トヨタ 次期カローラ/カローラワゴン(ツーリング) 予測解説|5ナンバー廃止で“日本のカローラ”を捨ててしまう!?

次期カローラはコンセプトや位置づけが大きく変わる?

2018年6月にカローラスポーツが発売された時、トヨタから「12代目カローラの第1弾」と説明された。

そうなるとカローラアクシオ(カローラセダン)やフィールダー(カローラワゴン、新型では「カローラツーリング」名になる模様)も、カローラスポーツと同様のプラットフォームを使って開発されるわけだ。つまり全幅が1700mmを超えて、3ナンバー車になる。

その基本的なセダンの外観は、2018年11月に開催された中国・広州国際モーターショーで披露され、今ではワゴンを含めてトヨタのホームページでも閲覧できる。カローラスポーツをベースにして、セダン&ワゴンに発展させると考えれば良い。

昨今のカローラは、地域によってモデルを造り分けており、日本仕様はヴィッツとプラットフォームを共通化した5ナンバー車だ。カローラは1966年に発売された初代モデル以来、日本ではセダンやワゴンが5ナンバーサイズを守り続けてきた(カローラルミオンなどを除く)。その背景にはトヨタの「日本の道路環境に最適な大きさは5ナンバーサイズ」という考え方があった。

つまり海外仕様と同様の3ナンバー車になる次期カローラは、日本仕様についていえば、コンセプトや位置付けが大きく変わったことを意味する。

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3ナンバーになるのは、今セダンやワゴンに求められている走行性能を得られないから

このあたりを開発者に取材すると「開発初期の段階では、次期カローラの国内仕様を5ナンバーサイズに収めることも検討した」という。それは今のカローラには、ほかのセダン&ワゴンと違って5ナンバーサイズに大きな価値があるからだ。

しかし現行カローラのプラットフォームを踏襲したり、次期ヴィッツ(ヤリス)と共通化しても「今のユーザーがセダンとワゴンに求めているような走行安定性や乗り心地は得られないと判断した」という。そこで海外仕様と同様、カローラスポーツと基本的に同じベースを使う3ナンバー車に拡大することになった。

それでも「全幅は少し抑える」とのことで「カローラスポーツは1790mmだが、日本国内で販売されるセダンとワゴンは、1740~1750mmになる」と開発者は言う。そのため次期カローラセダン&ワゴンの全幅は、若干狭くなる程度だが、日本仕様としての対処が行われるというわけだ。

次期カローラ、“コンパクトカー”から“ミドルサイズカー”へ

次期カローラセダン&ワゴン(カローラツーリング)の全長は4600mmに達して、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)もカローラスポーツに比べて60mm長い2700mmに達する。

現行カローラアクシオ&フィールダーに比べると、全長が200mm少々、ホイールベースは100mm、全幅は約50mm広がるから、既存の車種でいえばインプレッサG4に近く、レヴォーグよりは少し小さい。

またインパネ周辺のデザインはカローラスポーツとほぼ同じで、水平基調としながら上下方向にボリュームを持たせた。造り込みや質感は満足できる。居住空間はホイールベースがプレミオ&アリオンと同じ2700mmになるから、不満のない広さを備える。

次期カローラセダン&ワゴンではホイールベースも拡大

ちなみに新しいTNGAのプラットフォームは、先代プリウスなどが使うタイプに比べると、前席の位置が30mm後退した。そのために後席の足元空間の確保が難しくなっている。

カローラスポーツでは、身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ半にとどまる。現行アクシオ&フィールダーは、ホイールベースがカローラスポーツよりも40mm短い2600mmなのに、握りコブシ2つ分を確保している。

次期カローラセダン&ワゴンは、このようにTNGAの空間効率が下がるのを考えて、ホイールベースを2700mmに伸ばすわけだ。カローラスポーツに比べて60mm長いホイールベースの拡大分を、そのまま後席の足元空間に振り充てれば、次期カローラセダン&ワゴンも十分な居住空間を確保できる。また全長が4600mmを超えるから、荷室容量にも余裕ができる。

エンジンラインナップは1.5L、1.2L ターボ、1.8L ハイブリッドの3種類になる見通し

以上のように次期カローラセダン&ワゴンは、もはや現行型までのコンパクトな車種ではない。トヨタ車でいえば、かつてのアベンシス(これもホイールベースは2700mmだった)に相当するミドルサイズカーだ。またパワートレインは、直列4気筒1.2リッターターボ、直列4気筒1.5リッター、そして1.8リッターのハイブリッドになる見通しだ。

次期カローラセダン&ワゴン 価格は上昇で200万円台が中心に

カローラスポーツはターボとハイブリッドのみだが、価格帯が高まった。ホイールをスチール製にするなど装備をシンプルに抑えたターボのG・Xでも213万8400円だ。中級のGは225万7200円になる。ハイブリッドGは252万7200円まで高まる。

この価格をベースに考えると、ホイールベースを伸ばした次期カローラセダンとカローラワゴン(カローラツーリング)は、カローラスポーツのG・Xに相当するグレードが229万円くらいだろう。Gに相当するグレードは241万円だ。これでは割高感が生じるから、1.5リッターのノーマルエンジンを用意して、価格を15~20万円は安く抑えるだろう。

それでも1.5 Gを190万円以下に抑えた現行アクシオに比べると、価格の上昇は避けられない。

理想は日本ユーザー向けに5ナンバーサイズで開発してほしかったところ

初代から現行型までのカローラを振り返ると「小は大を兼ねる」クルマ造りであった。コンパクトな5ナンバーサイズでも内外装は立派で、居住空間も各時代のセダンに求められる広さと快適性を確保した。「小さなクルマに乗っている」気分を感じさせず、しかもコンパクトなサイズだから運転がしやすく、経済性も優れていた。

おそらく次期カローラも優れたセダン&ワゴンになるが、「小は大を兼ねる」独特の価値と、日本のユーザーに向けた心意気は失われる。日本のユーザーのために、5ナンバーサイズに収まる渾身のプラットフォームを新規開発して、「日本のカローラ」を守り抜くことはできなかった。

100年に1度の大変革の時代、グローバリゼーション…、これらが日本のユーザーに何をもたらすのか。トヨタ車の代表として、次期カローラが雄弁に物語っているように思う。

[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:和田 清志・トヨタ]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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