トヨタは嫌い!? 大変身で注目の新型カムリでもナゼ”自動運転”機能はないのか?
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:茂呂幸正
まだまだ自動運転技術とは呼ばないトヨタ
日産はセレナに続き、エクストレイルでも自動運転技術『プロパイロット』を搭載し、市場に対して”自動運転の日産”を強くアピールしている。スバルも、今年4月1日から技術本部の中に、自動運転プロジェクトという部署名が採用され、アイサイトの技術革新を進めている。
一方、トヨタの場合、量産車のカタログでは未だに、自動運転という言葉を使っていない。
そうした中、トヨタの世界戦略の中核であるカムリが、日本仕様として2017年7月10日にFMC(フルモデルチェンジ)した。 新型のウリは大きく3つある。
1つ目は、走りを予感させるエモーショナルで美しいデザイン。2つ目は、意のままの走りや上質な乗り味と低燃費の両立。
そして3つ目に、予防安全装備の充実として、衝突回避支援パッケージ「トヨタ・セーフティ・センスP」の標準装備がある。
予防安全装備とは、いわゆる自動ブレーキや、アクセルとブレーキの踏み間違い防止など、事故の危険性を事故が起こる前に少なくするアクティブセイフティという考え方に基づく技術だ。
また、万が一、事故が発生してしまった後に乗員の保護を行うエアバックなどの技術はパッシブセイフティの分野となる。
同じ「P」でも、プリウスはデンソー製、新型カムリは独コンチネンタル製
現在、「トヨタ・セーフティ・センス」は、アクア、ヴィッツなど車両価格が比較的低いモデル向けの「C」と、プリウス、そして新型カムリなど上級車に搭載する「P」の2タイプがある。
「C」は独コンチネンタル製であり、ルームミラーの後ろ側に、単眼カメラとレーザーレーダーをひとつのユニットに収納している。機能としては、いわゆる自動ブレーキへの対応は自車を先行する車や障害物などに対応する他、白線を認識して車線逸脱防止の警報を鳴らす。
一方、「P」は「C」の上級版で、サプライヤーは独コンチネンタルとトヨタの子会社であるデンソーの2つがある。現行のプリウスの場合はデンソー製の「P」だが、新型カムリの「P」はコンチネンタル製を採用している。
具体的な装備としては、「C」と同様にルームミラーの後ろにユニットがあるが、中身は単眼カメラのみで、この他にフロントボディにミリ波レーダー機器がある。
機能としては、歩行者に対する認識を行って自動ブレーキをかけることができる。これは、2018年から欧州及び日本での自動車アセスメントへの対応である。
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つまり、今後は「P」を採用する車種が増えることは、トヨタにとって必然だ。量産効果によって部品購入費の低減化を図り、「C」搭載車をMC(マイナーチェンジ)やFMC(フルモデルチェンジ)のタイミングで「P」への移管する。
自動運転とADASがゴッチャの時代、トヨタの選択とは?
こうしたトヨタの予防安全技術の量産計画は、自動運転機能をマーケティング戦略として使う日産と比べると、明らかにコンサバだ。
トヨタは80年代から自動運転の基礎研究が進め、2000年代にはトヨタの御膝元で開催された愛・地球博で、地面の磁気マーカーを検出しながら自動走行する近未来型バスのIMTSを導入するなど、自動運転を実運用した経験がある。
だが、2013年に米グーグル(現在の親会社はアルファベット)が自動運転の量産化を目指す動きが活発になったことを起点に発生した、世界的な自動運転バブルの中では、トヨタは派手な動きは見せていない。あくまでも、これまで社内やグループ企業内で蓄積した技術を基に自動運転に関する研究開発を粛々と進めてきた。
また、ADAS(高度運転支援システム、読み方:エイダス)については、前述のようにトヨタ・セイフティ・センスPおよびCについて、自動車アセスメントや各国の各種規制等に対応して、ベストタイミングでベストプライスでの導入を進めているに過ぎない。
こうした、トヨタの自動運転に対する”生真面目な姿勢”は、当面変わることはないだろう。
新型カムリのメディア試乗会で、トヨタの関係者らと意見交換しながら、そう感じた。
[Text:桃田健史]
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