スズキ 新型「アルト」デザイナーインタビュー/スズキ株式会社 四輪デザイン部 チーフデザイナー 内山 一史【DESIGNER’S ROOM】(6/6)
- 筆者: 森口 将之
- カメラマン:和田清志・スズキ
美しいと思うものを表現し、それを説明できる力
AO:ところで内山さんがデザインを考えるとき、イマジネーションが膨らむのはどんな場所、時間なのでしょうか。
U:通勤のときでしょうか。ジムニーを運転して会社に行くのですが、その途中に良いアイディアを思いついたりします。洗車をしているときにアイディアが浮かぶこともあります。ボディに直接触れているから、そういう発想が生まれるのかもしれません。趣味は家庭菜園などですが、そういう時間にデザインの考えが浮かぶことは、あまりないですね。
AO:これからカーデザイナーを目指す人にアドバイスがあればお願いします。
U:美しいと思うものを表現し、それを説明できる力を養ってほしいです。素晴らしいデザインを生み出すことと同じぐらい、言葉などを使って相手を説得することも、この仕事では大切だからです。また仕事となると、思ったことをできないこともあります。そのときは原点に戻って考えてみることが大切ではないかと思います。
デザインの魅力を、ひとりでも多くの人へ伝えたい
なぜ新型アルトのデザインはクルマ好きの間で話題になっているのか。それはクルマをクルマらしく見せること、より具体的に言えばプロポーションにこだわった結果だということが、内山さんへの取材で分かった。
実は新型アルト、室内は旧型より格段に広く、使いやすくなっている。にもかかわらず、きれいなカタチをしている。個性を強調した変化球ではけっしてなく、理想の実用車を追求した直球勝負なのである。だから共感できる。
そしてもうひとつ、あのパンフレットにも触れておきたい。この企画を含めて、デザイナーの方々との会話で良く出てくる話題として、自分が考えたデザインを相手に説明することも大切という言葉がある。内山さんも例外ではなかった。そして内山さんは、パンフレットという形でそれを実行した。
とことんデザインしたからこそ、その魅力をひとりでも多くの人に伝えたい。そういう気持ちが溢れていたからこそ、パンフレットを作るという新しい挑戦をしたのだろう。クルマは小さいけれど、デザインに対する想いは果てしなく大きいのである。
[レポート:森口将之/Photo:和田清志・スズキ]
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