メルセデス・ベンツ TecDay E-Drive 試乗レポート(2/3)
- 筆者: 大谷 達也
- カメラマン:メルセデス・ベンツ日本
メルセデスが「今も」燃料電池の研究・開発を続ける理由
なぜ、メルセデスは再び燃料電池に脚光を当てたのだろうか?
同社のエンジニアのひとりは「長年にわたって研究してきたのだから、今後も開発を続けていくのは当然」と語ったが、その背景には、燃料電池が自動車の次世代動力源として確固たる地位を築くと彼らが予想していることも強く影響しているはずだ。
今回、メルセデスが発表した資料のなかに「2050年のヨーロッパにおける自動車動力源予想」があった。
そこには、いまから40年後のヨーロッパでは、プラグイン・ハイブリッドとEVのシェアが35%ずつとなるいっぽう、燃料電池車も全体の25%を占めると示されていた。つまり、この3つが次世代動力源になるとメルセデスは予想しているのだ。
反対に、現在主力の内燃機関は5%まで減少するとの見通し。したがって、メルセデスがいまも燃料電池の研究・開発を積極的に続けているのは当然のことといえるだろう。
燃料電池にはどんなメリットがあるのか?
走行中に二酸化炭素を発生しないことは、自動車の次世代動力源として大きなメリットである。では、同じように二酸化炭素を排出しないEVとの比較ではどうか? 燃料電池車は航続距離が長く“燃料補給”に長い時間を要さないことが、EVと比較した際の大きなメリットといえる。
たとえば航続距離で言えば、EVの200km前後に対して燃料電池車では400kmほどで、ガソリン車に近いレベルが期待できる。
また、水素のチャージに必要な時間も2~3分と、こちらもガソリン車と変わらない。家庭用電源で充電すると一晩、急速充電でも30分程度はかかるEVとは大違い。
つまり、燃料電池車への乗り換えは、ガソリン自動車を使い慣れた我々にとって、あまり違和感のないものと予想されるのだ。燃料電池車にEV以上の期待を抱いてしまうのは、筆者ばかりではなかろう。
それでもやっぱり問題になりそうなのがコストである。
今回の取材でも、将来的には燃料電池車がEVと同等かそれより安くなると予想したエンジニアもいれば、逆のことを唱えるエンジニアもいて、判然としない。
きっと前提となる生産台数や技術の発展度合いによって答えは変わってくるのだろうが、それにしても、そう簡単には安くなりそうにないとの感触は掴むことができた。
いささか前置きが長くなったが、いよいよ試乗することにしよう。
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