トヨタ 新型 カローラ 1.5リッターモデル 試乗レポート/渡辺陽一郎(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
剛性の確保が難しいワゴン、フィールダー 1.5の出来栄えは!?
カローラアクシオでは、1.5リッターエンジンと175/65R15サイズタイヤの組み合わせが、最もバランスが良いと感じた。1.3リッターモデルに対する価格アップも、実質4万円に抑えられている。
ならばワゴンのカローラフィールダーはどうか。一般的にいえば、ワゴンはボディの後部に大きなリアゲートを持ち、剛性の確保が難しい。走行安定性、操舵感、乗り心地などがセダンに比べて悪化しやすい。
ところがカローラフィールダーの走りは、セダンのアクシオとほぼ同等だ。厳密にいえば、タイヤが路面の上を転がる音が少し車内に響きやすいが、気にならないレベルに抑えている。
開発者がかなり苦労したところで、リアゲートの開口部、リアサスペンションの取り付け部分からリアフェンダーにかけて、かなり入念な補強を施した。アクシオ1.5Gの車両重量は1090kgだが、フィールダー1.5Gは1140kg。50kgの重量増加は小さくないが、ボディ補強が奏効してアクシオに見劣りしない乗り味に仕上げた。
カローラフィールダーに標準装着されるタイヤはアクシオと同じだが、オプションで185/60R15サイズも選択できる。試乗車はブリヂストンB250を履いていた。サスペンションの設定は同じだが、路面をつかむ力が少し高まり、メリハリの良い動きを見せる。その半面、乗り心地は硬めだ。車両全体のバランスが良いのは標準装着タイヤだが、運転の楽しさも求めるなら、アルミホイールとセットで185/60R15サイズを選ぶ手もあるだろう。
アイドリングストップ機能装着の摩訶不思議なこととは?
1.5リッターモデルには、アクシオ、フィールダーともにアイドリングストップもオプション設定される。車両が完全に停止してからエンジンが止まるタイプだが、再始動に要する時間は短く、クランキングノイズも小さい。日産やマツダのアイドリングストップと同様、NやPレンジに入れると、ブレーキペダルから足を離してもアイドリングストップの状態を保つ。この時には、ドアを開いたり、シートベルトを解除すると再始動。ドライバーがアイドリングストップ中であることを忘れて降車しないように配慮されている。信号待ちの時など、エンジンを再始動させずに右足を休ませることが可能だ。
他メーカーのアイドリングストップでは、ハンドルを回すとエンジンを再始動させてパワーステアリングを働かせるが、カローラアクシオ&フィールダーを含めたトヨタ車とダイハツ車は、再始動をさせずに電動パワーステアリングが働く。
気になったのは、アイドリングストップの作動中にブレーキペダルを踏み増しても(緩めるのではなく)、負圧の変化を検知してエンジンが再始動すること。トヨタ系列のアイドリングストップ車に見られる傾向だが、少し使いにくい。信号待ちをしている時など、着座姿勢を変えたことで、ブレーキの踏力が強まることもあるからだ。
アイドリングストップのオプション価格は5万4600円。今の相場は約3万円だから、カローラアクシオ&フィールダーは割高だ。ディーラーによれば、バッテリーの価格もノーマルタイプの約1万7000円に対してアイドリングストップ装着車は3万7000円前後に高まる。エコは損得勘定では語れないが、渋滞の多い地域でないと、アイドリングストップのオプション価格とバッテリーの差額をガソリン代の節約で埋めることは難しい。
また、アイドリングストップが1.5リッターエンジン搭載車だけに設定され、燃費を重視する1.3リッター車に用意されないことも不可解だ。
目頭が熱くなった!フルモデルチェンジにまつわる苦労話とは?
この背景にもエコカー減税が絡む。平成27年度燃費基準と照合すると、1.5リッターエンジンを積んだ2WD(CVT車)の車両重量(1090/1140kg)は、18.7km/Lが基準値。カローラアクシオ&フィールダーはノーマルエンジン車でも20.0・19.6km/Lだからクリアしており、アイドリングストップ車の21.4・21.2km/Lになると、平成27年度燃費基準プラス10%を達成できる。アイドリングストップの装着で、購入時の自動車取得税と同重量税の減税率が50%から75%に高まり、購入後の自動車税も、25%の減税率が50%になる。
しかし1.3リッターモデルは、車両重量が1050kgと軽く20.5km/Lが基準値。1.3GのJC08モード燃費は20.6km/Lだから、ギリギリで達成できた。仮にアイドリングストップの装着で燃費性能を8%高めて22.3km/Lにしても、プラス10%には届かない。そこで装着を見送っている。
本来ならば燃費重視の1.3リッターモデルにこそアイドリングストップが必要だが、実際はそうなっていない。これはトヨタの責任というより、エコカー減税が商品開発に悪影響を与えた典型的な事例となる。
以上のようにカローラアクシオ&フィールダーは、さまざまな苦難を乗り越えて開発された。
特にコストダウンの要請は厳しく、軽量化も達成せねばならない。最近は背の高いコンパクトカーが売れ筋で、小さなボディに広い室内を組み合わせるから、空間効率を高める必要もあった。
これらのニーズを満たすべく、プラットフォームをヴィッツと共通化したが、走行安定性と乗り心地に粗さが生じてしまう。
そこで前述のフィールダーだけでなく、アクシオもドアの開口部からボディの骨格まで、各部の補強を入念に行っている。開発者は「カローラの品質を保つために、とても苦労しました」と述懐した。
今はセダンやワゴンが棲みにくい時代。5ナンバーサイズに収まるカローラアクシオ&フィールダーは基本的に国内専売だから、「日本のベストセラー」の立場を失った今、引退を迫られても不思議はなかったと思う。
それでもカローラアクシオ&フィールダーはフルモデルチェンジを受けた。トヨタにとって、日本のクルマにとって、欠かせない存在であるからだ。
「今はハイブリッド車が受けていますが、いつかまた、カローラが国内販売の首位に返り咲く時がくると私は信じています」。開発者の1人がコメントした。
私が初めて購入した愛車は、排ガス規制前のツインキャブレターを備えた3代目カローラセダン1600GSL。カローラは私にクルマの楽しさを教えてくれた恩人だ。フルモデルチェンジにまつわる苦労話を聞いて、目頭が熱くなった。
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