スズキ ソリオ購入検討層は堅実な比較を重ねる慎重派だった!? 消費者行動データで分かった心理とは
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
2020年12月4日(金)にフルモデルチェンジを果たしたスズキ ソリオ。オーナーたちはどのような比較検討を重ね、何に悩んで購入に至ったのだろう。ユーザーの調査データを基に、ソリオ購入者の心理や、意外な競合車種などを検証してみた。
そこには、ライバル車をしっかり見極めてクルマ選びをする堅実なユーザー像が浮かび上がってきた。
軽の人気ジャンルがコンパクトカーにも飛び火!?スズキ ソリオ人気の秘密を探る
軽でダントツ人気のジャンルはスーパーハイトワゴン
日本で売られる乗用車の中でも、軽自動車が占める割合は現在4割近くにまで拡がっている。その人気をけん引しているのが、ホンダ N-BOXやスズキ スペーシア、ダイハツ タントといった軽スーパーハイトワゴンである。
軽スーパーハイトワゴンは、軽とは思えないゆとりの室内空間が特徴だ。
軽自動車規格の限られた車体寸法の中で車体の前後を切り詰め、ホイールベース(前後車軸間)を拡大。さらに車体を四角くく背も高くしたことで、大人4人が余裕をもって乗ることが出来る。後席左右にはスライドドアを備え、狭いスペースでも乗降性の良さも嬉しい。
税金・維持費が安く、身近な生活の足として活躍する軽自動車。そんなこれまでの常識を軽スーパーハイトワゴンは覆した。もはや「これ1台で全てOK」なファーストカーとして、コンパクトカーやミニバンなど小型乗用車からの代替需要も獲得するまでに至ったのだ。
コンパクトカーの世界にスーパーハイトワゴンを持ち込んだ元祖はスズキ
さて、そんな軽スーパーハイトワゴンの美点をコンパクトカーのジャンルに持ち込んだのが、軽を得意とするスズキだ。
1997年には、軽のワゴンRをベースに車体を拡大し1リッターエンジンを搭載した「ワゴンRワイド」が誕生。世代を重ね、独立した「ソリオ」の車名へ変化していった。ソリオとしては2代目となるモデル(2010年登場)からは、後席のスライドドアも備わるようになっている。
派手さはないが堅実なフルモデルチェンジを実施した新型ソリオ
そして昨年末の2020年12月4日(金)には、4代目となる新型ソリオが発売されたばかりである。
新型ソリオには、あっと驚くような派手さはない。外観も従来モデルのイメージを踏襲した。
ただし実用的なボディサイズを維持しつつ、室内空間はさらに拡大。1.2リッターマイルドハイブリッドエンジンは燃費性能も向上させるなど、全方位で堅実な改善を重ねた正常進化モデルである。
ダイハツやトヨタの参入でコンパクトハイトワゴンの市場はさらに活性化
スズキ同様に、主に軽自動車を扱うダイハツもソリオのライバル「ダイハツ トール」を2016年11月に投入。同時にトヨタやスバルにもOEM供給したことで車種数が急増し、現在も市場が拡大中。
2021年1月度の新車販売台数ランキング(軽自動車を除く)で見ると、トヨタ ルーミーが2位(10939台)とダントツ人気だが、スズキ ソリオも12位(5446台)と、新型デビュー直後ながら善戦している状況だ。
スズキ ソリオが人気を集める理由はどこにあるのだろうか。
ユーザーがどのような検討を重ね購入に至っているのか、自動車業界向けマーケティングサービス「IGNITION for Media」を提供するマイクロアドの消費者行動データをもとに、ソリオを購入した際の決め手や比較検討車種について考えてみよう。
>>「IGNITION for Media」とは[マイクロアドWebサイト]
ソリオ購入層は同クラスを比較! でも軽もやっぱり気になる!?
主なソリオ購入検討層は40代から50代の男性
2021年1月に調査したIGNITION for Mediaのデータによると、ソリオを購入検討したのは男性77.8%、女性22.2%。年齢別では45~49歳が46.8%、50~54歳が28.6%で多く、次いで40~44歳が9.9%と、40代から50代が主な購入層になっている。
スズキによるとソリオの主な購入層は、子育ても落ち着き、大きなミニバンは不要ながらスライドドアの便利さは欲しい…そんな需要が多いと説明している。
なおデータでは、30代も7.1%(35~39歳:4.3%/30~34歳:2.8%)を占めていて、ソリオが若いユーザーから支持されていることも示している。
購入価格帯は100~200万円が39.4%で、次いで200~300万円が16.8%、100万円未満は6.9%だ(調査データには中古車購入者も含まれる)。
ちなみにスズキ ソリオの新車販売価格は約158万円から約215万円である。
ソリオユーザーが重視していたのは室内よりも荷室だった!?
IGNITION for Mediaの調査データでは、ユーザーがクルマを購入する際の興味・関心を知る「クルマ選びのポイント・価値観」の項目も設けられている。重視するポイントとしては走行性能・乗り心地・エクステリア・インテリア・価格・安全性能・室内空間・燃費・荷室の9項目が挙がっている。
ソリオオーナーが重視していたTOPの項目は荷室で、全体の23.7%を占めた。
2020年12月にフルモデルチェンジした新型ソリオは、全長を80mm延長。特にリア回りの車体部が長くなり、荷室床面長は100mm拡大している。
こうした新型のアピールポイントとユーザーの興味がしっかり一致していた点が興味深いところだ。
続いてエクステリアへの関心が18.6%。
通常モデルに加え、エアロパーツなどでカスタマイズされたソリオ バンディットの2タイプが用意されるスズキ ソリオ。こうした外観上の違いなどがチェックされているようだ。
このほか燃費が10.3%、室内空間が7.1%となっている。
他ジャンルのN-BOXやヤリスも比較するユーザーの心理とは
堅実なユーザー像が浮き彫りになった比較対象
ソリオを購入したユーザーは、どんなクルマを比較しているのだろう。
上位5台はトヨタ ルーミー(検討率5.3%)、ダイハツ トール(4.2%)、ホンダ N-BOX(2.5%)、三菱 デリカD:2(2.4%)、トヨタ ヤリス(2.3%)などとなっている。
まずはトヨタ ルーミーやダイハツ トールといった、ソリオと直接競合するライバル車の名が勢揃いしている点を注目したい。
なおデリカD:2はスズキ ソリオのOEM車で、違いはエンブレムなどの細かい部分のみである。
このデータからは、OEMモデルを含め各社の競合車をしっかり比較検討している、堅実なユーザー像が垣間見られるようだ。
軽とコンパクト、けっきょくお得なのはどっち!?
いっぽうで、軽スーパーハイトワゴンの代表格であるホンダ N-BOXも比較対象となっている。
軽とコンパクトカーでは結局どちらがお得な買い物となるのか、なるほど確かに気になるところ。ホンダ N-BOX/N-BOXカスタムの新車販売価格は約140万円から約213万円で、ソリオとは価格帯も完全にバッティングしている。
あとは税金や維持費といった諸費用、値引きなど、実際の総支払額でどれだけ差が出るのか。新車の販売ディーラーで見積もりを取得し慎重に比較するソリオオーナーの姿がここでも浮かんできた。
小さなコンパクトと大きなコンパクト(?)を比較する理由とは
さらにコンパクトカーのトヨタ ヤリスも比較検討に挙がっている点も興味深い。
広い室内空間のソリオと、広さはほどほどで燃費の良い俊敏なコンパクトカーのヤリス。一見すると競合しなさそうな2台をしっかり見比べていたのだ。
ソリオはマイルドハイブリッドで、トヨタのルーミーなどはガソリンモデルのみのラインナップ。いっぽうのヤリスには、極めて燃費性能の高いストロングハイブリッド車の設定がある。広さと経済性を天秤にかけ、しっかりと比較しているのだ。
ちなみにヤリスの価格はガソリンモデルで約140万円から約193万円。ハイブリッドモデルで約200万円から約230万円(共にFFモデルの場合)である。
堅実なクルマ造りと堅実なクルマ選び、2つの価値観がシンクロする
IGNITION for Mediaの調査データで様々な車種検討層を見ていると、競合車はまるでかけ離れた車種、というケースが散見される。気まぐれなようにも映るが、それだけ自由に楽しくクルマ選びをしている証しだ。
いっぽうで今回のソリオ検討層の場合は、ていねいに競合を見極めながら、堅実なクルマ選びをしている姿が浮き彫りになった。クルマのキャラクターとオーナー、ちょっと似たところがあるようだ。
[筆者:MOTA(モータ)編集部 トクダ トオル]
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