トヨタ 新型ヤリス発表記念! ヴィッツの歴史と知られざる世界のヤリスをまるわかり解説!(後編)(1/2)
- 筆者: 遠藤 イヅル
2019年10月、トヨタは新型ヴィッツのフルモデルチェンジに際し、車名に「ヤリス」の名を与えて新たに発表しました。コンパクトカーの世界基準になるべく渾身の力を込めて開発が行われた新型ヤリスですが、日本人には聞き慣れない車名ですよね。実はヴィッツの海外版は、初代から「ヤリス」の名前で販売されており、むしろヴィッツのほうが日本でのみ使用されていたローカルネームだったのです。
後半となる今回は、スターレットに代わりデビューしたヴィッツ、そして世界中の「いろいろなヤリス」にフォーカスしてみたいと思います。
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58年前まで歴史を遡る! 懐かしのスターレット登場の前編はこちら↓
初代ヴィッツ:コンパクトカーのベンチマークを目指す
海外を意識し、スターレットに代わり登場!
さて、前編にてご紹介したトヨタ スターレットをはじめとした日本のコンパクトカーは、装備も少なく作りも質素で「エントリーモデル」的なイメージが強くありました。海外への輸出は行われていたものの、欧州市場における海外メーカーの小型車が備えていた走行性能や高速安定性、安全性の高さは、まだまだ持ち合わせていませんでした。
そこでトヨタは、長年にわたりトヨタの屋台骨を支え続けたスターレットに代わる新しいコンパクトカーを、「ヴィッツ(XP10型 海外名:ヤリス)」と改名して送り出しました。1999年のことです。(ちなみにヤリスという名はギリシャ神話の女神「カリス」に由来し、優美さなどを表します)。
世界のコンパクトカー市場における新たなベンチマークとなるべく開発された意欲作だけに、名前の変更は大きな効果をもたらしたように思います。
カローラを上回り、カーオブザイヤー受賞!
サイズにとらわれない「小型車の枠を超えた作り込み」が行われ、世界の名だたる小型車とも戦える性能を得ただけでなく、新しい時代を感じさせる内外装デザインの採用も伴って、日本のみならず欧州でも大きなヒットを記録。それまで日本における販売の主力だったカローラの販売台数を上回ったほどで、ヴィッツがエントリーモデルではなく、車格的ヒエラルキーや年齢に関係なく乗れるコンパクトカーということが証明されました。
日本と欧州でカー・オブ・ザ・イヤーをダブル受賞したことも思い出されます。「海外のライバルとも渡り合える実力を持った、質が高いコンパクトカー」という発想は国内ライバルメーカーを刺激し、ホンダではフィットを生み出す原動力となりました。
初代ヴィッツは、スターレットよりもさらに小さい1LクラスのAセグメント車として登場しましたが、のちに1.3Lや4WDのほかスポーツモデルで1.5Lを搭載した「RS」、高級感を増した「クラヴィア」などを次々と追加。特別仕様車やモデリスタが手がけたターボ版などのバリエーションも設定しながら、2005年まで販売が行われました。
2代目ヴィッツ:大型化でBセグメントに移行
カタマリ感のあるデザイン
2代目ヴィッツ(XP90型)は2005年に登場しました。初代のコンセプトを引き継ぎながら、質感、安全性などすべての面において一層のブラッシュアップを果たしました。
全長3.6mほどだったボディサイズは3.7m〜3.8m台まで大型化され、ホイールベースを90mm伸ばしたことで室内空間も拡がり、Bセグメントカーに発展。そのため、販売のメインが1.3Lに移行しました。なお2代目から1Lエンジンはダイハツ製の直3に置き換わったほか、4WDと5速MT以外のトランスミッションはすべてCVT になりました。
外観は、初代ヴィッツのアイコンを残しつつ洗練されたものとなり、ワンモーションフォルムでカタマリ感あるスタイルに。内装では、ダッシュボードのセンターメーターを初代から継続しています。
なお、2代目でもスポーツグレードのRSは残されました。この代も、モデルライフ中に特別仕様車の設定を数多く行なったほか、時代に合わせて安全性能や燃費性能の向上が継続して計られました。
北米で発売スタート
ちなみに、初代ヴィッツの派生セダンは「プラッツ」でしたが、2代目では「ベルタ」に名前が変わっています。
また、2代目ヴィッツからは北米市場で「ヤリス・ハッチバック」として発売もスタートしています。わざわざハッチバックと銘打っていたのは、ベルタが「ヤリス・セダン」としてカタログに載っていたからでした。
さらにややこしいことに、欧州ではダイハツ「シャレード」としても販売されていました。エンブレムがDマークになっただけで、外観上の差はありません。
3代目ヴィッツ:9年のロングセラー
燃費や安全性を向上
6年のモデルライフを終えて、2010年には3代目ヴィッツ(XP130型)がデビューしました。コンセプト自体は、「小さくて広く、しっかり走り、燃費も良い」というそれまでのヴィッツと大きく変わるところはなく、3代目ではさらなる燃費や安全性の向上が行われています。
徹底した軽量化や空力性能のアップ、シートの改良、後席の居住性改善など、細かな進歩も着実に進められていました。外観は一目でヴィッツとわかるものの、キリっとしたディティールによってシャープな印象に。特徴だったセンターメーターが廃されたこともトピックでした。
2011年には、GAZOO Racingが手がけたコンプリートチューニングモデル「G’s」も追加されています。
2017年から「キーンルック」を採用
発売から4年が経過した2014年になって大きなマイナーチェンジを行い、フロントエンドを変更してより一層尖ったイメージに。外観のみならず機構面でも大きく手が入り、アイドリングストップ機能を全車標準装備にして燃費数値をさらに改善、ボディ剛性を高めて安全性も強化、静粛性の向上などが図られました。
その後もヴィッツ改良の手は休まらず、翌2015年からは衝突回避支援パッケージ「トヨタ Safety Sense」を搭載。さらに2017年の改良ではフロントに「キーンルック(V字グリルを特徴とするトヨタのフロントデザイン)」を採用して大幅刷新。テールエンドも様変わりしてリアコンビランプを左右にも拡大、イメージを一新しています。
なお、グレード面ではこのとき「RS」が廃止になったほか、「G‘s」の名称も「GR」に変わりました。
ちなみに、3代目ヴィッツはこの記事を書いている2019年11月現在も発売中のため、登場後9年を経たロングセラーモデルとなっています。
4代目ヴィッツ(?):いよいよ世界統一名称の「ヤリス」へ
初心に立ち返った意欲作
そして2019年10月、事実上4代目ヴィッツとなる新モデル、「ヤリス」がヴェールを脱ぎました。コンパクトカーの新しいベンチマークとなるべく、プラットフォームからパワートレインまで完全刷新となった新型ヤリスは、トヨタが持ちうる最新技術が惜しみ無く投入されており、初代の志に立ち返ったような意欲的なモデルになりました。
1999年の登場からちょうど20年経ち、トヨタのコンパクトカーの名前としてすっかり浸透したヴィッツの名称を無くすのは惜しい気がするのですが、スターレットからヴィッツへの画期的な変化のように、今回のフルモデルチェンジもひとつの大きな節目と言えるもの。
世界戦略車としてすでに様々な国と地域で活躍しているヤリスという名前に統一することで、日本のユーザーに「ヤリスは世界中で走っているクルマなのだ」と知らせることもでき、この名前は今後時間をかけて、多くのユーザーに浸透していくのではないでしょうか。
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