共感できる?クルマ性能が大幅進化でも50年前から変わらない制限速度での取り締まり(2/2)

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共感の得られない制限速度で取り締まっていては反感買うのは当たり前

その一方で、高速道路を利用する価値には時間の節約もある。200kmの距離を平均時速40kmで移動すれば5時間を要するが、時速100kmで走れば2時間、時速133kmなら1時間半で済む。通行料金を支払うことで、時間を手に入れられるのが高速道路の価値だ。

そこを考えると、車両の走行安定性の向上に伴って制限速度も見直し、高速道路の価値を高めることが求められる。進化した設計の新しいクルマを買うことで、より多くの時間を安全に節約できるわけだ。

ただし制限速度を引き上げた場合は、自己責任の範囲も広がる。自分の車両の走行安定性を正確に判断して、危険のない最適な速度を選ぶ必要が生じるからだ。

それでも多くのドライバーにとって違和感のない共感の得られる制限速度を設ければ、遵法意識が高まって安全の向上に結び付く。現状では制限速度が実情に合ったものとはいえず、要はいい加減に設定されているから自分の判断で走ってしまう。

低い速度域にも問題が多い。枝道が数多く交差する狭い裏通りでは、安心して走れる速度は時速20km以下だったりするが、道路標識を見ると制限速度を時速30kmにしている道路が多い。警察庁は「あくまでも制限速度だから、状況に応じて低い速度で走って欲しい」というが、制限速度で走って危険を感じたのでは制限を加える意味がない。裏道から高速道路まで、道路環境に即した制限速度を設ければ、ドライバーも守ることを真剣に考える。今のように大雑把では、遵法意識が薄れて当然だ。

制限速度の一部区間引き上げを切っ掛けに設定や表示方法の見直しを

制限速度の設定は、取り締まりに対する受け取り方も左右する。共感の得られない制限速度に基づいて取り締まりを行ったのでは、反感を買って当たり前だろう。

例えば高速道路を降りた後のランプウェイ。本線の制限速度が時速100kmなのに、いきなり時速40キロに下がるところがある。こういった場所でも覆面パトカーによる速度違反の取り締まりが行われるが、検挙されたドライバーは納得できないだろう。実際に時速40キロまで速度を下げれば急な減速になって危険を誘発する。制限速度の現実性が乏しいからだ。仮にこの場所で速度を時速40キロまで下げさせるなら、手前にも制限速度の標識を設け、時速80キロ/60キロ/50キロ/40キロと段階的に速度を落とせる配慮が必要になる。

取り締まりがすべて反感を買うわけではない。最近はあまり見かけなくなったが、高速道路の路側帯通行などは、事故が発生した時に緊急車両の到着を遅れさせる原因になる。多くのドライバーが危険な違反であることを認識しているから、取り締まりに対する反応は概して好意的だ。速度違反の取り締まりも、速度超過が大きな危険を発生させる裏通りなどで行えば、相応の評価を受けられる。

新東名高速道路の制限速度が一部区間で時速110kmに引き上げられたことを切っ掛けに、その設定の仕方と表示方法を見直して欲しい。そうなれば速度違反の取り締まりも、自ずから共感を得やすいものに変わるだろう。

[Text:渡辺陽一郎]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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