強いHonda愛ゆえのアツい<NSX論>/ホンダ 新型NSX 試乗レポート(2/4)
- 筆者: 河口 まなぶ
- カメラマン:茂呂幸正・Honda
世界のスーパースポーツと並んでも負けない強い存在感
実際に登場したホンダ新型NSXは、既にその姿を何年も前から見せていただけに新鮮味はなかったものの、それでも迫力は存分にあった。いかにもスーパースポーツらしいスタンスで佇み、その姿は初代の線が細い感じは微塵もなく、ボディ各部の情感をそそる抑揚や、造形そのものの厚みや彫りの深さで、世界のスーパースポーツと並んでも負けない存在感を醸し出していた。
スペックも世界のスーパースポーツに負けない最高出力581ps、最大トルクは65.9kgf-mのパワーソースが与えられている。
しかし、これまで文字数を費やした長い前置きからわかるように、この時点でもう新型NSXは、数あるスーパースポーツと同じ土俵に乗ろうとしている1台でしかない。
もっとわかりやすくいえば、アメリカのスーパーカー・マーケットで目立つ存在になろうという狙いがハッキリと見える。
最新のハイブリッドシステム、そして電子制御による異次元のコーナリング性能
それだけに我々が期待するような、現代のスーパースポーツの世界を根底からひっくり返して、フェラーリもポルシェもマクラーレンも思ってもみなかったような新たな価値観を含んだ、サムシングスペシャルを送り出したか・・・というと、残念ながらそうはなっていないのは明白だ。
救いは3モーターのハイブリッドが唯一、ホンダらしいかも?と思えるところ。これは少しだけ他とは違う土俵を作った感じがある。もっともハイブリッド自体は既にラ・フェラーリもポルシェ918も違う方式の、一応ハイブリッド的なものを搭載済みだ。
ならば前輪に2つ与えられたモーターを巧みに電子制御してトルクベクタリングを行ない、アクティブにヨーコントロールすることによる高いコーナリング性能・・・も、広義の考えとしては機械的なデフと電子制御の組み合わせで、ランエボ(三菱ランサーエボリューション)を筆頭に、最近では日産GT-Rでも行なっているし、トルクベクタリング系は最近多くのクルマが取り入れている。新型NSXのそれは、さらにそこからモーターを協調制御する他にない感じはあるものの、独自というよりはこうした技術の延長にある派生系といえるだろう。
ではそれらに、世界をひっくり返すような革新性があるかと問われると
もっともそれが革新的な作動をして、圧倒的な走りを実現したならば、多くのジャーナリストが驚愕し絶賛するはず。だが、NSXのいう“異次元のコーナリング”について、世界を変えるような速さがあったり、腰が抜けるほど驚いたり、とにかく素晴らしいコーナリングが実現された・・・という評価は聞こえてこない。
確かにグイグイと曲がっていく感じはサーキットだけでなく、公道をちょっと走らせただけでも分かるし、ある意味新鮮かもしれない。ただし何度味わっても飽きないような喜びかというと、素直にはうなずけない。
最初に触れた時には驚きを感じるものの、そうした驚きや感動が持続する感じは薄い。ただデジタルな感覚の操作感やコーナリング感が好きな方もいるわけで、そうした人にとってはピンとくるものもあるだろう。そのくらい複雑な制御をやってのけている。
ただ制御がいくら巧みでも、タイヤの物理限界は超えられないので・・・人が引き出せない領域でのタイヤ性能を使えるのはわかるのだが、それが走りに何か圧倒的で感動的な違いを産むとも思えないのが実際だ。
鈴鹿サーキットで行われた試乗では、通常装着されるコンチネンタル製は外されて、日本では手に入らないがアメリカでは推奨指定となるランボルギーニ ウラカン用のサーキット向けタイヤが装着されたという。それはつまり、サーキットでは純正タイヤだと実力が発揮できないことを示すから、公道で異次元のコーナリングはどれだけ味わえるかが気になる。もっともそれ以前に公道で異次元のコーナリングなんてしたら迷惑な話なわけで。
異次元のコーナリング性能やハイブリッド特有の強い加速、だがそれは公道では違和感が・・・
それはさておき、むしろ公道で乗った印象では、この制御だと限定的に高性能が示せても、違和感が否めない・・・と感じるのが正直なところだ。
自分が操舵して、クルマがそれに呼応して・・・という対話性は乏しく、それがゆえにクルマと一体になっている感覚は薄い。むしろこちらの操作以上に曲がったりする感じが強く、ドライバーは単なるオペレーターとしてスイッチ操作をして、それを受けて走るクルマに乗せられている感覚がある。
ただ一方でそれは、ある意味これまでにない感覚だともいえる。ドライビングに情感を覚えさせずに、クルマから降りた際にはスッキリとした印象だけが残る種類のもの。そんなデジタル感は好きな人にはハマるかも。
エンジンのパワーと、モーターのパワーの融合による加速・・・も、最初は面白いなと感じるものがある。ただ、低速ではモーターのスタートダッシュが力強く効くものの、その時エンジンの回転はまだ低くて爆発的なパワーではない。またエンジンが爆発的なパワーを生む高回転域では、モーターは既にトルク一定の頭打ち状態になっているため、真の意味でのエンジンとモーターの最高のパフォーマンスが融合するという状態ではなく、実際にも他のスーパースポーツに比べて圧倒的に速い! と感じることもない。
どこか不思議な加速感。そこそこ速くてアッサリした感じといえば良いだろうか。
新型NSXが指し示すはずの”異次元”って、いったいなに?
新型NSXは、ドイツの山奥にある伝説的なサーキットでこれだけのタイムを刻む速さがありますとは謳わないし、有名なレーシングコースの記録を塗り替えたわけでもない。
だが、ホンダは“異次元のハンドリング”と謳う。その異次元がどこにあるか? わからないからこその異次元なのか?
この辺りの具体性がイマイチ見えないことに僕が感じているフラストレーションの要因があるのかもしれない。
その点日産GT-Rは、1000万円前後のクルマながら、0-100km/hを3秒以下で加速し、世界最速と称される(が1億円する)ブガッティ ヴェイロンを凌いだことで世の中のクルマ好きをひっくり返らせ、300km/h領域でポルシェ911以上の安定性を見せて、自動車メーカーの舌を巻かせた。さらにはドイツの山奥にあるあのサーキットを7分30秒以下で走り、地元ポルシェに喧嘩を売って、何かと世間を騒がせた。同じ土俵にのるためにとことん勝負する姿は、かえって誇らしかったし、そこで数字を刻んだことも意味のあることだった。
ではその後の世界に登場した新型NSXは何を示すのか?
新型が指し示す<NSX=ニュー・スポーツ・エクスペリンス>とは果たして何なのだろうか?
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