セレナe-POWERは人気のMクラスミニバンに遅れてやってきたハイブリッドの大本命か

セレナのフルハイブリッド”e-POWER”はクラスTOPの低燃費26.2km/L

人気ミニバンの日産 セレナに”本格的な”ハイブリッドモデル「セレナe-POWER」が追加された。クラスTOPの低燃費26.2km/L(JC08モード燃費)を誇る。価格は296万8920円から340万4160円まで。

セレナにはこれまでもSハイブリッド(スマートシンプルハイブリッド)という名称の簡易な”マイルド”ハイブリッドの用意はあった。しかし本格的な”フル”ハイブリッドを持つ他社ミニバンに比べ燃費性能は明らかに劣り、最大でも17.2km/L(JC08モード燃費)。これはライバルのノーマルガソリンモデルとほぼ同等という数値だ。

全長約4.7m、全高1.8m超、車重約1.7トンという8人乗りの巨大な箱型ボディだから、17.2km/Lでも十分に低燃費だが、ホンダ ステップワゴンスパーダハイブリッドは25.0km/L、トヨタ ヴォクシー/ノア/エスクァイアハイブリッドは23.8km/Lと、それぞれJC08モード燃費で20km/Lを大きく超え、コンパクトカー並みの数値をたたき出しているのも現実だ。

ちなみにオートックワンの人気記事カテゴリのひとつである「燃費」コーナーでも各モデルを実測していて、ステップワゴンスパーダハイブリッドの実燃費は19.7km/L、ヴォクシーハイブリッドの実燃費は18.2km/L(※夏季に計測)をそれぞれ記録している。そしてセレナSハイブリッドで測った実燃費はといえば、13.9km/Lに留まっていた。

というワケで、ちょっと遅れてやってきたセレナのフルハイブリッドモデル、セレナe-POWER。2018年2月28日水曜日、月末の横浜・日産グローバル本社ギャラリーにて発表イベントが行われたので、その模様をお届けする。

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日産が誇るEV(電気自動車)技術を最大限に有効活用

発表会に登壇した日産自動車の専務執行役員(日本事業担当) 星野 朝子氏は『e-POWERは2016年秋に新型ノートへ初搭載され、以来爆発的なヒットを続けている』と紹介。標準モデルでは2.0リッターエンジンのセレナだが、セレナe-POWERではそのノートe-POWERと同じ直列3気筒の1.2リッターというかなり小排気量なパワートレインが搭載される。しかもエンジンは直接駆動させず、バッテリーへ電気を蓄えるための”発電機”としてのみ使われ、バッテリーからの電力でリーフ由来のモーターを駆動させる仕掛けとなっている。

星野氏はe-POWERの採用で『電気自動車同様のストレスないスムースな走りや静粛性、ワンペダルの「e-POWER Drive」で、誰をも魅了する感動の走りが実現した』と強くアピール。ミニバンのフルハイブリッドでは最後発となったが、むしろセレナe-POWERは最先端を行く技術であることを暗に示していた。

また、星野氏が『セレナユーザーの2台に1台が選んでいる』と胸を張ったプロパイロット(高速道路 同一車線自動運転技術)も同様にセレナe-POWERにも設定される。EV技術と自動運転技術という、いま日産が最も推す2つの先進性を兼ね備えるモデルとなった。

セレナe-POWERの先進技術や価格情報、ライバル車との比較など、詳細がもっと気になる方は、渡辺陽一郎さんの新型車解説でじっくり紹介しているから併せてチェックして欲しい。

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初の公道試乗で実感! セレナe-POWERが手に入れたのは燃費性能だけにあらず

発表会場では試乗車も用意され、横浜・みなとみらい地区を発表されたばかりのセレナe-POWERで周回することが出来た。

セレナe-POWERには、ドライブモード切替スイッチが備わる。

ノーマルのほかにSモード(スポーツではなく”スマート”モード)とECOモードを用意。ノートe-POWER同様の特色だが、SとECOはアクセルを戻した際の回生ブレーキを強めにかけることで、”ワンペダル”の加減速も可能となっている。

さらに面白いのがチャージモードとマナーモードの存在。チャージモードで積極的に充電し、深夜や早朝の住宅街などでは”マナーモード”で静かに走ることが出来る。要はEV走行モードなのだが、e-POWERといい最近の日産はネーミングの仕方が上手い。ちなみに9割の充電が完了した状態で、EV走行は約2.7km出来るとのことだった。

ごく短時間のドライブだったが、思った以上に”発電機”の音も抑えられていて静かだなあ、が第一印象。アクセルを踏み込めば静かにぐいぐいと走る感覚が心地良い。まさにEVのリーフに近いフィーリングが得られ、なかなか楽しい。

これまでのセレナSハイブリッドはその点、燃費への配慮もあってか出足は特にゆったりした性格だったから、燃費以上に実は走りの性能向上こそがe-POWER化の大きなアドバンテージなのでは・・・と感じた。

見晴らしのよさや開放感は歴代セレナの美点

今回のe-POWER追加とは関係ないことだが、従来モデル、いや先代・先々代セレナの頃から乗るたびに感心することがある。それは左右・前方の窓がみなとても大きく開放的なところ。

日産が以前より搭載し進化を続けるアラウンドビューモニターももちろん便利だが、そもそもの視界性能もとっても大事で、着座位置の高さと相まって、大きな車体を感じさせない取り回しの良さを実感させてくれる。実はこれ、ライバルモデルに勝るセレナの美点だと思う。

またドライブなどでの見晴らしも前席・後席とも抜群だから、景色の良いところを走るのも気分が良いという効果も。

もちろん背が高いことは走りの面では決してプラスではないが、グラついたりドタバタする感じも従来モデルより軽減されている印象。バッテリーが追加され車両重量も増したが、重心が低くなり、従来型より足回り自体も強化・改善されたことが功を奏しているようだ。

走りの快適度も増した開放感あふれるセレナe-POWERで、家族と海へ山へといっしょに出かけたら、さぞや楽しいドライブになるだろうなあ・・・思わずそんな想像もしてしまうのだ。きっと全国の日産ショールームでも多くのユーザーにそう想わせるからこそ、セレナはファミリー層を中心に根強い支持を集め続けているのだろう。

e-POWER化で失ったのは乗車定員数|8名乗りは設定なしで7人乗りキャプテンシート仕様のみ

さてここで、従来モデル(もちろん今後も併売される)のSハイブリッドモデルとe-POWERの違いを確認しておこう。

まずもっとも大きな違いは、乗車定員が異なること。Sハイブリッドが8名乗車なのに対し、セレナe-POWERは今のところ7人乗り専用の設定だ。

セレナSハイブリッドモデルは、3人掛けの2列目シートを3分割し、中央部分の細長いところだけ前後に大きくスライドさせる「スマートマルチセンターシート」という機能がある。前に寄せれば運転席・助手席間のセンターアームレスト兼小物入れに。その際に2列目中央部に空間が出来るから、2列目と3列目のウォークスルーがそれぞれ出来るという、実用性重視なシートアレンジが可能となっている。

これに対し新しいセレナe-POWERは、運転席と助手席の床下に1.8kWhのバッテリーを収め、左右席の間にはコンソールトレイが備わるため、スマートマルチセンターシートが成立しない。標準車との差別化要素もあってか、セレナe-POWERの2列目シートには、全モデルとも左右独立・左右アームレスト付きのキャプテンシートを初採用した。そのため乗車定員は7名となる。

15インチの専用エアロアルミホイールが全車標準だが、大径ホイールの設定はなし

外観上は、e-POWER専用のブルーアクセントが各所に加わるほか、専用外装パーツも装着される。さらに空気抵抗にも配慮したe-POWER専用の15インチエアロアルミホイールも全車につく。

ただしエアロパーツなどが備わる人気のハイウェイスターシリーズや、新設されたばかりのプレミアムスポーツカスタム”e-POWER AUTECH”でもタイヤサイズは15インチのまま。ボリューム感を増したボディに対してちょっと足元が寂しく見えるのも確かだ。Sハイブリッド系のハイウェイスターでは16インチ、同じくSハイブリッド系のセレナ NISMOやAUTECHでは17インチの設定もある中、燃費性能にこだわるe-POWER系では採用が叶わなかったよう。

確かにタイヤの大径化は燃費への影響も大きい。しかし前述の通り、e-POWER化で低燃費のみならず、楽しい走りを生み出しているのも事実。いまのところ設定がないスポーツカスタム「セレナe-POWER NISMO」の追加にも期待したいところだ。

[Text:トクダ トオル(オートックワン編集部)/Photo:島村 栄二・NISSAN]

セレナe-POWERの主要スペック

セレナe-POWERの主要スペック
ハイブリッド(e-POWER)

グレード

セレナe-POWER ハイウェイスターV

駆動方式

2WD(FF)

トランスミッション

価格(消費税込)

3,404,160円

JC08モード燃費

26.2km/L

全長

4,770mm

全幅(車幅)

1,740mm

全高(車高)

1,865mm

ホイールベース

2,860mm

乗車定員

7名

車両重量(車重)

1,760kg

エンジン

直列3気筒 DOHC ガソリンエンジン+ハイブリッドシステム(e-POWER)

排気量

1,198cc

エンジン最高出力

62kW(84PS)/6,000rpm

エンジン最大トルク

103N・m(10.5kgf・m)/3,200~5,200rpm

モーター最高出力

100kW(136PS)

モーター最大トルク

320N・m(32.6kgf・m)

動力用主電池

リチウムイオン電池

燃料

無鉛レギュラーガソリン

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トクダ トオル(MOTA)
筆者トクダ トオル(MOTA)

昭和44年生まれ。週末は愛車に乗って(時に鉄道に乗って)家族とともにドライブやキャンプを楽しむ1児のパパ。自動車メディアに携わるようになってから15年余りが経過。乗り換えに悩むユーザーの目線に立った平易なコンテンツ作りを常に意識し続けている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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