アウディ、燃費・排出ガス調査における不正事案の調査結果を報告
アウディ、不正事案の調査結果を国交省に提出
アウディジャパン株式会社は、国土交通省からの調査要請「燃費及び排出ガスの抜取検査の不正事案を受けた確認の実施等について」(国自審第674号)に基づき、生産工場にて完成検査時に実施される燃費・排出ガスの抜取検査に関する調査結果を本社より入手し、国土交通省に9月28日に提出した。
主な報告内容は以下のとおり。
1.調査結果
■燃費・排出ガス検査データ及び試験環境(測定条件)の書き換え事案は無かった。
■検査実施時に指定された速度の許容範囲を超えて走行したために、本来無効と判断すべき事例が確認された。
いずれの場合も測定結果は正規に測定された他の数値と同等の範囲内に入っており、燃費・排出ガス値への影響は無かった。
2.発生原因
測定結果を精査した後にデータを手動でシステムに伝送する際、プルダウンメニューで「無効」を選択しなかったために起きた人的ミスが原因であった。
3.再発防止策
従来より実施している対策
今回の調査対象期間以前より既にシステム上では、すべての測定結果や走行ログを変更出来ないようロックが掛かっており、書き換えが出来ない仕組みとなっている。
今回実施済みの対策
1.複数のオペレーターによる結果判定を常時行い、データベースシステムへの伝送後の有効・無効の選択ミスを防止する。
従来は燃費値や排ガス値等の測定データのみを複数のオペレーターでチェックしていたが、走行ログを含めたすべてのデータを複数のオペレーターでチェックする仕組みとした。(2018年8月6日週より実施済み)
2.走行ログを含む測定結果を自動的にデータベースに伝送するシステムに変更した。
これにより、オペレーターが判定に集中出来るようプロセスを簡略化した。(2018年8月27日週より実施済み)
恒久対策(今後)
1.規定された速度の許容範囲を超過(速度トレースエラー)して走行した際に、システム上で測定結果そのものを自動的に無効と判断し記録する機能を追加していく。
今回の事案発生を真摯に受け止め、ドイツ本社でのプロセスを再点検し改善に向けた取り組みを開始しており、今後このような事案の発生が二度と無いよう、再発防止に努めていくとしている。
ドイツ本社における燃費及び排出ガス抜取検査に関する調査概要
調査対象工場
1.インゴルシュタット工場(以下車種を除くすべてのアウディ車の抜取検査を実施)
2.ネッカースウルム工場(同工場で生産したアウディ A6、A7、A8の抜取検査を実施)
3.エムデン工場(メキシコ工場製アウディ Q5の抜取検査を2017年式車両より実施)
調査対象期間
2014年7月から2018年7月の間に実施された測定結果について調査を実施(2015年式~2018年式)
調査方法
上記期間に実施した排ガス抜取検査データ全692件について詳細結果を調査
1.試験及び車両条件設定のログデータが規定された値かどうかを精査。(油温、試験室温、湿度、シャシーダイナモメーター負荷設定、速度トレースエラー、機器較正記録等)
2.抜取検査データを一括管理する中央データベースにアップロードされた燃費・排ガス値が管理基準を満たしているかをチェック。
調査結果及び詳細
試験及び車両条件設定のログデータの精査結果
1.今回の調査対象期間以前より既にシステム上では、すべての測定結果や走行ログを変更出来ないようロックが掛かっており、燃費及び排出ガス報告データに対する不正な書き換えの事実は無かった。
2.試験条件設定及び車両条件設定のログデータに条件逸脱の事実は無かった。(油温、試験室温、湿度、シャシーダイナモメーター負荷設定、機器較正記録等)
3.速度トレースエラーがあったにも関わらず、測定結果を有効として記録していた事案が測定した692件中、37件の車両で存在した。
4.うち、1回の測定で発生した速度トレースエラーの累積時間は最大で5.55秒であった。
5.速度トレースエラーがあったにも関わらず、有効としていた事案があった車種は以下の通りだ。
・2018年式:アウディ A7、RS5
・2017年式:アウディ TT、A1
・2016年式:アウディ A7、A5、A4、A3、A1、S3、SQ5、Q3
・2015年式:アウディ A8、A4、A1、S1、S3、RS5、Q5、Q3
6.速度トレースエラーのため、規定に則り無効処理した件数は同期間内で92件あった。
これらは692件の外数であり、改めて追加測定を実施している。
燃費・排ガス値が管理基準を満たしているかのチェック結果
速度トレースエラーがあった37件の測定結果について燃費値、排気ガス値を調査した。
1.燃費値は、速度トレースエラー分を除いたデータ中、最も悪い数値でも基準値を上回っており、また速度トレースエラーが発生したデータでも正規に測定された他の数値と同等の範囲内に入っていた。
2.NMHC、CO、NOxの排気ガス測定結果も、速度トレースエラー分を除いたデータ中、最も悪い数値でも基準値を下回っており、また速度トレースエラーが発生したデータでも正規に測定された他の数値と同等の範囲内に入っていた。
これらにより、速度トレースエラーがあった場合でも、燃費・排出ガスの実測値への影響は無かったと判断する。
各工場における測定プロセス説明
1.各工場内の検査施設では週次計画に基づいて、各国・地域ごとに異なる様々な走行モードでの抜取試験を順次行っていく。
2.抜取率に関する社内規定は型式ごと、生産台数規模ごとに以下の通りである。
・1~500台:3台
・501~1,000台:6台
・1,000台以上:12台
3.テストドライバーは測定試験が始まると、車両横の画面に表示される走行曲線に沿ってシャシーダイナモメーター上で加減速を繰り返す。
4.指定された速度の許容範囲を超えると、画面中のカーソルが黄色(または赤色)に変わり、ドライバーは速度トレースエラーを認識することが出来る。(この時、エラー回数のみ表示され、累計逸脱時間は表示されない。)
5.速度トレースエラーを認識した後もドライバーは途中で測定を中止することなく、最後まで走行を行う。これは燃費・排ガス抜取検査とは別に開発目的でのデータ収集のためである。
6.測定結果は従来、オペレーターが手動で中央データベースに伝送した上で、データ内容(測定結果、及び走行ログ)を確認して有効・無効判定を行っていた。
その判定結果に基づき、システム画面中のプルダウンメニューで「有効」または「無効」を選択してデータ保存を行っていた。
オペレーターへのヒアリングの結果、今回発見されたミスはここで「無効」が正しく選択されなかった人的要因によるものであることが判明した。現在は自動的にデータを伝送するシステムに改め、オペレーターが判定に集中出来るようプロセスを簡略化している。(2018年8月27日週より実施)
7.測定結果が無効と判定された場合、前週の測定結果を踏まえて毎週月曜日に担当マネジャー主導で計画策定会議を行っており、4週間以内を目標に追加測定を行うこととしている。
改善の取り組み
1.2017年第2四半期から第4四半期に掛けて段階的に数々の改善を実施。規定内容を詳細に見直し、現場への作業指示やトレーニング、システムの改善に反映した。
その結果、2017年式から2018年式に掛けて大幅な改善が見られている。
加えて今回すでに実施済みの改善対策や速度トレースエラーして走行した際にシステム上で測定結果そのものを自動的に無効と判断し記録する恒久対策により、不適切な処理の撲滅に向け、全社を挙げ取り組んでいく。
2.速度トレースエラーによる無効判断により抜取率が規定を満たさなくなった型式については、早期に追加測定を行っていく。
3.今回の事案を踏まえ、各生産工場内における完成検査全体の規定とその実施状況を点検した結果、特に問題点は検出されなかった。
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