スッキリ端麗! 新型ハリアーはとことん澄み切った“究極の塩ラーメン”だった【ハリアー速攻試乗】(1/2)
- 筆者: 今井 優杏
- カメラマン:茂呂 幸正
モータージャーナリスト今井優杏が、2020年6月発売予定の新型ハリアー・プロトタイプにいち早く試乗!一番気になっていた「兄弟車の新型ハリアーとRAV4、味付けってどう分けた!?」を開発責任者に聞いたところ・・・
ハリアーはRAV4と兄弟車、そして開発の統括をしているメンツも一緒だった…だのになぜ!?
スッキリ淡麗。その一言に尽きる。待ってました! の新型ハリアーだ。
一般発売を前にプロトタイプに試乗が叶ったので、早速レポートしたい…とその前に、まずはオーバービューというか、ハリアーの位置付け的なものをお話しようと思う。
個人的にもかなり楽しみにしていたハリアーだが、このクルマは先に発売され、これまた大ヒットとなったRAV4(トヨタ内として単一車種として世界で一番売れたそうな)と、アーキテクチャを共用する。
このRAV4がまた、『イヤあんた、いくら世界中で売れそうなミドルサイズSUVパッケージだからって、そんなにコッテコテにやらんでも…』と乗ったコチラが思うくらいにキャラが濃いモデルであった。インテリア・エクステリアはもちろん、エンジニアリング的にもとてもマニアックだったのだ(これ以上は過去記事参照でお願いしたく)。
驚いた! あのコッテリRAV4の濃さとは真逆のあっさりさに
なので、このハリアーもきっと味付けは違えど、濃ゆ〜〜〜い感じで来るんだろうな、と勝手に思っていた。
更に言うなら、ハリアーとRAV4が共用するのは、実はアーキテクチャだけではない。主査こそ別の人だが、全体を統括しているのはRAV4開発主査を努めた方で、走りの味付けをする“匠”こと、凄腕技能養成部のテストドライバー3名も、全く同じメンツだったのだ。そしてこの人たち、揃いも揃ってみ〜んなキャラが濃い(笑)! そりゃ放っといてもクルマも濃くなるでしょうよ、と納得してしまうほどに。
しかし、試乗した感じはアラ不思議。むしろ…無味無臭に近いかも。
ん? 私のセンサー、久しぶりの試乗会で狂っちゃった? 自信あったんだけどな! と、DOKIDOKIしながら開発陣に直撃してみた。
兄弟なのになぜこうも違う? 味付けの秘密を“調理人たち”に直撃
ヨンクであることをとことんこだわったRAV4
『あ、解った?』それが最初の返答。お話しくださったのは先述のRAV4開発責任者であり、現在はRAV4、そしてハリアーが属するトヨタ自動車のミッドサイズ・ビークルカンパニー MSZデザイン領域 統括部長に就任されている佐伯 禎一氏だ。
『RAV4は、乱立するSUVマーケットに導入するにあたって、“トレンドとは一線を画するSUVのワクドキを提供する”ためのクルマでした。だから、今、マーケットのど真ん中にあたるオンロード系SUVではなく、ヨンク車としてここまでやるか! ということを徹底的にやった。敢えて今、盛り上がっているマーケットではない“本格的クロスオーバー”という隙間を突いたのです。』
ハリアーの性格付けをもっとはっきりさせたかった
『しかし、ハリアーはもうすでに、都会派SUVとしてお客様へのブランディングが出来ている。私は常に、ブランディングというものは車種別になされるべきだと考えています。そういう意味で、RAV4には本格クロスオーバーとしての性格を与え、ハリアーは都会派SUVというはっきりとした性格を与えたかった。そこで目指したのは“雑味のない塩ラーメン”です。』
そう、この御方、かつてRAV4を豚骨ラーメンになぞらえていらっしゃったのだけれど、なるほどそう言われれば合点が行く。余計で過剰な走りの味付けは、ハリアーには不要と削ぎ落としてきたということか。
ただ薄味にしたのではなく、雑味のないスッキリした味わいにしたかった
その後、走りの味付けを担当した凄腕技能養成部・片山 智之氏が言葉尻を引き受ける。
『しかし、大事なのは“雑味のない”という部分です。ですから、ドライバーにとって不快だと受け取られるような部分、たとえばコーナリング後半の“戻し”の部分ですね。ハンドルもペダル類も、こういったところの不自然さやレスポンスの悪さ、静粛・制振性などには徹底的にこだわりました。』
さらに佐伯氏が続ける。
『RAV4の薄味版、つまり薄めた豚骨ラーメンじゃなくてね、スープが底まで澄み切った美味しい塩ラーメンにしたかったんです。それが先程言われた“無味無臭”という評価につながっているんだとしたら、大成功です』
ああ、してやられた。思うつぼだったか!
試乗したシーンはサーキット。平滑な路面だから、ハンドリングや極端な加減速をテストする以外、たとえば路面の荒れや欠け、超低速でのアンジュレーション、超低回転でのノロノロ走行での評価など、ほんとうにハリアーで試したかった領域では乗れなかったなぁ、とごく自然に思っていた。そう、すでに私はハリアーをブランディングされていたのだ。
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