンジンを搭載。うち320iには、すでに1シリーズでもおなじみの4気筒ユニットが。325iと330iの両車にはそのクランクケースにマグネシウム-アルミニウム合金製という世界発の軽量テクノロジーを採用した、新開発の直6ユニットが搭載される。

すでに日本に上陸済でテストドライブが可能となったのは、325iを除く2モデル。そして、ぼくがそのパワーフィールをより魅力的に感じたのは、258psという最高で高出力を発する心臓を積んだ330iの方だった。

エンジンに火を入れたその瞬間から、緻密にしてエキサイティングな回転フィールを味わわせてくれる新しい直6エンジンは、世界で好評を博してきたこれまでのユニットに比べてもさらにパワフルで高回転域までを得意とする印象。前述の素材の違いからか放射音のボリュームはやや大きくなった感も受けるが、それもまた“サウンド”と好意的に解釈出来る類のもの。一方の320i用直4エンジンは、全体的な出力がトーンダウンするのは当然としても、回転上昇に伴うパワーの盛り上がり感やエンジン音が6気筒ユニットには及ばない。あくまでも実用車として選ぶのであればこちらでも文句はないが、“プレミアム・エンジン”としては今ひとつ演出力に欠ける、というのがぼくの抱いた感想だ。

こちらもまた昨今のBMWのポリシーに則り、装着タイヤはすべてサイドウォール補強タイプのランフラット仕様。それもあり、走りのシーンによっては特に低速域を中心に路面凹凸を拾っての振動を脚がきれいに吸収しきれない感触。中でも、あらゆるシーンでの走りのしなやか感が抜群に高い最大のライバルであるメルセデス・ベンツCクラスに比べると、70km/h程度までの速度域で若干の差をつけられた感は否めないところだ。

もっとも、それ以上のスピード域での走りの質感全般は、本当に惚れぼれするほどに高いもの。常にフラットに姿勢を保つボディ・コントロール能力の高さやコーナリング時のどこまでもニュートラルなハンドリング感覚は、こうした面ではすでに定評のあった従来型の実力をさらに確実に上回った印象が強い。

330iの場合、速度感応型の可変ギア比ステアリング・システム“アクティブ・ステアリング”を選択可能。が、これは人によって好みが別れそうなアイテム。個人的には微小操作に対する応答性がよりリニアで、操舵剛性感もより高く感じられる点から「無し」のモデルの方により魅力を感じる事になった。

それにしても新しい3シリーズ・セダンは、こうしてデビュー当初からすでに高い完成度の持ち主。1.8mを超えた全幅と「今度はコンサバ過ぎ?」にも思えるスタイリングには個人的にちょっと抵抗感を覚えるが、それにしても再度このクラスのベンチマークとなるに違いないその走りの実力の高さは、やはり認めないわけには行かないものだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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