ガチスバリストが選ぶ歴代EJ20搭載車ベスト5~さよならEJ20エンジン!~
- 筆者: マリオ 高野
- カメラマン:SUBARU
30年の歴史に幕を閉じ、ついに退役することになったSUBARUの名機「EJ20エンジン」。僭越ながら、SUBARU車マニアのマリオ高野が歴代EJ20のベスト5を選んでみた。選んだ理由は「マリオ高野個人の思い入れによるもの」ということで、異論や反論も多々あると思われるが、どうかご容赦いただきたい。
Best1 初代インプレッサWRX(アプライドA/B型)
EJ20型エンジンが登場したのは1989年で、それまでのEA型エンジンに代わる新世代ユニットとして初代レガシィに搭載。続いて1992年誕生した初代インプレッサも全車EJ型エンジンを搭載された。
トップグレードのWRXに積まれたEJ20ターボはバルブをロッカーアームからダイレクトプッシュに、インタークーラーは水冷式→空冷式とするなど大幅な変更を受け、当時としては2Lの4気筒では世界最高クラスの240psに達した。
初期モデルのエンジンはバーゲンプライスだった
初代インプレッサWRXの初期型に搭載されたエンジンは、シリンダーブロックに高剛性なクローズドデッキが採用されたことに注目したい。クローズドデッキとは、冷却水の経路であるウォータージャケットがトップデッキで覆われた構造のこと。シリンダーとトップデッキが結合されているためにシリンダーボアの変形を抑えられるなど、シリンダーが高剛性となる。その分コストがかさむことになるが、初代WRXの初期型(アプライドA/B型)では、標準グレードにもクローズドデッキが採用されていたのだ。
その後、オープンデッキでも耐久性が確保できることがわかり、後期型では最高出力が280psまで高められるにも関わらず、一部のモデルを除いてオープンデッキを採用し続けた。新世代の最強モデルに搭載するユニットということで、初期型はオーバークオリティな設計だったというわけである。
クローズドデッキは耐久性もハンパない!
筆者はアプライドA型の初代WRXを新車から所有しているが、耐久性の高さを実感した経験は枚挙にいとまがない。
たとえば、高速道路で巡航中にサーモスタットの故障でオーバーヒートを起こしたとき、水温計の針を振り切った状態で100kmほど走ってしまったことがある。エンジンが壊れてしまうことを覚悟の上での走行だったが、その後も後遺症と思われるようなトラブルは発生しておらず、今も快調。クローズドデッキならではの強さが長持ちの秘訣になっていることは間違いない。
Best2 初代WRX STiバージョンIII(アプライドD型)
初代WRXが販売された1992~2000年は、宿敵三菱 ランサーエボリューションとの激しい性能競争もあって、EJ20エンジンがもっとも大きな性能向上を遂げた時代といえる。
後期型はパワーアップしてラリーも制覇!
特に注目したいのは、1996年夏の大改良でEJ20エンジンは当時の自主規制いっぱいの280psに達したことで、2L4気筒の世界最強性能を更新。「マスター4 」と呼ばれ、初代WRXと2代目レガシィの後期型に搭載された。
初代WRXのSTiバージョンIII用ではピストン形状を変更し、ターボチャージャーは三菱製からIHI製として過給圧をアップ。コンピューターやセンサー類も一新された。この高出力化はモータースポーツの実戦でも強い武器となり、1997年にWRX STiバージョンIIIで初めて全日本ラリーCクラスのチャンピオンを獲得するなどその実力は計り知れない。
スバル&EJ20史上もっとも売れたのは2代目レガシィ
2代目レガシィ後期型用に搭載された2ステージツインターボ版の「マスター4」は、低背圧な電子制御可変マフラーや、スカートを短くするなどして低フリクション化されたピストンの採用、バルブシステムのソリッド化、圧縮比を向上するなどして高性能化が図られた。2代目レガシィの後期型は月販1万台以上を記録するなど大ヒットし、いまも国内SUBARU車販売の最高記録となっている。
Best3 S401/S203/S207
ベストEJ20を選ぶにあたり、STIのコンプリートカーに搭載されたユニットも珠玉の名機揃いといえ、外せない。その中でも、この3台に搭載されたEJ20は特に注目すべき存在だ。
この「S」シリーズは、STIコンプリートカーとして最強・最高性能を追求。エンジンを大幅に強化した限定車と定義づけていたので、全車とも高出力化がはかられた。STIが手がけるということで、高出力化しても耐久性はベース車と同等レベルを追求。ピストンやコンロッド、クランクシャフトなど主要なパーツのバランス調整が行われている。
SシリーズのEJ20は、圧倒的なパワー感とともに、吹け上がりの鋭さや回転フィールの滑らかさも大きな魅力で、大人気を誇る要因になっている。
強いエンジンはバランス取りがキモ
SUBARUの場合、エンジンのバランス取りの本当の狙いは微細な振動を低減することによるメタルの耐久性の向上にある。これは有名な初代レガシィ「10万キロ速度世界記録」の挑戦から始まった技術だ。
「10万キロ速度世界記録」の記録挑戦時に、アクセル全開で走り切ってもエンジンは壊れなかったのは、バランス取りが奏功したということで、その技術がSシリーズのエンジンに応用されるようになったのである。
S401はスバルがスバルを超えた1台
S401では「走ることへの情熱を抱き続ける大人の感性に響く質の高い走り」と謳ったように、圧倒的な高出力を発揮しながら、とても甘美なエンジンフィールが味わえたことが今も印象深い。
低回転域から過給圧が発揮される2ステージツインターボならではの、大排気量エンジンのような厚みのあるトルク感がもたらす甘美さにより、SUBARU車がかつてない高みに登りつつあることを感じさせた1台だ。
555台のためにターボチャージャーを専用開発
S203では、吸排気系やECUの変更に加えて軸受けにボールベアリングをもつ大径ボールベアリングのターボチャージャーを採用。低回転からトルクが滑らかに立ち上がりつつ、8000rpmまでパワー感が衰えることなく炸裂するフィーリングに陶酔した経験が忘れられない。
この大径ボールベアリングターボは、IHIがわずか555台のために専用に作ってくれたもの。IHIはWRC参戦時のテクニカルスポンサーでもあり、WRCの現場でともに戦い、苦楽を共有するなどして信頼関係を築いてきたからこそ実現した“奇跡”のような成果といえる。WRC参戦によるメリットは限定車作りにも及ぼしていたのだ。
700万円超えながら即日完売したS207
そしてS207は、2015年当時の国産車としては史上最高スペックとなる328ps/7200rpmという高回転で発揮するようになった点に注目したい。世界的には高性能車のエンジンもダウンサイジング化が進み、小排気量の高効率ターボが主流となっているが、いずれも中低速トルク重視型なので、高回転での炸裂感は年々減退しているのも事実だ。
その点EJ20は基本設計が古いことに加え、92mmのボアに対してストロークは75mmと、極端なショートストロークであるということが、時代に流されることなくスポーツユニットとしての気持ち良さを維持向上できたといえる。
低速トルクを重視するには不向きだが、高回転型にしやすくスポーツカー向きであるという素性により、いつの間にかEJ20は4気筒ターボとしては世界で唯一8000rpmまで回せるエンジンとなった。
S207は、2015年の10月に受注が開始されてからわずか1日で完売するという、SUBARUとしては未曾有の出来事も大いに話題となった。限定の400台に対しておよそ680名の購入希望者が殺到し、抽選が実施される事態に。EJ20搭載車は、総額700万円に迫る高価格でも即日に完売するほどにブランド力を高めたのである。
【筆者:マリオ高野/撮影:SUBARU】
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