トヨタ 新型ヴォクシー・新型ノア(ハイブリッド)新型車解説/渡辺陽一郎(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
3列目の狭さを解消
まずはエクステリアからだが、新型ヴォクシー&新型ノアの「欠点潰し」は外観にも表現されている。
ボディサイズは、標準ボディで見ると全長が「4,695mm」、全幅は「1,695mm」で5ナンバー枠いっぱいの大きさとされた。先代ヴォクシー&ノアに比べて、全長は100mm伸びている。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も、「2,850mm」で25mm長くなった。全長とホイールベースの拡大によって、「3列目の足元空間が狭い」という先代型の欠点を潰している。3列目を畳んだ時の荷室も広がった。
外観は「あまり変わり映えしていない」と思われる方もおられるかも知れないが、これは背の高いミニバンのフルモデルチェンジに共通する傾向で「変えようがない」のだ。
天井を低くしたりフロントウインドウを寝かせれば、車内が狭まってしまう。ギリギリまで広くしようとすれば、変えられるのはフロントマスク程度だ。この厳しい制約を考えれば、新型ヴォクシー・新型ノアにおける変化の度合いは大きい方であろう。
サイドウインドウを低く抑えて視界を向上
そして外観では、2つの「欠点潰し」を行っている。
1つ目の「欠点潰し」は、サイドウインドウの下端を1列目・2列目の部分で約60mm低く抑えたこと。これには後述する低床設計の採用も関係するが、先代ヴォクシー&ノアはウインドウの下端がライバル2車に比べて高く、側方と後方の視界が良くなかった。そのために先代ヴォクシー&ノアは視界の要件を満たすための補助ミラーをフェンダーに装着している。
対するライバル2車には、このミラーが付いていない。側方視界が優れているから、装着する必要がないのだ。
そして新型ヴォクシー・新型ノアの外観を見ると、1列目・2列目のウインドウの下端を下げたことで視界が大幅に向上し、見栄えの上でもアクセントになっている。もちろん、補助ミラーも省かれた。
「低床化」によりもたらされた、数多くのメリット
そして、最も大きく変わったフルモデルチェンジのキモ、最大の「欠点潰し」が床の高さだ。
スライドドア開口部の床の高さをみると、先代ヴォクシー&ノアは床がほぼ水平で、地上高は465mmだった。現行セレナと同等だが、ステップワゴンよりは60~70mmほど高い。なので、階段状のサイドステップを装着していた。
それが、新型ヴォクシー&ノアでは床の位置を大幅に低くした。床が前方に傾斜しているので測る位置で多少の差はあるが、全般的にいえば85mmほど床を下げた。この低床化は設計の大幅な変更を伴い、プラットフォームはエンジンルームの部分を除いて刷新されている。薄型の燃料タンクも新開発した。
今の国内向けの車種では、メーカーを問わず既存のプラットフォームを使うのが当たり前。それなのに新型ヴォクシー・新型ノアはかなりのコストを費やしており「頑張りましたね!」と言いたい。
そして低床化は、数多くのメリットをもたらす。サイドステップを廃したから、路面から足を直接床に乗せられて乗降性が良くなる。床を85mm下げたことで、全高を25mm低くしながら室内高は60mm拡大された。乗員の位置や天井が下がるため、低重心化によって走行安定性も向上する。
必要とされるボディ剛性や衝撃吸収力、燃料タンク容量が確保されれば「床が低いことは正義」で、良いことばかり得られるのだ。
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