マツダ CX-5 SKYACTIV-D(クリーンディーゼル) 試乗レポート/渡辺陽一郎(4/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
CX-5では装着したい!「セーフティクルーズパッケージ」
2WDと4WDを乗り比べ、4WDの効用も把握できた。4WDは雪道や未舗装路で強いが、舗装された峠道などを走る時の安心感にも結び付く。
例えばハンドルを1回転近く回す急なカーブを曲がる時、2WDでは高い駆動力によって内側の前輪が空転する場合がある。この時、4WDであれば電子制御される多板クラッチの締結力が強まり、後輪の駆動力配分を高めて走行安定性を確保する。
雨天の高速道路などでも前後輪に微妙な回転差が生じ、4WDの機能を生かせるから、総じて走行安定性が向上する。また、不意の降雪に見舞われた時、SUVが登坂路で立ち往生したら情けない。210mmの余裕ある最低地上高も、4WDとの相乗効果で走破力を高める。
4WDの価格は21万円。安い部類に入るので、積極的に選びたい。
もうひとつ装着したい機能が、セーフティクルーズパッケージだ。3つの装備を組み合わせたメーカーオプションで、特に「スマート・シティ・ブレーキ・サポート」に注目したい。フロントウィンドウの内側にレーザーセンサーを装着し、追突を防止するものだ。
作動するのは時速4~30kmの範囲。時速20km以下なら完全に停止する。渋滞など、ゆっくり走っている時の追突に備えた機能だ。レーザーレーダーは雨や霧でも検知するが、CX-5の検知範囲は約10mだから、時速30km以上では作動しない。歩行者や自転車も検知することができない。
その代わり価格が安く、斜め後方の車両を認識して警告する「リア・ビークル・モニタリングシステム」「クルーズコントロール」と併せて7万8,750円に抑えられた。
注意したいのは、前述のようにレーザーレーダーの検知範囲が短いため、クルーズコントロールは従来型の単純に定速走行できる機能に留まるということだ。車間距離を制御して追従する機能はない。
ならばクルーズコントロールを省いて5万円以下にならないのか。開発者の返答は「もっと安く付けられます」。それならば、スマート・シティ・ブレーキ・サポートとリア・ビークル・モニタリングシステムも全車に標準装着して、量販効果に基づき価格アップを3万円程度に抑えて欲しい。価格据え置きの特別仕様車を設定する手もある。
それにしても、CX-5は久々と言える程、実に興味深いクルマだった。20Sのガソリンエンジンは軽快な運転感覚が楽しく、XDのディーゼルは奥の深い魅力を秘める。
一般的なディーゼルの使い方は高速道路の長距離移動だが、2,000回転付近を積極的に使えば渋滞時でも退屈しない。ハンドル/アクセル/ブレーキは、ドライバーの操作に対して忠実に反応し、車両との一体感が味わえる。さまざまな機能に気を配り、1台のクルマとして整合性を持って結実させた。
唯一、難点を挙げるなら、1,840mmの全幅と良好とはいえない斜め後方の視界がある。最小回転半径も5.5mだから小回り性能もいま一歩。主力の市場は、SUVとあって相変わらず北米になるからだ。
となれば、日本ユーザーとしては、ひとまわり小さな「CX-3」の登場を望みたい。エンジンは1.6リッタークラスのさらにエコ度を高めたディーゼルはどうか。良いクルマに乗ると、妄想もどんどん膨らむ。
日本のユーザーを見据えた今後の発展にも期待したい。
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