"四角いボルボ"を日本法人が完全再生|あの頃のまんまなクラシックボルボに試乗(3/3)

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クラシックボルボの700/900系もオススメ

試乗会に用意された他の2台も説明しよう。

P1800ESはP1800をベースにした“シューティングブレーク”で、1枚ガラスのリアハッチは、その後480やC30に受け継がれた。日本では、現存20台くらいではないかと言われている。この個体は7年ほど眠っていたクルマを引き取り、塗装を全剥離して再塗装、機関もオーバーホールしたもの。

もう一台、940エステートは1996年式のポラールSX。ポラールは940のベーシックグレードだが、この個体は外観を940ターボにした「ターボルック」仕様になっている。

ちなみに940は1996年モデルから、エンジンがロープレッシャーターボのB230FKが搭載されている。外装はリペイント済み。女性ワンオーナーで内装の痛みもなく、布シートというのもポイントだ。また、エンジンとトランスミッションは低走行のそれに載せ替えてある。

阿部氏曰く、940と960の900系ボルボは240ほど人気がないが、設計が新しく作りも近代的なのでオススメです、とのことだ。

クラシックカーの維持には“正しい整備”が必要不可欠

なお、クラシックボルボの240は前述のように高い人気を誇っているが、その価格に見合わないような芳しくない状態の物も市場に出回っている。

ボルボは堅牢で丈夫(壊れない、という意味も含めて)だから選んだのに、買ってからトラブルも多いしお金もかかる……と思われることに、クラシックガレージとしても胸を痛めているとのこと。

これはどのメーカーの中古車でもそうだが、正しく整備してあげれば思いの外手間もお金もかからない車は多い。もちろん、クラシックボルボもその中に含まれる。

“ボルボマニア”が生み出したクラシックガレージ

輸入車の日本法人としては異例ともいえる、「自らの手で歴史あるクルマを再生する」ことは、素晴らしい取り組みだと思う。しかもそのきっかけも興味深い。

クラシックガレージの責任者である阿部 明男氏は、ボルボ・カー・ジャパンの社長に直談判してこのガレージを開設したという。

阿部氏は、「アマゾンが安く買えるかも」と思い1985年に帝人ボルボ(かつてボルボを正規輸入していた代理店)に入社した、という筋金入りの“ボルボマニア”。ボルボ・カー・ジャパンでは、阿部氏の先輩は1人しかいないという。まさに、阿部氏は日本のボルボ輸入史の生き字引なのだ。

ボルボ “生き字引”の阿部氏がクラシックガレージ設立の想いを語る

■阿部氏:「クラシックボルボをメンテできる場所が減ってきて困っているという話をお聞きするようになりました。ボルボディーラーはボルボのクルマをメンテすることが使命だ、ということで、クラシックガレージが始まりました。クラシックボルボを扱える後継者を育てる、という側面もあります。

思い出深いエピソードとしては、再生車として販売した1990年式の740GLです。この740、維持費がかかるということでオーナーが手放された時はかなりくたびれていましたが、私たちのところで再生してオートモビルカウンシルに展示しました。

それを見たオーナーが、なんと欲しくなって買い戻したのです。“これは他の人には渡せない!”と思われたのですね。私たちもうれしかったです」

■筆者:クラシックガレージ以外の日本各地のディーラーにも、クラシックボルボが修理や点検で入庫することがまだまだあると思います。その際は、どうされているのですか?

■阿部氏:「私は、ボルボに入って最初はメカニックをしておりまして、その後、全国のメカニックに技術サポートをする仕事やテクニカルトレーナーもしておりましたので、 “教え子”がたくさんいます。

彼らは今、工場長クラスになったため、日本全国にネットワークを持っています。困ったことやトラブルがあれば、彼らは私に連絡をしてきます。技術相談窓口もしていたので、全国のメカニックは私のことを知っているのです。

また、気になる部品についてですが、ボルボはオリジナルパーツの部署が1998年より前のクルマでもパーツの供給をしてくれます。企業としても素晴らしいと思います。灯火類も再生産してくれるので、供給が戻りました。しかも価格も当時に近いままなので、高騰していません。日本のボルボディーラーで発注をかけることもできます」

オートモビルカウンシル2019で“新車”のようなクラシックボルボを体感しよう

過去のモデルも大切にするボルボの姿勢と、ボルボを愛してやまない阿部氏の思いが一つになって実現したクラシックガレージでは、現在1967年式の122S、1987年式の740ターボが入庫しているほか、商品化車両として2台の122Sが作業中だ。この他のボルボたちも多数控えているという。

そして今回の試乗会に用いられたクラシックボルボは、2019年4月5日から同年4月7日まで開催されるオートモビルカウンシルに出品が予定されているものもあるので、是非「新車のような仕上がり」を確認してみてはいかがだろうか。

今後も、「ボルボを末長く乗ってもらう」ためのクラシックガレージの活動に期待したい。

[筆者:遠藤 イヅル/撮影:小林 岳夫・島村 栄二]

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遠藤 イヅル
筆者遠藤 イヅル

1971年生まれ。カーデザイン専門学校を卒業後、メーカー系レース部門にデザイナーとして在籍。その後会社員デザイナーとして働き、イラストレーター/ライターへ。とくに、本国では売れたのに日本ではほとんど見ることの出来ない実用車に興奮する。20年で所有した17台のうち、フランス車は11台。おふらんすかぶれ。おまけにディープな鉄ちゃん。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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