マツダ RX-8 試乗|今だから振り返るロータリーピュアスポーツの魅力

【ロータリー+RX-8】は一つの完成形

今も昔もマツダを象徴するキーワードは「ロータリーエンジン」だろう。ロータリーエンジンはシンプルな機構なので軽量でコンパクト、回転バランスに優れる上に高出力…と言った特性を持つユニットだが、その一方で燃焼室形状に起因する不完全燃焼による燃費の悪さや排ガス対応がネックだ。

更にレシプロエンジンは世界中の自動車メーカーで研究開発されているが、ロータリーエンジンを開発・量販できたのは唯一マツダのみという孤高の存在である。開発のスピード感に関してはレシプロには到底かなわない。さらに、常にベンチマークが自分自身でありつつ、目指すべき次なるゴールも自ら設定しなくてはならない厳しさがある。

しかし、マツダは1967年にロータリーエンジンが実用化して以降、オイルショックやバブル崩壊、燃料高騰など色々な苦悩を乗り越えて着実に進化させてきた。

耐久性に関しては1991年のル・マン24時間日本車初優勝をはじめとする数々の耐久レースで実証されているし、燃費もデビュー直後から考えれば大きく向上している。しかし、2012年にRX-8が生産終了して以降、次のロータリーエンジン搭載モデルはまだ誕生していないが、今も多くのクルマ好きが復活を願っている。

そこで今回、編集部からのお題は、「今ロータリーエンジンに乗ったらどのような印象なのか?」である。実はマツダにはメディア向けにRX-8の広報車(2012年式・スピリットR)を、今もメーカーの手によってシッカリと整備された状態で用意されている。つまり、次世代ロータリー搭載車が登場するまでは、この子が繋ぐ……と言うことなのだろう。

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古さを感じさせないロー&コンパクトなスタイル

まずエクステリアだが、RX-8が登場したのが2003年、すでに15年が経過するが古さはあまり感じない。

フロントミドシップレイアウトでコンパクトなキャビンのスポーツカースタイルながら、センターピラーレスの観音開き式のフリースタイルドアを採用することで大人4人がシッカリ乗れる実用性を確保させたパッケージングは、今でも十分通用する。

ちなみにボディサイズ(全長4470×全幅1770×全高1340mm、ホイールベース2700mm)は、現在のモデルでは実現が難しい低いボンネットフードも相まってかなりコンパクトに見えるだろう。

機能的で人間中心のインテリア

インテリアはシンプルなメーター周りに高めのフロアコンソール、そして専用レカロシートなどによりスポーツカーらしいコクピットに仕上がっているが、スイッチ類や素材の質感などはやはり時代を感じさせる部分も。

ステアリングはチルトのみでテレスコ機能なし/シートは座面調整なしだが、ドライビングポジションはスッと自然に決まる。強いて言えばトランスミッションの張り出しが多いため左足まわりが若干タイトだが、シフトレバーの位置やペダルレイアウトなどを含め、新世代商品群がこだわる「人間中心のドライビングポジション」は、当時から実現していたことが再確認できた。

自然と踏み込みたくなる感覚こそロータリーの魔力

短いストロークでカチカチと動くシフトレバーを1速に入れてスタート。当時は「ロータリーにしては低中速トルクあるな」と感じたRENESISこと「13B-MSP」だったが、ダウンサイジングターボやモーターアシストに慣れてしまった体には「やはり中低速トルク薄いなぁ」と(笑)。ただ、エンジンの美味しい所を探しながら最適なギアを選んで走らせる感覚は、ドライバーとクルマの一体感を高めているのも事実で、これはこれで楽しい。

元々、NAロータリーはパワフルさよりも気持ち良さを重視していたが、9000rpmまで一気に吹け上がるレスポンスの良さや回すほどに力強さが増していく特性は当時とあまり変わらず。恐らくワインディングなどでは7000~7500rpmくらいでポンポンシフトしていったほうがリズムよく走れると思うが、なぜか、意味もなくレブリミット付近で「ピー」と鳴るブザーを聞きたくなってしまう。

今も色褪せないピュアスポーツのハンドリング

RX-8のハンドリングだが、シャシー剛性やビルシュタインサスペンション+19インチタイヤの味付けは今でも十分通用するレベル。重量バランスに優れる素性の良さに加え、路面に吸い付くようなコーナリング性能、スタビリティとコントロール性のバランス、ドライバーを裏切らない安心感、想像以上にしなやかな快適性などは、最新の86/BRZにも決して負けていない。

当時は初期応答性が高くキビキビした操舵フィールに感じていたが、今乗ると逆に素直で自然に感じたことである。経年劣化がいい方向に働いたのか!? 時代が追いついたのか!? それとも筆者の運転スキルが上達したのか!? 

ちなみにブレーキ性能はクルマの古さを感じやすい部位の一つだが、RX-8は今回一般道を中心に走らせた限りは特に不満を感じることはなかった。

かつて乗ったモデルに今改めて乗ると「思い出のままのほうが良かった……」と思うクルマが多いのだが、今回試乗してみてRX-8の魅力は当時とほとんど変わっていなかった。

次世代ロータリーエンジンと新たな展開に期待

実は筆者が今回の試乗の前にRX-8に乗ったのは6年前、当時某自動車雑誌の編集部に所属していた時に、デビュー直後のトヨタ86/BRZとのライバル比較だったのを思い出した。「FRレイアウト」、「4人乗れるスポーツカー」、「独創的なパワーユニット」、「速さよりも気持ち良さを重視」と共通項は多い。

そう思うと、2012年に華々しくデビューした86/BRZに対して、同時期に生産終了と……真逆の運命を辿ってしまったのは残念だが、あの時ダラダラと作り続けていたら、今のマツダはないわけで……非常に悩ましい。

2015年の東京モーターショーでマツダは「RX-VISION」と言うコンセプトカーをお披露目したが、パワーユニットは次世代ロータリーエンジン「スカイアクティブR」を搭載と発表した。あれから3年が経過したが、展開は解らず……。また、マツダの次世代技術ロードマップにロータリーの記載がないのも気になる所だが、関係者によれば開発自体は継続中のようだ。

一説ではロータリーエンジンは発電用エンジンとして復活と言う話も聞かれるが、個人的には夢のロータリーエンジンを実用化させたマツダが、夢の技術(=スカイアクティブXで採用される自己着火技術)を用いてロータリーエンジンを復活、それを搭載するのはフラッグシップスポーツ……と言うストーリーを期待したい所だ。

[レポート:山本 シンヤ/Photo:小林 岳夫]

マツダRX-8 スピリットR 主要スペック

マツダRX-8 スピリットRの主要スペック
車種名 マツダRX-8

グレード

スピリットR

駆動方式

後輪駆動(2WD)

トランスミッション

6速MT/6速AT

価格(消費税込)

[MT車]325.0万円/[AT車]312.0万円

10・15モード燃費

[MT車]9.4km/L/[AT車]9.0km

全長

4,470mm

全幅(車幅)

1,770mm

全高(車高)

1,340mm

ホイールベース

2,700mm

乗車定員

4名

車両重量(車重)

[MT車]1,350kg/[AT車]1,370kg

エンジン

直列2ローター・ガソリンエンジン

排気量

654cc×2

エンジン最高出力

[MT車]235ps(173kW)/8,200rpm/[AT車]215ps(158kW)/7,450rpm

エンジン最大トルク

[MT車]216N・m(22.0kgf-m)/5,500rpm/[AT車]216N・m(22.0kgf-m)/5,500rpm

燃料

無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)

車両本体価格(2011年11月当時)

[MT車]325.0万円/[AT車]312.0万円

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

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