いま最も人気のモータースポーツ「スーパーGT」ってどんなレース?

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スーパーGTとは?人気の秘訣は・・・

いま日本で最も人気のあるレースが「スーパーGT」。このコラムでは、その魅力についてわかりやすく迫って行こう。

スーパーGTの起源は、1993年に開催された「全日本GT選手権レース」。これが翌年「全日本GT選手権」に名称変更されて(JGTC)、2005年から現在の「SUPER GT」となった。つまり黎明期から数えると、24年も続いている超・超・長寿カテゴリーなのだ。

それまで日本で最も人気があったレースは、「全日本ツーリングカー選手権」。これは'85年~'93年まで開催されたレースで、FIA(国際自動車連盟)が定めたグループA規定に則り排気量別の3クラスで開催された。

そのトップカテゴリー「ディビジョン1」で一時代を築き上げたのは、あの“R32”日産スカイラインGT-R。それまで無敵を誇っていたフォード・シェラを打ち破り、同世代のライバルであるトヨタ・スープラをものともせず破竹の快進撃を続けた伝説は、レースファンならずとも聞いたことがあるはずだ。

そしてディビジョン2は直列4気筒時代のBMW M3が席巻し、ディビジョン3では「シビック VS カローラ」の名勝負が繰り広げられた。

グループAが人気だった理由は、「連続する12ヶ月に2500台以上生産された4シーター以上の車両」でなくては参加できない、という規則があったから。改造範囲もグループB規定より狭かったから、レースカーも市販車の面影が強かった。簡単にいうと「みんなが買えるクルマ」が激しく闘ったことで盛り上がったのだ。

「本気を出しすぎて」グループA衰退?

そんなグループAが衰退したのは、前述の通りグループAレースを睨んで開発されたGT-Rが強すぎたことがひとつ。「そんな市販車、ウチでは作れません!」と各メーカーはドン引きしたわけである。 またヨーロッパでは自然吸気の2リッターエンジンを搭載する4ドアセダンのレースへと移行。バブル経済が弾けた日本でも、費用の掛かりすぎるグループAからニューツーリングへと流れが移り、'94年からこれを「全日本ツーリングカー選手権」(JTCC)として踏襲したのだが…。「これならウチでも勝てる!」と踏んだ各メーカーでの開発競争が激化して、やっぱりこれも'98年に消滅してしまった。

そんなとき、ジミ~に始まったのが、全日本GT選手権だった。 始まったばかりのGT選手権は「グループAマシンのお古」と「チューニングショップが作ったレーシングカー」が走るような、まだまだノンビリとした一面を持っていた。 しかし500psを発揮するマシンを「GT1」、300psを発揮するマシンを「GT2」として、年を追うごとに各メーカーとプライベーターが、徐々に参戦するようになり、トップカテゴリーへと成長したのである。そしてこれが現在の「GT500」クラスと「GT300クラス」の源流となっている。

いま最もアツイのは“GT300”

そんなスーパーGTのGT300クラスは、いま世界で最も華やかでエキサイティングなカテゴリーとなった。その主流を占めるのは、世界のプレミアムメーカーがレース用に作り出す「FIA-GT3」車両たちだ。

これはいま販売されている2ドアGTカーをベースに、自動車メーカー自身が製作してカスタマーへと販売するレーシングカー。たとえばAudi R8 LMSや日産 GT-R NISMO GT3などは市販車と同じエンジンを搭載しているが、メルセデス AMG GT3などは、本来搭載される4リッターV8ツインターボではなく、その実績やカスタマーへのコスト節約を考え'15年まで活躍したSLS AMG GT3の6.4リッター V8を搭載するなど、各メーカーによって異なるアプローチが取られている。

これを規定するのはヨーロッパのSROモータースポーツ・グループで、彼らはヨーロッパで開催される「ブランパンGTシリーズ」の主催者。日本のスーパーGTでは、そのSROが使う性能調整(BoP:バランス・オブ・パフォーマンス)を採用しているが、もとを辿ればそれも、日本のスーパーGTが強く影響していると筆者は思う。「性能調整」や「ウェイトハンディ制」については、次回以降で詳しく説明しよう。

またスーパーGT由来のレーシングカーとしては、「JAFーGT」と「JAFーGT MC」(マザーシャシー)がある。そして本来スーパーGTは、市販車をベースに各チームが独自に作ったレーシングカーで、争われていた。

しかし長く続いた不況によって、5~6年ほど前からレーシングチームはマシンを思うように開発できない状況が続いていた。そして折しも2011年、ここにFIAーGT3車両であるBMW Z4で参戦した「グッドスマイル レーシング with TEAM UKYO」(ドライバーは谷口信輝/番場琢)が破竹の快進撃を重ね、遂にはシリーズチャンピオンを獲得。これを目にしたプライベーターたちが翌年からこぞってGT3車両を購入したことで、FIA-GT3の一大ブームが勃発したのである。つまり'11年は、GT300クラスの「FIA-GT3元年」だった言える。

話を元に戻すと、開発コストが高騰したJAF GTマシンは現在、メーカー系ワークスチームだけが走らせている状況。GT500クラスはトヨタ(LEXUS LC500)、日産(日産GT-R NISMO GT500)、ホンダ(NSXーGT)の3強で、全部で15台。GT300クラスはスバル(BRZ GT300)とトヨタ PRIUS GTが3台いるだけである。プリウスはaprというプライベートチームが走らせているが、市販車と同じくモーターを用いたハイブリッド構造となっているため、トヨタとの関係は深いはず。

そしてこの状況にスーパーGTの本質が失われることを危惧したGTAは「マザーシャシー構想」を打ち立てた。これは共通するカーボンモノコックシャシー(マザーシャシー)をベースに、エンジン、トランスミッション等を共用化したレーシングカーで、カスタマーは規定の範囲で自由に空力ボディを架装できる。

その狙いは車両開発コストの抑制。なおかつマザーシャシーはFIAーGT3よりも子細なセッティングが可能な純レーシングカーだから、日本のレーシングガレージの物作りや技術継承にも役立つ。そう、FIAーGT車両は見た目も派手で速く華やかだが、その実シャシーセッティングの幅は狭く、これを開発できるのはメーカーだけなのである。

そんなマザーシャシーは'15年から走り出し、昨年は遂に♯25 VivaC86がタイトルを獲得した。そして現在は3台のTOYOTA86と、1台のロータス・エヴォーラ、今年から参戦したTOYOTA マークXが走っている。少しずつではあるがその数が増えており、またそのレーシングカー然とした姿は美しい。

2017年5月GW、スーパーGT第2戦開幕

さて5月3日(水)/4日(木)の2日間で開催されたスーパーGT 第2戦は、ゴールデンウィーク前半ということもあり、述べ9万2100人が詰めかけ大盛況のレースとなった。

舞台は富士スピードウェイ。関東と関西を結ぶ富士では、年間を通して2回のレースが行われる。通常300kmのレースが基本となるスーパーGTだが、今回は500kmの長丁場。そして3スティントのレースでは、予想通り悲喜こもごものドラマが展開された。

予選を制したのは、開幕戦でも予選2位からの優勝を飾った♯4 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)。そして決勝ではその4号車が後続を引き離す形でレースを牽引するも、同じメルセデスでダンロップタイヤを履く♯11 GAINER TANAX AMG GT3(平中克幸)がこれを猛追するなど、序盤から激しいバトルが展開された。

2連勝をかけた“初音ミク”は・・・!?

ドラマが起きたのは60周目。第一スティントで追いすがっていた11号車を、引き離す形で4号車(谷口信輝)が快走、このまま「初音ミクの2連勝か!?」と誰もが予想するなかで、なんと左フロントタイヤがバーストしたのであった。幸いなことにマシンは自力でピットへ戻れたが、これで4号車は優勝争いから脱落。

そしてここで、レースを虎視眈々と狙っていたのは♯51 JMS P.MU LMcorsa RC F GT3(坪井 翔)だった。F3でも活躍するヤングタイガーは、4号車と入れ替わりでトップに立った11号車がピットインしてもそのままコースにステイ。しかも目の前に塞ぐ者がいなくなった10周を、素晴らしいペースで駆け抜けたのである。

最後のピットインを終えコースへと戻った51号車(中山雄一)は、11号車の前で線戦復帰。ニュータイヤが発熱しないアウトラップこそ11号車に迫られたが、その後はこれを引き離して優勝を飾った。

GT500クラスでは♯38 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明)が優勝を飾ったことで、レクサスはそのお膝元でダブル優勝。その力を遺憾なく魅せつけた第2戦となった。

[Text:山田弘樹]

▼富士スピードウェイで行われた第2戦の様子

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山田 弘樹
筆者山田 弘樹

自動車雑誌編集者としてキャリアをスタート。輸入車雑誌 副編集長、アルファ・ロメオ専門誌編集長等を経て、フリーランスのモータージャーナリストに。レース参戦なども積極的に行い、走りに対する評価に定評がある。AJAJ会員。カーオブザイヤー選考委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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