ヤマハがベンチャーに初投資|グラフィット社との取り組みから読む「自転車と原付のこれから」[“モビリティの世界” Vol.9]

  • 筆者: 楠田 悦子
  • カメラマン:楠田 悦子・YAMAHA

日本の原付・自転車がおもしろくなってきた

日本の原付と自転車がおもしろくなってきています。

その立役者は大手老舗メーカーではありません。2017年に創業した純国産のモビリティ関連ベンチャー「glafit(グラフィット)」です。そして、ベンチャー企業を支援する“老舗”ヤマハ発動機の動きも注目されます。

グラフィット社とヤマハは2019年1月24日に、製品開発に向けた業務提携を締結。ヤマハは1億円を出資すると記者発表しました。ヤマハのモーターサイクル事業単体として、ベンチャーに投資したり協業するのは初めてのことです。

グラフィット社は和歌山発のベンチャー企業。「21世紀の”ホンダ”を目指す」と掲げて株式上場を目指しています。

同社初の市販モデル、電動バイク「glafitバイク GFR-01」を誕生させるため、クラウドファンディングでは日本最高記録の約1億2800万円(2017年8月)の資金調達を成功させたことでも話題にのぼりました。

このような経緯を経て2017年10月、遂に発売へ至ったGFR-01は2018年のグッドデザイン賞を受賞。初年度の販売台数も国内トップクラスの約3000台にのぼっています。

>>注目の電動バイク「GFR-01」の詳細を画像で見る[フォトギャラリー]

エンジン付きの自転車!? 老舗では出来ない「原点回帰」

「glafitバイク GFR-01」の価格は税込み150,000円。免許、ナンバープレート、ヘルメットが必要な”電動“の第一種原動機付自転車(原付バイク)です。ですが、自転車のように「ペダル」がついているんです。

走行モードは以下の3つ。

1.ペダル走行モード(自転車!?)

2.電動バイクモード(電動原付!? 最高速度は約30km/h)

3.ハイブリット走行モード(電動アシスト自転車とは違い、モーターとペダルのそれぞれを使って走ることが出来る、新感覚のスピードが味わえます)。

充電時間は約4~5時間で、25km/で走行した場合約40km走行できます。

売り方も大手メーカーと違ってユニーク。全国のオートバックスやネットで購入が可能です。

glafitバイク GFR-01は「二輪ノンユーザー」がターゲットです。筆者も原付免許を持っていますが、今は原付バイクを所有していません。原付は怖いなと思うところがあるのですが、GFR-01は見た目が自転車みたいで足がつきますし、ペダルがこげるので安心感あります。モペッド(ペダル付の原動機付自転車)という乗り物に近く、さらに折り畳みも可能。見た目もおしゃれで、価格も手ごろです。

「グラフィット×ヤマハ」2020年春ごろ発売

グラフィットとヤマハはこの「GFR」シリーズをベースとした派生モデルを開発して、2020年春ごろの販売を計画しています。

日本の二輪メーカーの売上の大半はアジアです。しかし所得の向上や環境・安全意識の高まりなどで、先行きは暗いと言われています。

いっぽうで環境や健康意識の高まりと共に自転車は注目を集めていますが、日本の自転車産業を明るいとみる人は少ないようです。

そんな中でグラフィットとヤマハの活発な動きは注目に値します。

視点を変え、自転車や原付バイクを新たなモビリティとしてとらえてみる

自転車、原付、さらには車いすなど、軽自動車未満の簡便で廉価な乗り物たち。これらについて、道路交通法など関連する法律やルールの中で少し違った見方をして、新しい使い方の提案をするのはどうでしょうか。モータリゼーションの中で長年に渡り凝り固まった法律やルールも、現代の社会の実情に応じて見直すことも重要です。

例えば終戦直後の日本で、自転車に原動機(エンジン)を載せた簡易なモペッド、原動機付き自転車(原付)が一気に普及しました。2輪・4輪メーカー「ホンダ」の始まりもそこからでした。

自動運転やMaaS普及の前に、いま出来ることも考えよう

この連載でも度々ご紹介している自動運転やモビリティアズサービス(MaaS)などが、明日すぐに実生活の問題を解決してくれるわけではありません。

人口密度の低さや財政難といった問題を抱える地域では、最寄り駅から目的地までや高齢者・子どもの移動手段の問題は非常に深刻ですが、問題を解決してくれるはずの最先端テクノロジーや新しいサービスの恩恵も、現時点では受けにくい状態にあります。ここに生活者や社会のニーズがあり、新しいマーケットになるポテンシャルがあるわけです。

今すぐ活用出来て、しかも比較的廉価な電動アシスト自転車や電動スクーターなどは、その受け皿として最有力候補ではないでしょうか。

電動アシスト自転車や電動スクーターが持つ未来の可能性を追求したい

「規制が厳しくなっている中、エンジン車がだんだんなくなる過程にあります。原動機が無くなる世界に、ヤマハ PASのような電動アシスト自転車、あるいは電動スクーターにどのような可能性があるのか。またそれ以外に可能性があるか追求したい。老舗となったヤマハでは、若いグラフィットほどスピーディには動けない」とヤマハの執行役員MC事業本部長の木下 拓也氏。これからヤマハの身の振り方を模索していることがうかがえます。

グラフィットの鳴海氏はGFRの商品企画について「GFRは新しいものではありません。モペッドは昔からあります。モペッドはエンジンですが、グラフィットはそれを電動にしたわけです。日本の道交法の縛りのある中で、法律に合わせて、使い方の提案をしたら、何となく一般の方が新しいと思ってくれました」と説明します。

2020年春ごろに販売を計画しているGFRの派生モデルは、グラフィットのブランドで販売をする予定です。ヤマハは売り方についても、老舗の固定観念にとらわれず、ユーザーファーストで考える鳴海氏の自由な発想に期待しています。

法律を変えてマーケットを変える!?

その派生モデルのマーケットの大きさについて、グラフィット社のCEO、鳴海 禎造氏は「法整備上、普通自動車免許か原付以上を所持している方が対象となるので、4000~5000万人のマーケット規模があると言っていいかもしれない」と言います。

またヤマハの木下氏は「日本だけではなくグローバルにみると、Eバイク(アシスト付き自転車)もしくはEモペッドの市場ができてきていることは間違いありません。欧州では大きく伸びています。今見ている市場と、新しい規制や新しい技術によりガラッと市場が変わるポテンシャルを感じています。日本では20万台まで原付は減少していますが、規制が変わるとガラッと市場が変わるでしょう。ASEAN、インド、ヨーロッパにおいても同様です。規制を乗り越えられるか、乗り越えられないか。もしくは規制によってプレーヤーが変わるのか大きな変化がこれから起こると思います」と法律も変えてマーケットを作っていく姿勢であると意気込んでいます。

グラフィットは二輪の世界だけを見ている訳ではなさそうです。鳴海氏が生活者のニーズをくみ、どのような新しいモビリティを誕生させ、日本の産業を変えていくのか楽しみです。

[筆者:楠田 悦子/撮影:楠田 悦子・YAMAHA]

「glafitバイク GFR-01」公式動画

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楠田 悦子
筆者楠田 悦子

「暮らしや社会をより"心豊か"に」をテーマに、新進気鋭のモビリティジャーナリストとして活躍中。 欧州生活、バックパーカー、NGOなどの経験を基に、クルマ、鉄道、バス、自転車、飛行機‥身近な人やモノの移動やその手段の進化に着目。暮らしや社会の問題を考察したり、新たな価値を提案するなど、具体的にアクションをとることがライフワークになった。自動車業界紙、(株)自動車新聞社の記者出身で、モビリティビジネス情報誌「LIGARE」の初代編集長。国や自治体の検討会委員なども務める。記事一覧を見る

監修トクダ トオル (MOTA編集長)

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