スズキ 新型「アルト」デザイナーインタビュー/スズキ株式会社 四輪デザイン部 チーフデザイナー 内山 一史【DESIGNER’S ROOM】(3/6)
- 筆者: 森口 将之
- カメラマン:和田清志・スズキ
極めてシンプルなのに、強い個性が溢れるフロントデザイン
AO:ヘッドランプが個性的ですね。
U:いろいろ考えましたが、ヘッドランプとウィンカーをひとつにまとめることにして、その中で個性を表現しました。初代はヘッドランプは丸でしたが、グリルを含めた形状はこれに近かったんです。ユニット全体は異形ですが、カバーをクリヤーとすることで、中に収めた丸いヘッドランプと角形のウインカーを目立たせました。
AO:グリルをなくして非対称の位置にスリットを入れたフロントマスクも目立ちます。
U:これは最初から決めていました。クロームメッキなどに頼らず、クオリティを出すためのアイディアです。
もともとスズキの軽自動車はラジエーターがオフセットしているので、助手席側だけに開口部があれば良いのです。初代アルト・ワークスや初代ワゴンRも非対称でした。それ以外にボンネットとフロントパネルの隙間からもエアを取り込んでいます。これはターボエンジンを積む「ターボRS」で必須でした。
軽自動車離れしたデザイン表現の秘密
AO:ボディサイドのデザインも、これまでの軽自動車とは違う雰囲気ですが。
U:こちらも初めからこうしようと考えていました。きれいな面に表情をつけるというイメージで、まず1本ラインを引いて、上下の面に抑揚を付けました。サイドがダラッとするとカタチ全体に締まりがなくなってしまいますから。でも軽自動車なので、お金は掛けられません。なので生産現場の人と相談して、トライ&エラーで作り上げていきました。
AO:フェンダーがグッと張り出した姿も軽自動車離れしていますね。
U:新しいプラットフォームはホイールベースが伸びたので、今までよりもさらに四隅にタイヤがあります。それを強調するために、パネルに折り返しを入れたりして張り出し感を表現しました。もっともホイールベースの決定には、デザインも関わっています。バンパーのコーナーに丸みをつけられるかなど、デザインとのバランスを考えて、この数字に落ち着いたのです。
AO:サイドウインドーが最後でキックアップしているのは、初代アルトからのフィードバックなのでしょうか。
U:それだけではなくて、Cピラーを太く、サイドウインドーを上下に薄く仕立てたいという気持ちがあったんですが、そのままだとリアが重くなってしまうので、前進感を出すためにも、キックアップさせたのです。Bピラーは黒くすることも考えたのですが、実用車らしさを考えて、ボディ色のままにしてあります。
AO:ワゴンタイプの軽自動車と比べると、フロントドアが長めですが。
U:ワゴンタイプはファミリーカーとして使われることも多いですが、新型アルトのようなセダンタイプは、子離れが終わったお客様や、女友達など、1~2人で乗ることが多いので、この比率にしました。リアドアハンドルをピラーに埋め込んでも良かったのではないかという声も聞きます。ただピラーに移すと位置が上になり、背の低い人が扱いにくくなるので、一般的な位置のままとしました。
[2トーンテールゲートの発想はどこから!?・・・次ページへ続く]
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